『関係の接近 −2−』 無事に朝の授業を終え、時間は昼。未夢は綾とななみとお弁当を食べる。 「今日は、屋上で食べようよ〜。」 綾がそう誘ってきた。 「綾!それ言いねぇ〜。お天道様の下でお弁当を食べながら色々と語るのもまた風流 かね〜。」 「私も、別に構わないよぉ〜。」 その話を聞いていた三太が彷徨に言った。 「彷徨!おれたちも行こうぜ!」 「おれはいいや。」 「何で〜。光月さんの事気になるんだろ〜?」 三太はひょうきんな顔してるくせに何気にさらりとイタイ所を突いてくる。 彷徨は何とか否定してかわした。 その頃未夢たち・・・。 隅々まで青い空。そして明る過ぎる太陽。 雲一つなく、今日は風もある。 屋上だからか、風はそよそよとして気持ちいい。 下は放課で遊んでいる生徒たちでざわめいていた。 「いい加減、素直になりなよ〜?」 「私は十分素直だよっ。」 未夢がななみに質問攻めに遭っていた。 「未夢ちゃん、いつもいいネタくれるから大好き〜☆」 綾が目を光らせてそう言っている。 「あ、綾ちゃん、ありがと・・・。」 未夢は苦笑いでそう答えた。 「未夢、まだ自分の気持ちに気付いてないんじゃないかな。」 「自分の気持ちって?」 「・・・まあ・・・わからなくてもすぐわかるようになるよ〜・・・すぐわからなくても ゆっくりでもいいし・・・。」 「って、何の事ですかそれはっ。」 未夢は目を細くしてななみに言った。 すると、綾が目を元に戻してこういった。 「でも、自分の好きな人にだけは誤解されないようにしてね。」 「好きな人なんていないってばぁ〜。」 「・・・。」 未夢が笑いながらそう言うと、二人は沈黙して未夢を見ていた。 「ごちそうさま〜。今日もおいしかったぁ〜。」 「いつも西園寺君の手料理なんだよね〜。何かいいなあ〜。」 綾が羨ましそうに言った。 「えっ、違うよっ。いつもはわんっ・・・あ、おじさんが作ってくれてるんだよっ。」 未夢は、ワンニャーと言いそうになって言い直した。 「わんっ、って何?」 ななみは聞き逃さなかった。 「あっ、あのっ・・・いつもワンちゃんのご飯作ってくれて可愛いな〜って!」 未夢は焦って言った。 「西園寺くんのおじさんって、そんな趣味あるんだ。」 (おじさん、ごめんっ!) 未夢は心の中で謝った。 「まあ、たまにおじさんが寝坊して彷徨が作ってくれるときもあるけどね。」 「いいなあ〜作ってもらって〜。未夢ちゃん料理苦手だからいいね。」 「す、すみません・・・。」 「あ〜やっ!そんな事言っちゃったら未夢が泣いちゃうよ。」 「ひっくひっく。」 「あ〜ごめん未夢ちゃん。」 「本当の事だからね、申し訳もないでござる。」 「なあにその口調。」 3人とも楽しい昼食を過ごしていた。 その頃、彷徨は三太と弁当を食べていたが、未夢の居ない机を見てばかりいた。 「彷徨、どうかしたかぁ〜?」 「い、いや、別に・・・。」 「今日は食べるの遅いじゃん。」 「ゆっくり噛んで食べてるんだよ。」 「彷徨〜、光月さんの事好きなんだろ〜?」 「ぶっ!!!」 彷徨は飲んでいたお茶を三太に吐いてしまった。 「あっ、悪ぃ・・・って言うか突然何言い出すんだお前は。」 三太のストレート過ぎる質問に、さすがの彷徨も予想できず驚いた。 三太は顔を拭きながら言った。 「だって〜彷徨、光月さんが来てから何か明るくなったよな〜。 おれには見せなかった笑い顔とか見せるようになったしよ〜。 光月さんと仲良いんだろ〜?お前だけずるいぞ〜羨ましいぞ〜。」 三太が皮肉そうに続けた。 「毎日うるさいだけだ・・・女と仲悪くないだけで好き嫌いとか言うな。 別に嫌いじゃないし、喧嘩もしてないだけだ。そう羨ましがるな。 