planetarian
〜ちいさなほしのゆめ〜
2005年夏にやったKeyの作品。体験版としてやってみた。
KEYのスタッフが試みたキネティックノベルと言う新しい形式。
そしてこのちょうど1年後に製品版をやった。
・紹介
現代から約10000日、30年後のこと・・・
増えすぎた人口、資源の不足、宇宙開拓破綻に端を発した世界大戦のため、ほとんどの人間が死に絶え、地表では雨が降り続いていた…
疲れた彼・『屑屋』が行く先は『封印都市』
かつて栄えた都市が突然の細菌攻撃により放棄された
そして彼が辿り着いた先はプラネタリウム
そこで彼は、30年の間訪れる人を待ち続けていた壊れかけのロボット「ほしのゆめみ」に出会った
彼は動かない投影機を動かすために時を忘れて修理を続ける
人工の星空に、彼は何を想うのか
そして「ゆめみ」の運命は──やっぱKEYは他と一味違うね!
なんて言うか、設定と言う味が濃くて何をやっているのかがはっきりわかる。
相変わらず難しい言葉をたくさん並べて、作るのに一苦労してるなと言うのもありありと伝わってきたり。w
でもそれがくど過ぎず、返って内容を濃くし一層良くしている。
・ほしのゆめみ
氷のような色の長髪を大きなリボンで二つに結いでいる、ロボットの少女。
エメラルドのような瞳を持ったプラネタリウムの解説員。
話をすることが好きで、客が来るのを待ち続けている。この物語の中で唯一登場する人物。
最初はロボットらしく単調で冗長なパターンの会話が続くのだが、
思ったより人間っぽい反応をしてくるところに面白みを感じてくる。
また、ロボットであるが故にその無垢な笑顔は心のどこかをくすぐる。
今までの記憶の中で、楽しかった客とのやりとりを聞かされ・・・楽しそうに話すゆめみ。
人工の星空を、庭のように解説するゆめみ。
聞いたことがあるだけの人工の星空は、感動するほど綺麗だった。
彼女の星への願いが、人とロボットが本当に仲良くあることなのが良かった。
妙な感情の動きを感じ始めた屑屋は、同情からかゆめみを連れ出すことを決意する。
雨の中でも楽しそうに話すゆめみ・・・
そして最後の展開・・・
「私は、雨が好きなんです」「プラネタリウムはいかがでしょう」
最期の最期まで側に居て、聴き続けてやる。
その無垢な声を・・・耳と記憶に焼き付けて。
楽しかったひとときの後に・・・。感動した。
・シナリオ
CLANNADのことみシナリオを手がけた涼元 悠一のストーリー。 今から約30年後の時代。
世界大戦で何もかも失われた遺跡のプラネタリウムで出会った一機のロボット。
「ほしのゆめみ」に出会い、投影機を直す。
互いの今までの過程、やりとりが語られる。
・CG
メカニックデザイン駒都 えーじと言う事でいつものKEYの絵ではない。
童顔ではあるが、輪郭や口元はこっちの方がいいと思う。
気になったのは、目がちゃんとロボットみたいに感じ取れること。
そこがまた個人的イチオシ。さすが彼は機械系の絵が激上手。
ウィンドウも映画みたいになっており、背景もきめ細かくて良い感じ。
また、外の雨がリアルタイムで降っているように見えるようになったのがイイ!
