ONE
〜輝く季節へ〜



日常が日常で居られる幸せと、変わらない日常の苦しみ、
日常が日常で居られなくなった時にこそ感じる、何気なかった普段。
その時こそ時間と思い出は儚く切なく、かけがえのない大事なものとなる、
そんな日常を意識させたストーリー。



・紹介
1998年、冬。主人公は学生である折原浩平。
欲しいものだけが手に入り、その幸せが永遠に続くようにと願ったとき、
その人は永遠の世界へと消えてゆく。それ以外は何もいらないから。
するとそれ以外のもの、あるいは人からは自分の存在が忘れられていく。
この世界に居続けるには、大切なもの以外にも、繋がりがある必要があるのだ。
それは人との繋がり・・・。
すべてが自分をこの世界に繋ぎ止めていてくれるものとして存在している。
果たして浩平はこの世界に居続けることができるのだろうか。

人との繋がりとは、この後できる『KEY』の求める方向性の前触れだったのかもしれない。
KEYのメンバーがTactics(NEXTON)から抜ける前のTacticsで作られた作品。
KEYメンバーの実力がそれ以外のTacticsのメンバーに押さえつけられているような気がしてならない。
実際結果は、抜け出たメンバーが『KEY』として作った作品は、欠点がないものばかりだった。
残ったTacticsのメンバーは、ねくすとん時代の作品をベースとした子、
Baseson(基の子)としてONEの続き?を作ったが、あまり好評ではなかったようだ・・・。
まぁ、ONEはパソゲーの中でほぼ最初の傑作品と言ってよいだろう。
昔の作品にしてはストーリーにしてもかなりの良作だったと思う。
テーマは「えいえん」。



長森 瑞佳
栗色の長髪は、横を後ろに黄色いリボンで結いでいる。浩平と幼馴染。
いつも朝起こしに来てくれる。とても友好的で、お節介焼きな性格。

浩平のことが好きな気持ちは一途でとても強い。
浩平のためなら、どんな事があっても浩平の言うとおりにする。
好きな人が居て、その好きな人のためにどんなことがあってもついていくと言う、
一途で純粋で強い想いを持てる女性が居たら、どれほど魅力的だろう。
付き合い始めてからの冷たい態度を取るしかないのには、選択肢を間違えてしまいそうだが、
その後で、浩平が今までの時間をやり直そうとして微笑みあうところは、良かった。
幼馴染のためか、異性って意識が特に無い。
こんな感じでなぁなぁでやっていけたらいいだろうなぁと思った。
浩平にウザいと言われて他人のフリをしていたので、浩平から見ると
浩平が永遠の世界に行きかけているので忘れられたのかと思ったけど、そうじゃなくて良かった。
幼い頃に永遠の世界を望み、創造した張本人。
だから最後のほうはもうちょっと壮大に終わって欲しかったものだが
ONEの終わり方っぽいのでまぁよしとするか。



七瀬 留美
エメラルド色の瞳に、青い長髪は赤いリボンで両端に結いでいる。
転校生で、転校後もいつも転校前の制服を着ている。
乱暴で、とてもボーイッシュな性格であるが、乙女らしくなりたいと思っている。

転校生で、出会う初日(学校で会う前)にぶつかると言う正にお約束な展開。
過去に剣道をやっていて、それができなくなって乙女らしさを求める。
それを応援する浩平と頑張る七瀬の共同が、いずれ互いを想うようになっていく。
浩平にとっては最初は半ば遊び半分で協力してやっていたが、
七瀬へのいじめを見てキレて、七瀬が
「なんだかんだ言って折原はあたしのことを想っていてくれてるんだ」
って言うのが良かったかな?なんか七瀬の独り勘違いだとは思うんだが・・・。
浩平はただ単にムカついてキレただけなんだろうけど、それは七瀬のためでもあったのだ。
最初はいがみ合ってばっかりだったのに、協力していくうちに恋に落ちていくのが良かった。
最後の、浩平が戻ってくるのを待ち続けていたのは、正に乙女と言ったところだろう。



