かれんだー0表示(即更新なし)
1秒待ち
クロスフェード更新
カレンダー27日目表示
クロスフェード通常
CG消去
1秒ウェイト

 ====================================== 紅瀬 烈 ====================================== 

夢を見ている…。

烈『今自作PCにつけているUSBポート機器をまとめてみた!』
烈『マザーボードに直接つけているのは、サウンドボードとUSB3のフラッシュメモリ、ハブでしょ〜』
烈『10ポートハブには、4ギガのフラッシュが2個、カードリーダが1個』
烈『ちっちゃい外付けハードディスクが1個、フロッピーディスクドライブが1個』
烈『お友達のハードディスクとその電源が一つずつと、外付けのブルーレイディスクドライブが1個』
烈『内蔵ハードディスクを外付けにしたやつが2個で、計10個全部使ってる』
烈『もう一つ10ポートハブがあって、マウス2個、ゲームパッド、ケースファン代わりの扇風機、テンキー』
烈『ケータイ、延長ケーブルと、あとはブルーレイディスクドライブの電源、外付けの電源』
烈『最後に、PC同士をUSBで繋ぐリンクケーブルで、合計20個以上使用だね!』

彷徨『マウス2個とか何に使うんだよ…』

烈『まだあるよ。3つめの10ポートハブに…』

彷徨『まだあるのかよ』

烈『マウス2個、1ギガのUSBフラッシュメモリ、外付けハードディスクに、リンクケーブルの繋ぎ先…』
烈『あと、コンバータ用の電源だね!』

彷徨『同じことを言っているのか、違うことを言っているのかわからん。それ、マウス計4個か?』

烈『そうだよ!』
烈『ハードディスクの合計容量を計算するとね!えーと…』
烈『ノート250ギガ、外付け150ギガ、内蔵外付け150ギガ、友人の100ギガ…』
烈『32ギガのが6つ!それぞれ、SSD2個、ミニノートの内蔵、外付け、内蔵外付け、USB3…』
烈『あとは4ギガのUSBが2つ、1ギガのUSBが2つ、1ギガのカードが1つ』
烈『合計、853ギガだよ!』

彷徨『あー、そりゃすげー』

烈『だから、その凄いはあんまり嬉しくないんだってば』

---------------------------------------------------------------------------------------------------

未夢「…」

夢を見てた。

烈くんがなんだかよくわからない自慢?をしてた。
彷徨がそれに突っ込み、烈くんが笑ってた。

そこで終わってたから、その笑顔が脳裏に焼きついていた。

未夢「なんなんだろ…あーもうっ」






ピンポーン

声『はーい』

未夢「あっ、あのっ…光月です」

雪『まぁ、光月さん?またいらしてくださったのですね。少々お待ちください』




雪「今、烈を呼んできますから」

未夢「あ、いや…」

何かを言い切る前に、雪さんは呼びに行ってしまった。

…何とは無しに、またここに来てしまった。

来て、何になるというのだろう?

…何かになるんだ。

あわや、そういう期待を抱いているのかもしれない。

烈「暗きと明るきを併せ持つ烈参上!」
烈「どちらが本物でどちらが装いなのでしょう…」
烈「時によりどちらも本当でどちらも偽り」
烈「喜怒哀楽の激しさと意味不明発言こそが私」

未夢「…」

廊下から、ざざーっと彼が現れた。
昨日とは打って変わったテンションだった。


烈「…何か反応が欲しいんですけど」

未夢「ああ、えっと、昨日とは違ったテンションだなって」

烈「うーん。それで?何か用?」

未夢「ああ、いや…」

烈「まぁ、用がなくても、ゆっくりしていってよね」
烈「雨の中、よく来たね」

未夢「…本当の烈くんははどこにあるの?」

烈「え?」

烈くんは不思議そうな顔をした。

未夢「さっき、どちらが本物でどちらが偽りなのかって。どっちもって」

烈「…私は基本的に何かを演じてる」
烈「中学時代辺りに身も心も壊れたから、きっともう常に狂ってるんだよ」
烈「今、と言うか常時冷静なのも、装ってるだけ」
烈「常に狂うことができる」
烈「そうしないのは、生活がまずくなるから」
烈「一々『そうしないのは』とか考えるあたりがもうすでにおかしいでしょう?」
烈「この壊れた精神を、私を私自身が操っている」
烈「烈と言う肉を私と言う精神が操っている」
烈「今の私は、冷静を操る私…」
烈「だけど、仲の良い友達と居ると、演じたり私を操作するとか言うことは一切ない。なんでかな?」

