『関係の接近 −3−』 彷徨が一人寂しく西園寺に居たその頃、未夢は・・・ 「みかんさん、今日はもう帰らして下さいよぉ〜・・・。」 今から時間を溯る事一時間半前・・・ ========================================== 『ななみちゃん、綾ちゃん、手伝ってくれてありがとうー。助かったよ。』 『どうしたしまして〜。』 『なーに、早く王子様の所へ帰ってあげなよー。』 『王子様って誰・・・。』 『それじゃあまた明日学校でねーっ!』 『あ、うーん!またねー!』 う・・・手伝ってもらったはいいけど、この荷物一人で持つとかなり重いな。 そうだ!彷徨でも呼ぼう!あ、でもまだ四時半・・・彷徨委員会じゃん。 しょうがない、家まで頑張るか〜・・・あの階段どうしよう・・・ また星矢くんが出てきたりしてね。ははっ。まあそれはないと思うけどさ。 『あれー?未夢ちゃんじゃなーい?』 『あ、みかんさん。どうしたんですか?こんなところで・・・。』 『だってー、良いネタないんだもーん。未夢ちゃん何か最近の出来事で 面白いことなーいー?』 『毎日毎日がもう大騒ぎで疲れます・・・。』 あれっ、何か向こうから誰か追いかけてきたな・・・。 『姉ちゃんどこだーっ!?あ、居ました!あそこです!』 『先生ー!早く原稿書いちゃって下さいよー!』 『げっ!瑞貴とミドレ川!未夢ちゃん逃げるわよ!』 『え・・・って何で私までっ!』 『いーのいーの!とにかく逃げるわよ!』 『そんなあ〜・・・。』 とりあえずみかんさんちまで来たけど、これじゃすぐ捕まるよね。 案の定、担当さんと瑞貴さんがみかんさんちに入ってきたし。 『姉ちゃん!あれ、未夢さんじゃない。どうしたの?』 『あっ!瑞貴さん!えと〜・・・み、みかんさんに連れてこられました。』 『姉ちゃん、また未夢さんに迷惑かけて〜・・・。』 『先生!早く描いちゃって下さい!』 『だぁー!もう〜じゃぁネタちょーだいよー!漫画家はネタが命なんだからねぇ! 急いで描いたってマシなものは出来上がらないのよ!』 『先生ゆっくり過ぎです!もう一週間も締め切り延ばしてるんですよ!早く早く!』 『まあゆっくり行きましょう〜♪』 『みかんさん、お茶なんか飲んでる場合じゃ・・・。』 『いーのいーのぉ!心を落ち着かせてネタを考えていればいずれ出来るのよ〜。』 『姉ちゃんったら・・・もう僕は大学の夜の講義あるから行くよ。あまり未夢 さんに迷惑かけちゃダメだよ。じゃあミドレ川さん、姉をよろしくお願いします。』 『瑞貴くんは偉いねー。頑張ってらっしゃい。さあ先生っ!』 『未夢ちゃん〜ミドレ川がイジメル〜!助けてぇ〜。』 『未夢ちゃんごめんね〜。先生!今日は徹夜でつきっきりで見張らせてもらいますからね!』 『あ、じゃあわかりました・・・私がみかんさんのアシスタントします・・・。』 『ホント!?未夢ちゃんいいの!?やったぁー☆』 『ちょっと先生!』 『今日は未夢ちゃんがお手伝いしてくれるからミドレ川は帰っていいわよぉー☆』 『あ、でも夕飯には帰らせてもらってもいいですか・・・。』 『もちろん!未夢ちゃんなら何でもOKぇ〜☆』 『な、何か嫌われてる・・・わかりました・・・今日は引きます・・・。 でも!もし明日の朝までに原稿出来上がってなかったら、どうなってるか覚えてて下さい ねぇ〜っ・・・!!』 あ、担当さん帰っちゃった・・・。 『はぁ・・・やっと去ってったわー。でも考えてみればミドレ川仕事サボった って事になるわよねー。』 『みかんさん、早く仕事終わらせちゃった方が・・・。』 『うう・・・未夢ちゃんまでそんなに早く早くなんて言っちゃうのぉ〜?』 あ〜みかんさん泣き始めちゃったよ。 『私もお手伝いしますから・・・。』 『そーだ!最近彷徨くんとどうしてるの〜?』 『え?彷徨ですか?最近わんに・・・じゃなくて彷徨が買い物サボってるから 私が変わりに行ってあげてますけど・・・彷徨委員会だし。』 『それよ!!』 『え?』 『仕事のせいで愛する乙女と過ごせない王子様の寂しさ、乙女は友と楽しく過ごす! 王子様は不安と心配が募るばかり!』 