お前もきっとできるって。そう言えばあの文通の子が居るんだろ?」 三太は、悲しそうな顔で言った。 「もう、外国に行っちゃったから無理だよ・・・。」 「そうか・・・まあ焦るな。」 「お前が言っても説得力ねえよ〜!」 そう言っている内に、未夢が教室に戻ってきた。 「ごちそうさまでしたぁ〜彷徨〜。あれ、彷徨今日は遅いんだね。」 「光月さん〜、彷徨がさぁ〜・・・うぐっ!」 彷徨が三太の口を抑えている。鼻も抑えている。 「?なあに?」 「いや、何でもねえよ。」 それを見ていたななみは悟ってしまった。 「ははぁ〜ん☆未夢、全くおめでたいねぇアンタはさっ。」 「だから、ぜんぜんわかんないよぉ〜!」 「はいはい。鈍感な人ってホントおめでたいねぇ〜。」 ななみは未夢の肩をポンポンと叩いて目を瞑って顔を赤くしながらそう言った。 「ななみちゃんっ!これで一つのストーリー作ろうっ!」 綾がななみに話を持ちかけた。 「未夢の事なら協力するわぁ〜っ!」 「あっははは・・・。」 未夢は呆れたように笑っていた。 「未夢ちゃんと彷徨くん・・・未夢ちゃんと彷徨くん〜・・・ とうとうゴールまで後3秒コンマ1って感じですわね〜・・・ こぉ〜れは盛大にお祝いしなくてはならないどぅぇ〜すわぬぇ〜ええ!!」 いつもよりかなりヤバい口調になってきたクリス。ななみが止めにかかるが、 「鹿さんだよ〜んクリスちゃん〜♪」 「ウヒョーーーーーーーーー!!!!」 「げっ、鹿さんが効かなくなっちゃったよ!未夢のせいだよ!」 「何で私のせい・・・クリスちゃん落ち着いて!私、彷徨と何もないってばっ!」 「未夢ちゃんと彷徨くんがそ〜んなことしちゃいーーーや〜〜〜ぁ♪」 「落ち着け花小町!おれはこんなガキの事は何も考えちゃいないから!」 「誰〜がガキですってぇ彷徨さん!子供はアンタでしょ〜がっ!」 ヤバい、そんなところで未夢と彷徨、喧嘩したら学校どころか世界が崩壊してしまう! 皆が恐怖に恐れていたその時、水野先生が入ってきた。 「この前の運動会の写真、彷徨くんが写ってるわよー。」 「本当ですのっ?水野先生っ!」 水野先生、さすがだ。 「とりあえず、クリスちゃんの前では彷徨くんから離れなよ未夢。」 「あ、ありがとうななみちゃん。」 「全くガキはこれだから困るよな。」 「カチンっ!」 「はいはい。西園寺くんも、クリスちゃんの前では未夢をからかっちゃダメだよ、 ころされちゃうよ。」 彷徨はその言葉に恐れおののいた。 一騒動の後、今日も無事授業を終えて放課後、未夢は帰ろうとした。 「未夢っ。」 「彷徨っ、今日委員会は?」 「悪い、今日も委員会なんだ・・・。」 「また買い物ですか・・・。」 「本当悪いな。待っててくれるか?」 「何時まで?」 「5時・・・。」 「そ、それはさすがに退屈・・・。」 「それじゃ〜・・・天地や小西と一緒に行ってきてもらったらどうだ?」 「でも、それじゃ迷惑だよ〜・・・。」 「私たちなら大丈夫だよ!」 ななみと綾が元気そうに行った。 「天地、小西。悪いな。未夢を頼んだ。」 「わっかりやしたっ。未夢を借りるね。」 「持ってけドロボーっ。」 「私は品物じゃないってば。」 未夢は驚かなかったが、ななみと綾は彷徨の冗談に驚いていた。 「終わったら電話するからな。」 彷徨がそう言った。 「わかった〜。」 「綾、それにしてもさっき驚いたよね・・・。」 「うん・・・ビックリ・・・。」 ななみたちが本当に驚いた様子を見て、未夢が聞いた。 「何?何の話?」 「未夢は驚かなかったの・・・?西園寺くん、『持ってけドロボー』なんて冗談 言ったんだよ?」 「ああ、あれね・・・。」 「あれね、って、どーいう事〜?」 綾が聞いてきた。 