それはわたしが知りたい。

烈「あぁ〜…」
烈「気の知れない人の場合だと、笑わせようと言う魂胆が出るから多少の演じが入るのだけど」
烈「気の知れてる人だと自然な笑いと幸せと心地よさが生まれるから演じたりしないんだ」
烈「疲れないんだ。だから気持ちいいんだ」








烈「さっきさ、ニュース見てて中学生がじさつした〜とか重い話があったけど」
烈「使者に鞭打つようで悪いけど…」
烈「よくそんなことする勇気があったな…とか変な感慨が沸いてる有様だよ」
烈「だってめちゃ苦しい&痛いじゃん。つかそんなことするくらいなら少しぐらいは反発して見せればいいのに」
烈「殴られるぐらいの痛みで終わるなら軽いもの。もっとも当時本人はそうは思ってないだろうけど」

未夢「烈くんも昔そんなことが…?」

烈「過去に戻れるなら自分をボコったやつらをボコボコにしてやりたいよ。つかついでに自分もボコる!」
烈「何やってんだってツッコミます!」

未夢「でも、むつかしいよね」

烈「まぁ周りの大人も、子供の苦しみをわからないのがダメだね」
烈「先生でも意外と他人事とか放置って感じなんだなって思ったし」
烈「大体の人は幼いときに一度くらいいじめにあったことがあると思うけど」

申し訳ないが、わたしはない気がする。
わたしがそう思ってるだけで、向こうはそういうつもりもあったかもしれないけど。

烈「自分のクラスにいじめられている子がいるかどうかぐらいすぐに反応できると思う」
烈「その辺敏感に感じ取ってほしいよね。その子は周りの救いを待っているんだから」
烈「周りの、その人にしか救えないんだから」

烈「昔さ、踏み切りの中に飛び込みそうになったことがあったんだ」

烈くんは飛び切りの笑顔で言うが、その心境はどんななのだろう。
正に、何が本当で偽りなのか。

烈「そしたら、零が助けてくれて、こんなことを言うんだよ」

零『全く世話やかしやがって』
零『おい、てめぇ。帰ったらマジのグーで100発殴る』
零『だからいつも俺に殴られるために』
零『生きて帰って来い』

未夢「それはちょっと」

苦笑いする。零くんらしい、表現の苦手な感じだ。

烈「でしょ!?余計帰りたくなくなっちゃうっちゅうねん」

烈「でもね、どこか嬉しかったんだ」

烈「学校で嫌な子に叩かれるのは嫌だけど、あの零がわざわざ叩いてくれるって言うことが」

確かに、あの言動の少ない零くんからは考えられない。
いや、昔はもっと活発だったのかもしれないけど。

わたしは何しに来たのだろう。
何かを色々聞こうとも思っていた気がするけど、烈くんが自然と何かと話し出していた。

---------------------------------------------------------------------------------------------------

烈「昔か〜、昔といえば、日記書いてたんだけど」

未夢「烈くん、日記書いてたんだ」

わたしも、書いておけば良かったかな。

烈「過去の日記見てて、色々と『頭大丈夫?』ってツッコミたい」
烈「恥ずかしいと言うか、見てて馬鹿」
烈「自分のことなのに他人事みたいに見てたり」
烈「まぁ過去と今は延長線上に居ても別だしね」