妥協は感じず絵の上手さ綺麗さより、細かいところまで力が行き届いていて感心だ。
・音楽
毎度お馴染みの戸越 まごめが担当。
元よりある有名な『慈しみ深き』、所謂『きらきら星』をアレンジしたもの。
キラキラした音楽や、氷のような響きが雰囲気を感じさせる。
ノベルを意識させたいのかあえて音楽がないシーンもある。
全体的に落ち着いた曲が多く、飽きない。
・システム
キネティックノベルと言う事で余計なものはない。
ビジュアルノベルシステムとはまた違い、映画のようなウィンドウ、
常にショートカットがあって、バック、進行、ウィンドウ消去、セーブ・ロードだけ。
もう一つ、KEYおなじみのオートモードもある。
クリックが面倒くさい人はお好みの設定でプレイすれば正に映画を見ている感じになるだろう。
製品版のみボイスがある。キャラの役にはあってるが、キャラにはあってないかもしれない。
そこは個人の好みに分かれたり、他の評価が良いこともあって埋もれる。
また、サウンドノベルの類に入るので選択肢がないからゲーム性はない。
・総評
KEYはやっぱり悲しい。 なんというか、今回ばかりは感動よりも哀しみと言う言葉がよぎった。
でも・・・やっぱり・・・うわぁぁぁぁ・・・(ノД`゚。
くっ・・・こんな馬鹿なことがあってよいのか・・・
覆水盆に還らずとは正にこのことであると思えた瞬間だった
感動とは何だろう?後悔?哀しみ?喪失?復活?エディターが問うている。
『屑屋とゆめみのやりとりと、ゆめみの最後の答えに、何を感じたか?』
もし何も感じずにプレイしていたとしても、最後の最後で感慨せずには居られない。
最中(もちゅう)での話では、本当に人間とロボットが仲良くあるべきだと言う思いが伝わった。
見えつつある危険な近未来への懸念や、失われた過去から、
素晴らしかった日常を思い出せることなども。
屑屋が最後に言う。もう飽きたのだ。彼女に、外の世界を見せようと。
それには、どれだけの思いが込められているだろうか?計り知れない。
また単純に、途中での、彼女のお話好きに寄るほのぼのとした話も微笑ましく楽しい気持ちになる。『お話の中でくらいハッピーエンドがいい』と言う言葉をも生まれさせたKEYだが、
今回のような終わらせ方にしたのは何故だろう?
最後はあやふやに、後(のち)を読み手に任せつつも、
その世界の外が全く描かれないため、創造するに乏しくなる。しかも、全体的な長さ等によってアニメ化することも困難だろう。
しかしゲームではなくノベルだったため、映画にすれば話は一直線で
内容的にも略すような必要もなく、今までよりかなり完成度の高いものになるのではあるまいか。個人的に少し残念だったのは、体験版との相違で、世界の事情が語られるのが
倒置法になっていたこと。いきなりゆめみとの会話がなされ、後に
世界の事情を思い出すと言う形で語られている。
一種の試みもあったかもしれないが、この場合は前者(体験版)の方が導入しやすかった。KEYは人を泣かせるので有名だと知っていても、構えてないと突然の爆発力によりやられるね。
助けが来ないのに助けを呼ぶこと。
ロボットなのに涙を流して泣いているように見えること。
そういう細かなところにも、私は目を滲まされた。アダルトの類ではないのだが、アダルトの類にしか置いてないため
手に入れるには多少コアな店を回らなければならないだろう。
それに抵抗がある人でも、あまりあまって元の取れる作品であることは間違いない。
また、話は短いが安いのでそう言う意味では手に入れやすい。
と言うか、PS2で出るから全く問題ないか。
人の心を動かす要素は何だったのか。
やりながら考えて、考えにならなかった。
何故なら、それを意識するより先に夢中になれたからだ。
面白かったからだ。それは笑いとか興味深いと言う意味ではない。
うざかった存在。変わり往く心。楽しい気持ち。
信じ始めたときの喪失。
積み上げてきた苦労が、崩れ落ちるとき。
それはがっかりと言う気持ちではなく、悲しい気持ちになる。
だがそれはもったいないと言う意味でもない。
これから楽しくなるはずの大切な未来が、失われていくのだ。
嫌なことを感動と言うとズレがあるが、そう言うことなのだ。
極当たり前のことのように思えるが、それはありふれたことではない。
人は大切なものを失うと涙を流す。
逆に、失われたと思ったものが唐突に復活したとき、嬉しいとき。
人は、感情を、心を、涙を溢れさせることができるのだ。
最後に
ありがとうKEY
やっぱり期待通りに応えてくれた
これからも この世にない天国を魅せていって下さい
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