川名 みさき
盲目の先輩。蒼い色のロングストレートヘアーと、光を灯さぬ瞳を持つ。
盲目であることとは裏腹に、性格は友好で優しく、至って普通である。
その裏には強弱な心を持つ。

最強に人気バツグン。
目が見えないという、ありふれた人には信じられないハンデを持ち、
光を映さぬ闇を現実にしながら生き続ける事を決心した強い心。
しかし決められた場所以外には怖くて行けないと言う、弱い心を持っているという矛盾。
片方ずつ見れば両方とも納得できる。
浩平がみさき先輩との永遠を求め始めて、永遠の世界に行きかけ
みさき先輩にも忘れられたかと思った時、みさき先輩は忘れたフリをしていた。
前に浩平にやられた冗談の仕返しだと。
その時の浩平の立場から見れば、冗談じゃないとキレるようなところでもあると思うが
そうじゃない、泣いてみさき先輩に抱きつく。なんだろう・・・。
悪い冗談でも、言ってはいけなかったことがわからなかった時にこそ感動がある、と言ったものだろうか・・・。
みさき先輩は光を失ったとき、もし自分が居なくなったら自分が忘れられるのが嫌だから、
この世界に居続けたと、その苦難をすでに経験していたからか、
みさき先輩は浩平の事を忘れなかった。
いつ何時でも、浩平と一緒に居れる事を幸せと想っていたから・・・。
盲目と言うハンデを背負っている以上、自分の事を想ってくれるほどに
嬉しいのと迷惑をかけてしまっているという相反した気持ち、
浩平のためを想って交際を断っても、浩平はみさき先輩と居たいと言い続けた。
「後悔しても知らないよ?」と言うようなそのシーンは、感動的だった。
盲目と言う設定上、色んな事を考えさせられたキャラのストーリーだった。



里村 茜
エメラルド色の瞳に、黄色い長髪を三つ編みにしている物悲しい女の子。
大人しく冷たそうな感じの性格だが、それには過去に事情があり、
雨の日には薄野原に居続ける。

過去に浩平と永遠の世界に行ったのかと思ってたら、そうじゃないのね。
「えいえんのせかい」は何も浩平と瑞佳だけにあるんじゃないんだとわかった。
過去に哀しい経験をして、その辛い思いを背負い続けている。
もう無駄だと分かっている自分の行為を、誰かに止めて欲しかったと、
そう言う思いは普通の日常で生まれない。それだけに、切なかった。
浩平の事が好きになって、浩平が永遠を求めて、消えていく。
過去の二の舞を繰り返さぬようにと、茜は浩平の事を忘れようとする。
哀しいことに涙する事を繰り返さぬために。
その時に、涙を流しながら「あなたのこと、忘れます」
と言うところは、つかの間の幸せって何て儚いんだと、涙した。
どうでもいいが、音楽でEFZで流れる茜のテーマと全然雰囲気が違うので
音楽は新鮮な感じがした。



上月 澪
生まれつき声帯にハンデを持った女の子。
蒼い色の瞳に青紫のショートヘアーを持つ。演劇部に所属している。
言葉がしゃべれない代わりにいつもスケッチブックを持ち、
それに言葉を書き自己紹介をしたり、思いを伝えたりする。

私だったらしゃべれなくなったら人生の生甲斐をなくす。
しかし、思いを伝える方法はいくらでもあると、その方法をスケッチブックにした。
しゃべれないため多くは語ってくれないが、その裏にはどんな辛い思いがあったろう。
浩平が「えいえんのせかい」に足突っ込みかけてるときの、澪の
「他人を見るような目」がとても痛々しくてやるせない気持ちだった。
一応昔に浩平と会った事があるらしいが、それも唐突に明かされるので実感が・・・。
言葉が話せなくても、手話じゃなくて思いを伝えることの大事さ、
その方法、スケッチブック、演劇、その珍しさと苦難が感動を呼ぶ。
はずなんだが・・・なんか声が聞けないのでいい加減な気持ちでプレイしてしまい
あまり泣けなかったりした。



椎名 繭
大事に愛していた家族とも言えるペットのフェレット「みゅー」が亡くなった時、
泣いてばかりいた女の子。青い瞳に赤橙色のショートヘアーな女の子。
「みゅー」を失って以来、心を誰にも打ち解けない性格でいる。