未夢「過去なくして今はないから」
未夢「過去ばかり見てると暗いとかあると思うけど」
未夢「それをどう見るか?が問題だよ」

未夢「別に振り返ることは暗いことやいけないことじゃない」
未夢「かつての行いを見改めることで次に活かせることもできる」
未夢「もし過去が本当にどうでもいいことならこの世に日記と言う概念は生まれなかったはずだよ」

烈「なにそれ、なんかそれ未夢さんカッコイイね!」

それこそ、なにそれ、だ。

烈「ショックだったのが、2ヶ月ぐらい前の日記を見て」
烈「今もそれが解消されてなくて、放置でそのまま消えてること…」
烈「色んな意味でげんなりします」

烈「あんまり仕方ないって表現は使いたくないけど」
烈「環境を動かしようがない場合には使うけど」
烈「人の心を動かせないのは仕方ない、って言うのは唯一大っ嫌い」
烈「この私が、嫌いと言う表現を使うことを嫌ってるのにわざわざ言うほど」

未夢「…」

烈「ある人が厳しい性格なのが仕方ないからって哀しんでいる人を放っておけない」
烈「あの人が少し変わるだけで良い方向に動くと言うのに」
烈「変われないのを仕方がないだなんて…」
烈「そう言う『仕方ない』には私は憤りを隠せないです」

烈「そんなのその人の自分勝手でしかないと言うのに」
烈「日本人は自分が我慢することでその事件を沈静化させようとする」
烈「そう言う文化を持ってるみたいですけど私は反対だよ。消極的」

烈「そんなの一時的に収まってもまた起こるに決まってる」
烈「そしてやがてはとりかえしのつかない事になるだろう」
烈「そんな事さえも、自分はありえないと言って気付かずに…」
烈「みんな気付いてほしい。周りが一言発するだけで哀しむものは救われるって」

未夢「なんか、アツイね。何かあるの?」

烈「えっ?いや〜、なんとなくそう思ったらマシンガンになっちゃったね」

あっはっはと誤魔化す烈くん。
お父さんお母さんのことを言っていたんだろう。わたしは知ってる。
でも、それが烈くん自身にも当てはまることに、彼は気付いているのか?
それを知る由はなかった。

烈「私に足らないのは聞き上手の能力かな」
烈「今まで出会ってきた人の中で、しゃべる側の人なんてあまり居なかったので」
烈「じゃぁ私がしゃべってやるかとそう言うことでそのままキャラが固まった感じだけど」

未夢「そうなんだ」

烈「さすがに疲れました」

未夢「今更」

くすくすと笑い出してしまう。

烈「誰かの話を延々と聞き続けたいね」
烈「多分、気性柄、途中で割り込みたくなる性分を抑えつつ」
烈「で、その内キレる、と」

未夢「結局しゃべるんだ」

鋭いツッコミをした。

未夢「じゃぁ烈くん、少しお話が…」

烈「なぁに、未夢さん…」

未夢「烈くん、確かにお父さんは厳しい人だよ」
未夢「そしてきっと、烈くんのことを大事に思っているし、賢いよ」
未夢「でも、それだけ賢いのにも関わらず、すぐ怒るのは癇癪持ちだからだよ」
未夢「だからお母さんはお父さんの命令に対して、100回あって100回守るとは思えない」
未夢「お父さんは賢くても統率力が足りない」

未夢「これを利用して、お願いするのはお父さんではなく、そのお母さんに対して行うの」
未夢「それもお父さんには知らせないよう、賄賂でも与えるかのように秘密裏に行うの」
未夢「それがお願いだと知ったとき、お母さんはお父さんの許可も得ずにOKすると思う」
未夢「一度で上手くいかなくても繰り返せばそのうち悩んでくる。そのとき強気に出るの」
未夢「人を射んとせばまず馬を射よ!とあるように、まず周りからいくの」

未夢「零くんは、家で待たせるとお父さんに気付かれかねないので、すぐに引き上げさせる」
未夢「繰り返すと返されなくなるから、回数を重ねてきたら別の手を使う」
未夢「手紙をこっそりおいて行くの。そうすれば誰も怒られない」