『な、何でそうなるんですか・・・でも面白そう!それネタにすれば いいんじゃないですか?』 『そのモデルが未夢ちゃんと彷徨くんなのよ〜!』 『わ〜♪それは面白いですね〜!って・・・何で私と彷徨なんですか!!!』 『いいじゃん〜彷徨くんもきっと、喜ぶわよお〜!』 『逆だと思うんですけど・・・。』 『それでぇー、あれがあーなってこーなってこーでしょー!それで・・・。』 『あ、いけなーい!もう6時ー!わん・・・じゃなくておじさんも彷徨も 心配してるだろうな〜・・・あの〜、みかんさん!ネタが出来たみたいなので 私帰りますね!』 『ダーメぇっ!付き合ってくれるって言ったじゃないのぉ〜。』 『それじゃあ彷徨に連絡させて下さい。電話電話・・・あ、気づいてなかった、 着信着てた・・・彷徨だ!これから電話しなく・・・あー!』 『え〜?どしたのぉ〜?』 『画面真っ暗・・・電池切れだぁー!』 『あら〜。じゃあ充電器貸してあげるわよ〜?』 『同じ機種じゃないから無理・・・。』 『じゃあしょうがないわねー。』 『みかんさん、すみませんけど電話貸してください・・・。』 『あーダメ!電話代払い忘れてたから今月は使えないわぁ!』 『そ、そんなぁ〜・・・!』 ========================================== そんなこんなで、帰るに帰られず、連絡も出来ず、みかんにネタの続き を聞かされて今に至ったのである。 とりあえずぼ〜っとみかんの話を聞いてるだけだと退屈するので、 小さい事は手伝いをしていた。 「みかんさん〜、コーヒーどーぞ!」 「あ〜ありがと未夢ちゃん〜!アシスタント、向いてるわよぉ〜?」 「あ、あはははは・・・。」 (何で慣れてるんだろ私は) 「あれ、もう7時ねえ・・・未夢ちゃん、ネタありがと〜ぉ。 またお願いねーえ!」 「えっ!帰っていいんですかっ!」 「さすがにおじさんも彷徨くんも心配してるでしょうー。夜も遅いし、 送って行ってあげようか?」 「あ、大丈夫です!わ〜やっと帰れる〜。それじゃみかんさん、さようなら!」 「うん〜またねぇ〜!」 みかんの家のドアを出た未夢は、買い物袋を持って走って西園寺に向かった。 そして思った。 (あれがみかんさんの本当の力か) 時間にして約2時間以上もみかんに監禁された未夢は、恐れながら思ったのである。 一方、西園寺・・・ ワンニャーは6時半頃に家に帰ってきていた。 「ただいま戻りましたーっ! ・・・あれ、未夢さん彷徨さん、居ないんでしょうか・・・。」 「パンパーっ!」 「ペッポー!」 「え?ルゥちゃま、ペポ、彷徨さん居るんですか?」 ・・・ ========================================== ここは夢・・・の中・・・? 『早くしないとおいて行くぞ!』 『ちょっと待ちなさいよ彷徨っ・・・あっ!』 すると突然辺りが崖の景色になり、未夢は崖から落ちた! 『未夢ーーーーーーーーーーー!!!!!』 ========================================== 「未・・・夢・・・。」 ルゥが飛んでいく方向へ言ってみると、彷徨は居間で寝ていた。 「あっ、彷徨さん。」 「・・・んっ・・・ワンニャーか・・・今何時だ・・・。 もう6時半か。寝ちまってたんだな。」 「どうなされました?」 「いや、何でもない・・・。それより未夢は?」 「え?未夢さん、一番早く帰ってきてるはずですけど・・・。」 「ああ、おれが委員会だったから、また買い物頼ませちゃったんだよ。」 「それならもう帰ってきてもいいはずですけど・・・。」 「そうだよな・・・いくら天地と小西が一緒でももうあいつらは家に帰った だろうし・・・。」 「え、ななみさんや綾さんにも頼んだんですかっ?」 「あいつ一人だとドジするだろ。」 「そ、それは〜っ・・・そうですね!」 おいおい。 「とりあえず、帰りが遅すぎる。おれ、ちょっと外探してくる。」 「あっ、未夢さん電話があるじゃないですか。それで・・・。」 「ダメだよ・・・繋がらなかった・・・もしかしたら使いたくても使えない のかもしれない・・・。」 