―――――――――――――― 物 語 ――――――――――――――― 現代から約千年前の正暦(しょうりゃく)四年、平安中期頃・・・ 神の使いとされる、背に翼を持った「翼人」が居た。 彼らは無垢純粋な者とされ崇められてきた。 彼らは夢、即ち記憶を継ぐとされ、不老不死と言われそれまでの知識を人に与えてきた。 その力が朝廷に知られるや否やそれを戦に利用しようとする者が幾多にも現れる。 翼人たちは自分に近付く者を、自然の力で屠った。 屠られた魂は霊魂・亡霊・怨霊となり、屠った者に纏わり付く。 常人ならその呪いに負け朽ちるが、翼人にはただただ蓄えられるばかりとなる。 そのため人を屠った翼人には常に怨霊が纏い、触れたものを不幸へと陥れる。 そんな翼人を封じるために、崇高な坊主たちは「封術」を使い翼人を閉じ込めた。 しかし、高僧たちは、そんな翼人を不老不死と信じていた。 そう、封術によって無理に生き長らえさせられたのである。 そしてそんな翼人の子孫が生きていれば朝廷にとっては、 国を統一するのにただ邪魔で危険な存在でしかなかった。 そのため翼人の血筋を全滅させるため朝廷は動いた。 一方その頃、その翼人の子孫は社に住み、住居を移動しながらも逃げていた。 その子の名前は、神奈御命(かんなびのみこと)。翼人の末裔。 共に柳也と裏葉と言う者を連れて、いつしか母に会う事になる。 その母は、屠った亡霊のため身は穢れていた。 そして、母は朝廷の手勢の流れ矢によって倒れた。 その時、神奈に全ての記憶を継がせた。 神奈は、その側に居た柳也や裏葉を討とうとしたものを翼の力で屠った。 敵は全滅したが、高僧によって神奈は永遠に空に閉じ込められた。 柳也は、神奈に触れたため亡霊の影響を受けやがて眠る。 裏葉は、神奈を救うために封術を憶えた。 そして神奈を救う役目を、彼らは子孫に託した・・・。 その千年後の夏・・・ 手を触れずとも人形を動かせることの出来る、さすらいの旅人がある町を通りかかった。 その街には神奈の羽が祭られている神社があった。 翼人に蓄えられた記憶が神奈へと継がれ、そして羽が記憶のかけらとなって舞い降りたのだろう。 ある姉妹の姉がそれに触れたが、側に居た妹の方が、羽と波長があってしまったのだろうか。 羽についていた亡霊がその妹の心に住みついた。 その亡霊は、生前の名を白穂と言った。 旅人は白穂の無念を晴らすため、彼女自身を取り戻すため、 彼女に取り付いた白穂に対して封術を使い呪いを解いた。 白穂は成仏したのである。 しかしその反動ははげしく、それはその代償として法術の喪失だった。 またあるところには、居ないはずの妹が存在していた。 神奈の哀しみのかけら、「余は願いなど届けられぬ」、しかし、届けれていたのだ。 やがてその妹は神奈の元へと戻っていった。 そして、神奈の後継はいないはずなのに、それを受け継いだかのような少女が居た。 あるはずのない記憶の夢で、過去へと遡っているのだ。 そのせいで今覚えていることをどんどん忘れていく。 誰かと仲良くなろうとすると癇癪を起こして他人に迷惑をかけてしまう、 だからいつも一人でいる。 誰かを屠った翼人は誰かに触れる又は触れられるとその者を死に至らしめる、 だから封じ込められ空に永遠と一人で居る。 似ていた。 やがて、あるはずのない痛みを感じるようになる。 それは、見えない飛べない翼だった。 そして彼女が消えてしまうとき、旅人の力は願いとなって発揮される。 もう一度、彼女に出会った頃へ・・・ 時は遡り、彼女に出会った頃へと戻った・・・全てが元に戻った。 ただ一つ、旅人が記憶を忘れ烏となった事を除いては。 時を遡ったそこでは、旅人が居た。烏が居た。 記憶を忘れた旅人(烏)から見た、過去のもう一人の自分。 そして、哀しみは繰り返される。 もう一人の自分が力を願いへと変えた時、すでに居る烏へと記憶が継がれた。 人間である時のことを思い出し、再び祈り人間へと戻り、彼女を抱きしめた。 そこで力は途切れてしまい、旅人は記憶を忘れた烏に戻った。 そして彼女は救われた。 記憶を忘れた烏は、その元を飛び立っていった。 そう、あの空の向こうへ・・・。