烈「うーん…いい作戦だ。お父さんの弱点を突いてる…」
烈「よーし、その挑発の役目、未夢さんに任せよう!」

未夢「はーい。その際、烈くんのお名前を使用することを許して」
未夢「万が一お父さんの目が通ったとき、わたしが勝手にやっていることを悟られないため」
未夢「また、零くんを出す前に一度烈くんに手紙の確認をお願いしたいな」

未夢「…って、突っ込まんかい!」

思わず手を出してしまってた。

未夢「あ…ご、ごめん、つい」

烈「あっはっは!いやいや、ついこちらこそ、乗ってしまったよ」
烈「今の何の話なの?」

泣き笑いする烈くん。

知ってか知らずか…。

ブーッブーッ

その時、ケータイが鳴った。
けどすぐに静まったから多分メールだ。
今は烈くんとお話してるからあまりメールは見ないようにしてたけど。
その時だけは何故か気になって見てみたら、彷徨からだった。

未夢「このタイミングで彷徨から?珍しい、どれどれ…」

烈「……」

==================================================================

未夢「…ん?どうしたの?烈くん。何かあったの?言ってみて」

烈「未夢さんには敵わないよ」
烈「実は未夢さんがあまりにも西遠寺くんのメールを欲しがっていたから羨ましく思って」
烈「私も西遠寺くんのように期待されたいの」

未夢「あっははは、そんなこと」

烈「未夢さん、恥ずかしいけど私は真面目だよ」

未夢「わたしは女子中に通ってたけど、ママたちがアメリカに行くって出て行っちゃったから」
未夢「ママの親友さんの家に来て、そこで彷徨の存在を知った」
未夢「色々あって、3年も経った」
未夢「彷徨のメールが早く見たいといったのは、今まで付き合った時間が烈くんより長いので出た言葉だよ」
未夢「わたしは烈くんのことも彷徨同様に信頼してるから、何も心配しないで」

烈「う、うん…ありがとう」

----------------------------------------------------------------------------------------------

烈「…もう夜だね」

烈くんの家には夕方ぐらいに来ていた。と言っても時間は夕刻よりかなり前。
冬至が過ぎ、後は明るくなる一方とは言っても、まだ真冬では夜になるのが早い。

烈「私は夜が好きなの」
烈「この物悲しさが…」
烈「昼の喧騒は、私の心に酷く嘘をついて…」
烈「夜の寂しさは、私にとても適っていて…」

未夢「そうなの…?明るい方が、遊びに行けたりして楽しいのに」

烈「私、人の好き嫌い激しいみたいだから」
烈「あんまり、人とはね」

未夢「そ、そうなんだ…」

烈「嫌いな人ってのは、自分勝手な人とか礼儀・常識知らずな人」
烈「自分勝手なのを許せなかったり、感情が濃いために文句を言って問題を起こしたり」
烈「許容範囲が狭いから、器が小さい」
烈「神経質だからこだわりもある」
烈「自分の考えとしてしっかり持ってるんだけど、それがリスクになるときもある」

烈くん自身のことだろう。自分で整理しようとしている。

烈「私だけがおしゃべりに集中してて…他の人は聞いてるだけで…」
烈「話題振っても反応はなくて…」
烈「自分だけ一生懸命なのが馬鹿に思えて…反応しないやつらがむかついて…」
烈「私って性格明るい、って人にアピールしてさ、『落ち着きないだけじゃん』って言われた感じ」
烈「むしろ、成績より、やる気、向上心とかのが大事とか言ってたし」
烈「ただ、私はしゃべるの好きだからよく発言するし、確かに知ってる友達の中で上位に居ると思う」