なんかキャラが微妙に澪と被ってる感じがするんだよね・・・
まぁ髪の設定とか変えたらまたイメージ違うだろう・・・。
他人がよほど酷評だったんで私も影響されてしまい、
最初にやったストーリーだがいい加減な気持ちでやってしまったため
全然泣けなかった(汗) 浩平がなんで繭を好きになったのかもイマイチ明白でない。
開発陣が繭で伝えたかったことは・・・人の成長ではないかと思う。
「みゅー」が居なくなってから繭はまるで幼い子供が誰にも馴染めないようだった。
学校に潜り込んでばかりだったのに、我慢して来るなと言えば待っていたり、
泣いてばかりだったのに、迷子のペットを飼い主に届けたりと、
何かが色々と変わっていくその成長振りが、微笑ましかったと思う。
みゅーが居なくなったときは哀しいときは独りで泣いていたのに、
浩平が居なくなったとき、『初めて母の膝元で泣いた』のも一つの成長ではないかと思った。




・シナリオ
変わらない幸せは退屈でしかない。
時間がどんなに無限でも、幸せでなければ、幸せだった時の少しの時間の方が大切であり
それはかけがえのない思い出であったこと。
自分の時間が無限で変わりない退屈よりも、忙しく時間のない中にある方の幸せの方が良いということ。
浩平が永遠の世界へ行きかけている時の、限りある時間がかけがえのないものであることが描かれている。


・CG
昔のだったので多少酷いような感がある。背景なんかついでにとってつけたような感じ。
何もかもが「昔だったので」と言ってしまいそうだが、フルボイスつけて更新したからには
前と全く同じでなくても多少綺麗にして欲しかったなーとか思う。ファーストリリース版は知らないけどw


・BGM
ヒロインそれぞれのテーマが良い。タイトルの選択画面は何も流れなくて、EDも歌詞はなし。
お気に入りは「オンユアマーク」「8匹の猫」「無邪気に笑顔」「潮騒の午後」など。


・システム
主人公以外フルボイスあり。
読み返し機能あり。限られた読み返しの中で過去ボイスも聞ける。
キーボード操作も可能。Ctrl+Cすると読んでいないメッセージまで飛ばせる。
セーブ箇所はたくさんあり、余裕。
ロードするとき、右上にイメージが表示されるのでわかりやすい。
起動するときはオリジナルCDを入れないとできないが、
起動すればCDはいれていなくても音楽は聴けるので取り出しておいて良い。
おまけモードではCG、BGM、声優のボイスでのコメントがある。
昔のものなのでややこしいのは必要ないし、まぁ一通り揃っているので問題ない。


・総合評価・全体的感想
広瀬の立ち絵があるのにおまけ声優ボイスコメントの時では立ち絵がなく、
氷上シュンの声優ボイスコメントが有るのにその立ち絵と出現はどのストーリー上にも現れなかった。
私のプレイが足りないのは内緒だ。(・ω・)

暇過ぎた春休みにやったもんで、余計「日常」と「永遠」を深く感じることができた。
毎日ご飯を食べれるのが当たり前の日常、毎日寝てばかりで変わらない永遠。
それは例えば、裕福な家庭に生まれ、宿題もない自分の時間だらけの長い春休み。
幸せになりたいと変わる事を願い、なった瞬間変わらないことを望む。
人は幸せの時、幸せでなくなった時の事を恐れ、永遠を望むもの。
それは例えば、恋人と両想いになれば別れる時の哀しみを恐れるもの。

毎日飯を食べれるという当たり前の日常がとても幸せなことに気付いた。
人は、変わりないだろう明日に守られ、そして明日は変化が訪れていくことこそが望ましいと、
そう言う事に改めて気付けた。
自分が忘れていくのではなくて、他人に忘れられていくその価値観が新鮮で、
何気ないものに、強く感じることができた、良かった。

『時』と、変化していくこと、人との繋がりの大切さを伝えられた作品だった。
プレイする人には、そう言うものに気付いて欲しいと思う。



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