『未夢の勘違い』 「彷徨くん、今日は彷徨くんのために育てた野菜を持ってきましたの・・・ よかったらどーぞ。」 「あ、ああ・・・サンキュ・・・。」 いつも通り未夢と朝学校の正門へ着くと、クリスが植木蜂を持って彷徨の所へやってきた。 「よかったねー彷徨。」 そう言う未夢は、どこか悲しげだった。 お昼休み。 「未夢ーっ、ご飯食べよーっ。」 「うん!今行くー!」 未夢が椅子を持ってななみの元へ行く。 そこで彷徨が足を引っ掛けてきた。 「きゃっ!」 「バーカっ。」 「ちょっと!危ないでしょ!」 「前をよく見ないからだろ。おもちゃの車とかだったら大丈夫だけど、 車だったらあの世行きだぞ〜。」 「もうっ。知らないっ!」 ぷんぷんと怒りながら未夢はドカっと椅子を起き、ななみの元へやってきた。 「もう、相変わらず仲がよい事♪」 ななみが意地悪のように質問してきたが未夢は結構怒ってる。 「あ〜未夢ちゃんヒステリーね〜っ。」 綾が目がウルウル輝かせながら言った。 「アイツいつも邪魔するんだからぁっ!」 「車ねえ〜・・・。」 ななみがそんな事を言っていた。 「確かに、車だったら危険だけど、隣に西園寺くんがいれば助けてくれるでしょ〜。 良いよね〜まさに王子様っ☆」 「綾〜、またネタにするのかい〜・・・。」 「この手を使わない手はないわ!」 ななみと綾は楽しそうに話していたが、未夢はそれほど楽しくはなかった。 と言うより、おいおいと言うような感じで。 帰り、未夢は教科書をかばんにしまって準備をしていた。 あ、そーだ。彷徨に数学のノート借りたままだったの忘れてたや。 返さなきゃ。 「彷ー・・・。」 未夢は彷徨の元へ行こうとすると、彷徨は数人に囲まれてしまった。 「西園寺くんこれありがとー!またねー!」 7,8人の女子があっと言う間に来てあっと言う間に去っていった。 その中には、後輩らしき小さく可愛いらしい子も居た。 その後で、男子が彷徨に近づき、ありがとうと言ってまた去っていった。 どうやら彷徨は他の子にもノートを貸していたらしい。 「彷徨ー・・・。」 「ん?どうした?」 「これ・・・。」 「ああ・・・そうだったな。サンキュ。」 「あれ?どこ行くの・・・?」 「今日も委員会だから、先に帰っててくれ。」 「うん・・・わかった・・・。」 未夢が帰ろうとすると、クリスが彷徨の元にやってきた。 「彷徨くん、この前の自習の課題、色々教えてくれてありがとうございました。」 「あ、ああ・・・。」 未夢は逃げるように急いでその場を立ち去った。 外で待っているように未夢に言われたななみと綾は、未夢を待っていた。 そこへ未夢が校舎から走って出てきた。 「おー遅いじゃないの未・・・。」 未夢はななみの横を走って駆け抜けて行ってしまった。 「あ、あれれ?」 ななみが振り返って未夢を見る。 「おーい未夢ー。」 その声はもう届かなかった。 「どうしたんだろーねー未夢ちゃん。」 綾がそう言った。 「西園寺くんが何かしたのかねえ・・・未夢はデリケートだから素直に文句言えないのか ねえ・・・こりゃ私が言ってやるかっ!?」 「だめだよななみちゃん。自分で言わせないと・・・。」 「わかってるよっ、ちょっと教えてあげる程度だからねぇ〜。」 「まあ、西園寺くんもちょっと気づいてない所あるかもね・・・。」 その頃、未夢はもう西園寺に着いていた。 ガララっ! いつもより大きいドアが開く音。 「あっ!未夢さんおかえりなさい!今日も彷徨さん委員会なんですか〜・・・。」 「うん・・・そうみたい・・・。」 「マンマーっ♪」 「ペポペポーっ♪」 「ルゥくん、ペポ、ただいま・・・。」 未夢はそう言うと、とぼとぼと自分の部屋のほうへ向かった。 「マンマー?」 「あれ、未夢さん何だか元気なかったですね・・・。」 未夢は自分の部屋に入りかばんをポイっと起き、布団にドサっと仰向けに倒れると、 我に返った。 「何やってるんだろ私・・・ 別に彷徨が他の子からもノート借りてたっておかしくないよね〜! 彷徨頭良いし・・・別に私だけ彷徨からノート借りれる訳じゃないし〜。」 自分で言うも納得できなかった。 「でも彷徨のやつ、クリスちゃんに野菜もらってぽーっとしちゃって・・・ 帰りだって・・・。」 未夢は目を悲しそうに細めてぼそっと言った。 「何だろう・・・もうわかんないよ・・・彷徨・・・。」 未夢はうつ伏せになって寝てしまった。 もう時刻は夜7時。