未夢「わたしは、烈くんとは色々お話聞けるから、楽しいと思っているよ」

烈「そういってくれると、救われるけどね」

烈「…前言ったかもしれないけど、私は創作系の職業希望なんだ」
烈「私は色々感動したり考えさせられたりした」

烈「就職活動したら、面接時じゃメディアの具体名は言えないけど」
烈「友達のリンクやネットワークいっぱい広がった」

烈「創作は人を変えることができる。作品が理由で、大人しい子もそれを繋がりに友達が増えるかもしれない」
烈「あるいは、人に感動を与えることができるかもしれない」
烈「そう言うモノを作りたい」
烈「そう言う思いをしてる人とともにそう言うモノを一緒に作れることは素晴らしいことだと思うんだよ」
烈「だから創作系に行きたいんだ」

烈「これだけはっきりした思いがあると、他の方に面接行った時に」
烈「『どうしてここを選んだか』って聞かれて行き詰りそう…」
烈「自分には大切な思いがあるのに何でここを選んだのか?」
烈「夢を捨てるほどの希望がここにあるのか?って自問自答してそうなんだ」

烈「実際、私はここに来てなかったら未夢さんと今話をしていなかったでしょう」
烈「私にとって未夢さんは単なる話相手ではなく、相談相手としても、友達としても大きな存在だ」
烈「それを、偶然が後押しをした」
烈「未夢さんはそう思ってるかもしれないけど、私は違う」
烈「あの偶然がなかったら、今こんなに話を弾ませていないかもしれない」
烈「それらは私という人間に一つの楽しみを与えてくれたんだよ」

未夢「人との繋がり…?」

烈「楽しくなることに夢中になれる、友達を手に入れる、それは十分な魅力じゃないかな」
烈「例えそれで友達ができなくとも、その人に何かを考えさせることができる」
烈「その人の人生を良い方向に変えれるかもしれない」
烈「夢を与えることによって、良い方向に向かうかもしれないじゃないか」
烈「これが私が思う創作の良さ」

未夢「いいんじゃないかな」

烈「これをやって人生が良い方向に変わった。作成者の人には本当に感謝したい」
烈「こんな言葉見たとき、自分が作ったモノで陰湿だった人の助けになれれば嬉しいなと思ったんだ」
烈「人付き合いがニガテそうで、すごく内気な子知ってるけど」
烈「同好会みたいな掲示板のおかげで、友達ができたみたい」
烈「その子それ以来明るくて人付き合いいいんだよ」
烈「これは、人を良い方向に変えたと、見えないだろうか」

これまでの話の流れは、一貫性がなく、急カーブだ。
まっすぐ走りたい放題走って一息ついたら、90度曲がってまっすぐ、みたいな。
マシンガンのように彼は話していく。
何らかの鬱憤があったのだろう。
それを聞いてあげられることで、少しでも彼の何か、苦しみを取り除いてあげられたなら…。

=====================================================


零「…ん?…ああ、光月、来てたのか」
未夢「うん、こんばんは、零くん」
零「こんばんは」
律儀にご挨拶された。
未夢「えと、インターホン鳴らしたけど、聞こえてなかった?」
零「ん、そうだったか」
烈「ほらあれだよ、その辺気にしないやつ系だから」
未夢「あっはは…。零くんは、何してたの?」
零「テスト勉強だよ。そろそろ近いし…」
すっかり忘れてた。
零「まぁ、ほとんど一夜漬けみたいな状態に近いけどな」
未夢「零くんはそんなことないでしょ、授業をちゃんと受けてるし」
零「いや…わからなくて実は船こいでる時もあるぞ」
未夢「そ、そうなんだ」
授業中、烈くんや彷徨と私語を挟むことはあるけど、零くんに関してはほぼない。
実は毎回船こいでるとか…。


零「まぁ、過程をおろそかにしても、テストで一夜漬けでなんとでもなるし」
零「なんとかならないこともないが、こんな能力、意味ないよな」
烈「そんなこと言わないでよ、普段ダメで一夜漬けもダメな私はどうなるの」
泣きそうな声になっていた。
零「いや…俺は見ての通り暗いし、こんなのあってもダメだ」
寂しそうな顔でいう零くん。
ありゃ、零くんってそんなに暗かったっけ。
零「俺はふとたまに思うよ。こんな自分が生きてて意味あるのかって」