「え・・・それじゃ誘拐ですかーっ!?」 「・・・!?」 「マンマ?」 「ペポぉ?」 ワンニャーの大きな声に彷徨、ルゥ、ペポも反応した。 確かに、考えられない事もない・・・じゃなかったら何でこんなに遅いんだ・・・ 連絡するって言っておいたから、向こうも何かあったら連絡してくれるはずだ。 もしかして忘れてるのか?いや、それは考えられない・・・と言うより考えたくねーよ。 「・・・警察も呼べねーしな・・・それにまだ誘拐って決まった訳じゃない。 どっかでふざけて遊んでるのかもしれねーし。連れてくるよ。」 「待って下さいっ!わたしも行きますっ!」 「ワンニャーは西園寺でルゥと留守をしていてくれ。」 「はい・・・わかりました・・・。」 「心配するな。」 「パンパーっ!」 「ペポー!」 「ルゥ、ママは大丈夫だからな。それじゃ行ってくる!」 「彷徨さんも気をつけて下さいねーっ!」 だが、内心一番心配していたのは彷徨だった。 あいつ、どこで何やってんだ・・・ 買い物早く家に持ってきてくんなきゃ飯だって食えねえだろっ・・・。 ・・・何より・・・ おまえが居ないとつまらない。 あの夢は・・・ 彷徨は怒りと焦りと不安と心配いっぱいで太陽の沈んだ平尾町の中で未夢を探した。 その頃、未夢も全力疾走で西園寺へ向かっていた。 「彷徨きっと怒ってるだろうなーっ!ワンニャーも心配してるだろうなー! ルゥくんも泣いちゃって・・・あああ〜まずいよぉ〜!」 だが、辺りは暗闇。西園寺は丘高い所にあるとは言え、さすがに夜になると わからない。しかも方向音痴な未夢は実は反対方向に走っていた。 「あれっ・・・全然西園寺の方に着かないな・・・しかも見た事無い道・・・。」 何か・・・怖い・・・。 いつも通ってる道のはずだったのに、辺りが暗いだけでこんなにも違う道に見えるなんて。 全然知らない道・・・真っ暗の辺り・・・わからない・・・。 すると何かが近づいてくる音が聞こえる・・・足音だ・・・。 恐る恐る後ろを振り向いてみると、人影が見える。女の人じゃない・・・。 女の人の足音は、癖がある・・・。ハイヒールとか。履いてない人も居るけど。 でもその人影が町のライトに照らされた時、はっきりその姿が見えた。 男の人だ!通り魔っ!? 全身真っ黒。墨で黒い訳じゃない。夏に合わない黒のセーター、黒の長ズボン、黒い靴、 黒い帽子、サングラス。しかも髭が生えてて口の周りまで黒い。気持ち悪い。 とても趣味が悪いだけの人に見えそうに無い。 未夢は恐怖心のあまり逃げた。 すると後ろに居た彼も突然走り出す。バスの時間に間に合わないからだとも思えない! 明らかに未夢を追っていた。 後ろを振り向きながら前へ全力疾走。余所見して走っていたら、突然前の何かにあたった。 「あっ!すみません・・・え・・・!?」 前にいたのは真っ暗な姿の男の人。後ろの人の仲間っ!? 「きゃーっ!!!」 「おいおい、おれだよ・・・未夢。」 「えっ・・・。」 その時、通りの電灯がついてその人を照らした。真っ暗な姿は闇に居た彷徨だったのだ。 光を浴びた彷徨がその姿を現した。側には自転車。 「お前今までどこに行ってたんだよ・・・探したぞ。」 「それより彷徨っ。後ろから変な人が追いかけてくるっ・・・。」 「何だってっ・・・!」 彷徨は未夢を背中に隠して身構えた。確かに暗闇の中から人らしきものが走ってくる。 「おいっ!何で未夢を追いかけっ・・・。」 すると真っ黒の男は彷徨と未夢の横を全力疾走で駆け抜けていった。 「電車が間に合わない〜!」 ・・・マジかよ。 「・・・おい、未夢、どこが追いかけられてたって?」 「えへ・・・何か勘違いしてたみたい・・・。」 「ホント〜にドジなやつだ。」 「何よ〜!でも、内心ちょっと怖かっ・・・え・・・。」 すると上の電灯が切れ、彼らを暗闇に包んだ。 「よかったよ・・・お前が無事で・・・。」 「・・・うん・・・。」 「ところで、お前何やってたんだ?」 「うん。家に帰ってから話すよ。」 「そうか。ほら、乗れよ。」 「彷徨、自転車持ってたんだね。でも何で?」 