「最近彷徨よく冗談言うけど?」 「そこまで行っちゃってるんですか・・・。」 ななみは真面目そうな顔して言った。 未夢はななみと綾と買い物を手伝ってもらって済ませた。 そして、彷徨の方は委員会が終わった。今は5時。早速未夢が今どこにいるのか電話を かける。 トゥルルル・・・トゥルルル・・・ 出ないな・・・ ピッ。 「おっ!未夢、今どこにいるんだ?」 『今ー、電話に出られませーん、ピーって音が鳴ったら用件を言ってね♪ピーっ☆』 未夢の留守電の声かよ。まあいいや。 「未夢ー、今どこにいるんだー?気付いたら教えてくれーっ。手伝い行くから。 じゃあなーっ。」 ピッ。 彷徨は残念そうに家に帰る。 だがこの時、未夢がただ電話に出られない状況なだけではないとは彷徨も思わなかった。 未夢の方にとっては、実に深刻な状態となっていたのである。 ======================================== いつも通りの学校帰り・・・だが彷徨は委員会へ。 未夢は綾とななみと買い物へ。未夢は綾とななみに買い物を手伝ってもらっていた。 そして時刻は午後五時。彷徨の委員会が終わって未夢に渡しておいた電話に コールする・・・。 トゥルルルー・・・トゥルルルー・・・ 出ないな・・・。 プツっ。 「お、未夢か?今どこだ?」 『今電話に出られませーん。ピーってなったら用件を言ってね☆ピーっ。』 未夢の留守電か。 「未夢、今どこだ?気付いたら返事をくれーっ。」 ピッ・・・。 一人西園寺に帰る彷徨。 最近委員会だったから一人で帰るのはいつもの事だ。 ましてや、未夢が来る前までいつも一人だったから慣れっこのはずだ。 でも、今日は何故か寂しい・・・あいつがいないから?うるさくないから? とぼとぼと西園寺へと帰る彷徨。 「ただいまー・・・あれ?ワンニャーたちも居ないのか?」 久しぶりの静けさ。西園寺には誰も居ない。 テーブルには書置きが・・・ 『未夢さん、彷徨さん、ルゥちゃまとペポを連れてモモンランドに行ってきます☆ また買い物任せてすみません、帰ったら思いっきりおいしいご飯をごちそう しますネ  ワンニャーヾ(*^▽^*)ノ』 「またモモンランドかよ・・・ルゥのためなら良いけど、あいつ最近 遊び癖がついてないかっ?」 彷徨は書置きを見ながら笑って思った。だがその笑いも束の間だった。 本当にし〜んとした西園寺。正にお寺と言った感じだ。未夢たちが来る前 は常にこの状態が当たり前だった。でも今はそれだとつまらない。と言うより 寂しい。 楽しさを知った後の静けさって、こんなに寂しいものなんだな。 これじゃ楽しさを味わわない方が良かったのか・・・。 いつも静かなら、どんなに静かでも悲しくないのに・・・。 彷徨は、知らず知らずの間に、未夢やルゥ、ワンニャー、ペポと暮らしている のを当たり前のように思っていたため、彼らが居ない時の悲しさがよく わからなかった。彼らに出会ってからは。 まあいいや。いつも通り宿題やってテレビ見て小説でも読んでるか・・・。 彷徨はかばんを自分の部屋にポイっと放り捨て、中から宿題を取り出した。 しかし・・・どう言う訳か全くやる気が出ない。 どうしたんだ・・・まあいいや。宿題は後回しにしてテレビでも見るか。 何か面白いのやってるかな。 ピッ。 ピッ。 プツッ。 ・・・めっちゃつまらねー。 いつも読んでる小説でも読むか。続きが気になるからな。 しおりが挟んであるページを開いて読み始めようとする。 だが・・・ 小説なんかより未夢の方が気になる。もう6時だぞ。買い物から帰ってきても いいはずなのに・・・ワンニャーも、もうそろそろ飯の時間じゃないか。 彷徨はただただ途方に暮れていた・・・。