烈「たかが一夜漬けかもしれないけど、それ何かの力に使えるんじゃない?」
烈「自分が自分を好きになれるところとか、誇れるとことか見つけていければさ」
烈「そんな、いて意味ないとか、言わないでよね」

烈「じゃぁ私は自己嫌悪抱いてるのになんで今生きてるか説明してあげよう」

なんかまた脱線的に話がでかくなった。

烈「自分が本当の本当に死んで欲しいほど嫌で、居ても意味無いと思ってるなら本当に自殺してただろう」

烈「いじめられてたときそう思った」
烈「非常にどうでもいいことだけど、私が死んだ時その後片付けをする人の事を考えたら、大変だろうと思った」
烈「すると、私が何かをすれば回りに何か影響を与えると」
烈「少し良い方向に考えてみた」

烈「私は、絶対誰かに良いことをすることができる、良い影響を与えることができるって、信じてみたんだよ」
烈「自分が存在しているせいで誰かが迷惑してるかもしれない」
烈「でも、私が存在しているだけで喜んでくれる人物を助けたい、そんな人間を探すのを夢見たんだ」
烈「中学の時、数学の問題が分からなくて私に訊いてきた子が居てね」

烈「解き方と答え教えてあげたらすごく喜んでくれて、私も嬉しかった」
烈「そん時、ああ、私はこの世に居ていいんだな、って思えた」
烈「そしてたくさんの人に、自分を知った人に、私に影響させられた人に幸せを与えたい」
烈「でも、その中には私のせいで不幸になる人もいるかもしれない」

烈「それを無視するのは後ろめたいけど、私は私に会ったことある人たちを少しでも幸せにするために、今を生きてる」
烈「私は何かの役に立てると信じてるから」
烈「自分の存在を信じてるんだよ」
烈「自分が嫌になることもあるよ」

烈「でも私がいるから笑ってくれた人もいた」
烈「その人のために、何かしてあげたいと思う」
烈「すると、自分を嫌ってたことなんてどうでもよくなる」
烈「私は自分のためだけじゃなく、他人のためにも生きたい」

未夢「よく、そこまで考えられるね…」
何が彼にそこまで考えさせたのだろう。
でも、今話された内容は、どこかわたしが求めていたのかもしれないものだった気がする。

零「でも、何か、変だ。だから、自分が生きるのは自分の為だと考えて」
零「自分が生きることによって、悩み苦しむのが自分の為というのもおかしな話だ」


烈「じゃ、なんか家族揃ってピンチになって死にそうになったとします」
じゃ、ってなんだろう。そしてどういう状況だろう。
烈「自分が死ねば妻と子は助かる、自分が助かれば妻と子は死ぬ」
およそ非日常的な非常事態だ。
烈「まぁ私はどっちも選ばねぇ…妻と子が助かっても自分が居なきゃ誰がこいつらを世話する?」
烈「かと言って命あれば家庭をまた作ることもできると言っても」
烈「こいつらの分まで長生きして苦しもうとは思わない」
烈「自分は自分のためだけに存在してないって意味だよ」
烈「だからと言って他人だけのために存在してるわけでも無いと言う意味でも有る」
烈「矛盾あるかもしれないけど、私の夢は家庭を持つこと、新しい家族の為なら頑張れると思う」
烈「そう、そのために生きるんだ。そして得られないかもしれない夢のために汚く頑張れ」
烈「自分が奥さんのために生きて、奥さんが自分の為に生きる、これが素晴らしいと思う」
烈「もしその幸せが得られなくても、立ち回りでよい人生が送れるはず」
零「もしそういう状況になったら、俺は死ぬかな…それで生き残っても、辛い人生が待ってるだけだ」