彷徨もとっくの前から委員会終わって帰ってきて、 もう夕飯も食べ終わっていた。 「未夢のやつ、まだ起きてこないのか・・・?」 「はい。学校から帰ってきて寝たままです。」 「しょうがねーなー。起こしにいってやるか。」 彷徨は重い腰をよっこらしょと持ち上げて未夢の部屋に向かった。 「未夢、入るぞ・・・?」 返事がなかったが彷徨は未夢の部屋に入ってしまった。 そこは薄暗くて妙に静か。未夢は布団に横になっていた。 「おい未夢、ご飯はいいのか?・・・ん・・・?」 薄暗い部屋の中でも、彷徨は未夢の目の下の微かな涙を見逃さなかった。 すると未夢が起きた。 「え・・・うう〜ん・・・今何時・・・。」 未夢が目を擦りながら起き上がった。 「ええ〜っ!?もうこんな時間!?彷徨!何で起こしてくんなかったのよ!」 「そんな事言われても、おれ委員会だったし帰ってすぐご飯食って、未夢はもう 食い終わったかと思ってたし・・・。」 「もう〜しょうがない!とりあえずご飯ご飯!」 「それより未夢・・・。」 「ごめん!ちょっと後にして〜っ!」 そう言うと未夢は部屋を飛び出して廊下を走っていった。 「未夢・・・。」 あの涙は・・・。 単なる寝起きの涙だったのか。それとも・・・。 一人残された彷徨はただ悲しく立っていた。 少し時間がたってから彷徨は風呂に入ることにした。 「あ、未夢さん。よく寝てましたね。夜眠れますか〜?」 「う〜んわかんない・・・ルゥくんは?」 「ルゥちゃまならもうお休みの時間です〜。さきほど部屋に寝かせに行きましたよっ。」 そういう会話の中、いただきますと一人遅いご飯を食べる事にした。 台所ではワンニャーが後片付けをしている。食べているのは未夢一人だが台所にワンニャーが 居るのでテレビを見ながら会話しながら未夢はご飯を食べた。さほど寂しい訳でもなかった。 「ごちそうさま。」 未夢がご飯を食べ終えると、台所へ皿を持っていき自分で洗った。 「あ、すみません。」 「いいよ。自分が遅いせいだし。」 そこへ彷徨が風呂から上がってきた。 「あれ、未夢もうご飯食べたのか?」 「うん。今皿洗ってるとこ・・・。」 「おまえも後で風呂入ってこいよ。」 「うん。」 未夢、元気そうでいつもの普通だ。でも、何か、どこか違う・・・。 「未夢・・・。」 「なーに?」 「・・・ん、何でもない。」 「何よ〜言いかけて止めて〜。言いたい事ははっきり言うのが男よ〜。」 「・・・。」 彷徨は黙り込んでしまった。 「お風呂入ってくるからね。」 皿を洗い終えて未夢はくるっと向きを変えて風呂場のほうへ行った。 「・・・。」 「どうしました?彷徨さん。」 「え、いや何でもない。」 「そ〜ですか・・・。」 (何か、彷徨さんも変って言うか、元気ないですね・・・。) 次の日も、朝学校へ着くとクリスが彷徨へ何かを差し出している。最近いつもこうだ。 その度彷徨は苦笑いで照れながら(?)、それをもらっていた。 隣に居る未夢も、彷徨に"いいね〜"とか言いながらも本心ではなかった。 それから毎日のように彷徨の元へ訪れる女子たち。未夢はその光景をただただ見るばかり。 隣に居るななみや綾たちに話し掛けるのも忘れて。 ななみたちはそんな未夢を沈黙して見ていた。 この日の帰りは未夢は黙って一人で帰ってしまった。 「未夢っ、帰・・・ってあれ、未夢は?」 「西園寺くん、ちょっと・・・。」 ななみが彷徨に話しかける。隣には綾もいた。 「今日委員会ないから未夢連れて帰るつもりだったんだが、未夢見なかったか?」 「西園寺くんがあんまり女子にもてはやされてるから、未夢嫉妬して帰っちゃったんだよ。」 ななみがそう説明した。 「ああ、その事でか・・・あいつ余計な勘違いしやがって・・・。」 すると綾が言った。 「西園寺くん。未夢ちゃんはいつも元気だけど、たまに悲しそうな目で西園寺くんを 見てるんだよ。未夢ちゃんの前ではあんまり、女子の前で妙な顔しない方がいいんじゃない かな〜。」 「そんな事言われたって、じゃあどう反応すればいいのか・・・。」 するとクリスがまた最近のようにやってきた。 「彷徨くん、またプレゼントがありますの・・・。」 クリスが箱くらいな大きさのものを持ってまたやってきたが、ななみが言った。 「クリスちゃん〜今はごめんっ!ちょ〜っと西園寺くんと大事な話してるからっ。」 「大事な話とは何ですの?」 「あっ、その・・・クリスちゃんには関係ないよ〜っ。」 