「自転車の方が探すの早いしライトがあるから見やすいだろ。」 「そっか。」 そう言うと未夢は自転車の後ろに腰掛けた。 「しっかり捕まってろよ。」 彷徨はそう言うとスピードを出し始める。 「彷徨早ーい!」 「自転車なんてめちゃ久しぶりだけど、運転できなくなるって事は ないんだよな。体が覚えてるし。」 「そうだねっ。」 そしてやがて西園寺に着いた。 「ただいま〜。」 「マンマ〜!」 「ペッポ〜!」 未夢が家に入るとルゥが泣いて飛びついて来た。ペポも未夢に飛び込んできた。 「ルゥくん!ペポ!ごめんね〜心配かけて。」 「未夢さんっ!おかえりなさいっ!もう〜どこ言ってたんですかっ!! ルゥちゃまもペポも心配して・・・。」 「ご飯の心配してたんだよな〜。」 彷徨が横から口を挟んでみると、 「そうなんです〜。ルゥちゃまもペポもご飯を心配して・・・って違います彷徨さん!」 「そ〜だったんですか・・・!」 未夢がぷるぷると手に持った買い物袋を震わせ言った。 「とにかく家に上がれよ、未夢。荷物貸せ。」 「うん。ありがとう。」 時刻は夜8時。ワンニャーが遅い夕食を作っていると彷徨が未夢に聞いた。 「お前、どうしてあんなところに居たんだ?」 「うん・・・それはね・・・ 綾ちゃんとななみちゃんと買い物手伝ってもらった後、みかんさんに捕まっちゃって、 しょうがないからお手伝いするって言ったらかなり監禁されちゃって・・・ それで何とか逃げ出して来たと思ったら間違えて家と逆方向に走ってたの・・・。」 「はぁ〜・・・。」 彷徨が頭をくしゃくしゃっとやりながら大きなため息。 「なっ、何よっ。」 「もういいよ・・・。」 「よくなーいっ。一体何なのよそのため息はっ。」 すると未夢がポーンと彷徨を押して倒した。未夢はテーブルの横に座り込んで プンプン怒ってる。彷徨はそのまま寝た状態だった。 「あっはっはっは・・・。」 「何がおかしいのよー!」 「バカだよお前は。」 「ああ〜そうさ!私はバカですさ!ドアホの彷徨さんとは違ってね〜!」 ああ・・・本当のバカはおれの方だったよ。 「何か言った?」 「いや、何でもねーよ。」 「未夢さん、お腹空いたでしょう〜。ルゥちゃまもご飯ですよ〜っ!」 「あーい!」 「ペポー!」 ワンニャーが出来上がった夕ご飯を持ってきながらルゥたちに声をかけると、 ルゥたちは部屋から本当に空を飛んでやってきた。 「いただきま〜す。」 「はぁ〜何か今日は疲れたなあ〜。」 「わたしも疲れましたぁ〜っ・・・。」 「良いよな〜遊びつかれてるやつは。」 「ドキッ!」 「そうだね〜いいよね〜ワンニャーは家でゴロゴロできるしね〜♪」 未夢も皮肉そうに目を細くして横目でワンニャーを見ながら言った。 「な、何言ってるんですかぁっ!掃除洗濯家事全般!毎日忙しいんですよぉ〜っ! 優秀なわたしだからこそできる芸当なんです!」 手を腰にやってえっへんと言わんばかりのポーズ。 「あっ。」 ワンニャーは味噌汁を溢した。 「ぷっ・・・あっはははは・・・☆」 未夢が泣くほど笑った。 「おいっ・・・ワンニャーどこがゆうしゅーなんだよっ。」 彷徨も笑いながら言った。 ワンニャーはしばらく固まっていたが、だ、大丈夫ですよっ、と言いながら バケツと雑巾を持ってきてすばやく、零れた後を拭こうとするが、 「きゃーい!」 バシャーン☆ ルゥが面白がってバケツを蹴ってしまった。 ・・・。 「ぷっ・・・あははははっ・・・。」 彷徨も笑い出してしまった。 未夢はもう耐え切れないという感じで笑いを堪えている。 「も、もうダメ・・・あははははっ・・・!」 ワンニャーは、皆さんヒドイです〜と泣いている。 「あはっ・・・わかったわかった。ワンニャーは優秀だから、後でおれが拭いておくから。」 「あ、後で私も拭いてあげる〜。」 「とりあえず飯食おうぜ。せっかくの飯が冷めるし。」 「そうだね〜。あ、ワンニャー、わたしにも料理の仕方教えてよ。」 「お前が味噌汁作ったら毒汁になるからな。」 「悪かったわね・・・毒汁で・・・。」 「良いとは言わないよな。」 そんなこんな会話を続けながら、彼らは楽しく夕食を過ごし、 安心して眠りについた。