綾が慌ててななみを助けた。 「そうですの・・・彷徨くん、それではまた後で・・・。」 そう言うとクリスはにっこり去っていった。 「はぁ〜・・・西園寺くん、クリスちゃんには悪いけど、あれ受け取っちゃダメだよ〜。」 ななみが注意するように言った。 「せっかく持ってきてるのに断ったら、やっぱり花小町に悪いだろ。 それに断るとあいつどれだけ暴れるか・・・。」 「それもそうかもしれないけど、未夢ちゃんの気持ちも考えてあげた方が良いんじゃない かな?」 「未夢の気持ち?」 綾がそう聞くと、彷徨が繰り返すように聞いた。 「そうだよ。未夢ちゃんと彷徨くんは一緒に暮らしてるんだから。」 「・・・余計なお世話だよ。」 「・・・。」 ななみも綾も止まってしまった。 「そう言うのは差別になっちゃうだろ。・・・まあでも一応心に留めておくよ。 天地、小西、ありがとな。じゃ。」 そう言うと彷徨は早足駆け足で教室を出て行った。 「・・・まあ、後は西園寺くん自身が考えると良いんだよね・・・って綾?」 「颯爽と去っていく西園寺くん!やっぱりいいよ〜☆」 綾は両手を合わせて彷徨が去った後の教室のドアを見つめている。 「あんたは全く妙な所に惚れるんだねぇ・・・まあ確かにカッコいいけどさ、 西園寺くんはっ。」 「まあ、後は未夢ちゃんと西園寺くんの問題だからあんまりとやかく言えないって事 だよね。」 その頃彷徨は・・・ 未夢のやつ、何不安がってんだ・・・。 学校で最後にななみと綾に、おせっかいだと言ったものの、 心では彷徨もまんざらな訳ではなかった。 いつもの西園寺の階段を一段抜かしで急いで駆け上がって行く。 ガララッ! 「ただいま〜!」 「パンパーっ!」 「ルゥ、ただいま。」 「あれっ、今日は彷徨さん委員会じゃないんですかっ?未夢さんが、彷徨さんは委員会 だって・・・。」 「誰がそんな事言ったよ。今日はねーっつーの。未夢は?」 「はい、昨日と同じように部屋に篭ってしまいました。」 「そうか。」 彷徨のバカ・・・私の気持ちも知らないで・・・。 「未夢、入るぞ?」 そう思っているといきなり彷徨の声が聞こえた。 玄関の彷徨の声には気づいていなかったからビックリしていた。 「えっ!う、うん・・・。」 スッ。 彷徨は戸を開けて入るとまたスッと閉めた。 そして畳に座り込む。 しばらくの沈黙・・・ 「な、なに・・・?」 未夢は恐る恐る彷徨に聞く。 「・・・昨日言いかけたけど、何か最近お前、変だろ?」 「えっ、別に何にもないよっ!」 未夢は笑いながら言った。しかしいつものような満面の、明るい笑顔ではなかった。 「・・・まあ、お前の変な所はいつもの事なんだけどな。」 彷徨は目を閉じながら舌をベッと出してさらりと言う。 「な、何ですってぇ〜っ!?」 「・・・いつもの今朝の事なら勘違いすんなよっ。」 「えっ・・・。」 未夢は自分の思っていた事を指摘されて驚いた。 「いつものあれは内心うんざりしてるんだよ。」 「ウソっ。だっていつも笑顔で他の子にノートとか貸してたじゃないっ。」 「あのなあ。苦い顔で渡したら向こうも感じ悪くするだろ。」 「それじゃ、私の時もそうなの・・・?」 「お前はいつもの事だからいいんだよ。」 「何ソレ・・・。」 ・・・。 「どうしました?」 「「うわぁあぁぁっ!!」」 ワンニャーがルゥとペポを連れてやってきた。 「あれ、未夢さん泣いてらっしゃいますね!どこか痛いところでもあるんですかっ!?」 ワンニャーはあたふたして言った。 「あ、うん!目にゴミが入っちゃって痛い痛い〜っ!って〜!」 「それはいけません!洗面所で洗ってくると良いですよ!」 「う〜ん!あいたたたた!」 彷徨はしばらくぼーぜんとしていたが、ワンニャーって何て鈍感なんだろうと改めて思った。 「彷徨さんは大丈夫なんですかっ!?」 「あ、ああ・・・おれは大丈夫。」 それにしても、何てやつなんだ・・・。 まあ、これからは未夢の気持ちも考えよう・・・。 「地球の新たなウィルスかもしれないですからね〜っ気をつけて下さいね〜。 ルゥちゃまも、ペポも、毎日綺麗に顔と目も洗って気をつけましょうね〜っ。」 「ペポ〜っ♪」 「だーぁっ☆」 ===================================================================== written in 2003.09.05