烈「零は私とは逆に、将来が保障されてないと嫌なのか…」

なんとなく、意外だ。
弱った烈くんを励ます零くん、みたいなイメージだったけど、その逆だ。

烈「確かに、ゲームやってた頃は絶対勝つ試合だけが面白かった」
烈「でも、ゲームだけど別の攻略モノとかやり始めたとき、考え変わったよ…」
烈「なんか、負けてもいいから楽しもう、選択間違ってもいいからその時はその道楽しもう、って…」
烈「そしたらあとはがむしゃらに頑張るだけ」

未夢「そこはゲームでの例えなんだ」

烈「べ、別にいいじゃんっ」

烈「零は隣で誰か笑ってたら楽しい気分になったりする?」
烈「もしかしたらその人は、その次そんなに笑ってくれないかもしれない」
烈「それでも、その人の笑顔を見たいと、頑張れる?」
烈「女の子だったら余計頑張る!頑張ったせいで嫌われるかもしれなくても」
未夢「あはは。そうなんだ」

堂々と言った割には照れていた。
突っ込まれたことにより、スルーできず、ごまかしきれなかったらしい。

烈「その時頑張ったことには、絶対何かしらの意味があるはずだから」
烈「笑ってくれないかもしれない子のために頑張れるんなら」
烈「将来幸せじゃないかもしれない未来のために頑張れるよ」
烈「その『光』を集めるんだ」
烈「笑いと言う名の光を集めるんだ」
烈「その先には…きっと幸せな未来がある」
烈「集めた光の中に、将来奥さんになる人が紛れ込んでるかもしれない」
烈「動かずして幸せはやってこないんだ」
烈「だからさ、そういうときに死ぬとか言うのやめてよ」

零「それは…わかるけど、俺まだ家庭持つとか考えてないし」
零「でも、俺は明らかに周りと違う。違うんだ…」

零くんは、どこか劣等感を持っているらしかった。
ここに来なければ見えなかった、彼らの会話。

烈「学校に来て、周りを見ると自分と違うから客観的に見れたり、その逆もある」
烈「なんか、自分は普通だと思ってたけど、自分がある世界に入ったときに」
烈「ああ、自分は実はおかしかったんだ、と気付いたって感じだね」
烈「その世界って存在自体を知らなかったってのもあるけど」
烈「私みたいなオタクさんとかも、そんなことあるけどね」
烈「2次元の世界、有り得ない世界に夢中になって、それが当たり前になってたり」

烈「そいやどうでもいいけどオタクってアニメとかゲーム好きの連中のことしか指してないよね…」
烈「皿集め大好きなヤツのことはオタクとは言わないしね…ただのコレクターか」

未夢「言えるのかもしれないけど、そういえばそういうイメージはないね」

烈「オタクってあれだよ、萌え〜ってやつ」

零「もえって、好きとか興奮するって意味のやつか」

烈「そうそれ!あーでも、その意味が世間的に定着してきたから、それでオタクとか迫害されたり、キモイとかないのかな」

烈「私がいうとキモイけどね」

烈「知ってなおキモイと言うのなら私は神クラスじゃないか」

零「いや実際、神じゃないか?」

めちゃくちゃ言ってるよ。


烈「話戻すけど」


烈「今を頑張る糧は、奥さんと、子供のために勉強とかを頑張れたらいいよ」
烈「とりあえず生きて人と交わっていけば、見つかるはずだよ」
烈「生きる理由とかさ」
烈「さっき、家庭持つとか考えてないって言ってたけど」
烈「この世の中どれだけの家庭がいるんだよ」
烈「夢を掴もうよ」
烈「動かなきゃ一生掴めないぞ」
烈「その旅を人生とするか」
烈「それもまた一興だ」

零「えと…そんな話だったか」
確かに。
脱線から脱線へ。

烈「もし私が、それで頑張れねぇなら本当に今すぐ死んじまえと」
烈「そう言われたら文句は言えないと思う」
烈「役に立てない、希望も持ってない人間はこの世に居たって無駄だし、ゴミだって」
烈「そんな闇の考えが、私の奥底にある」
零「ま、それは俺も少しあるかもな…」
未夢「そ、そんな、居ても無駄だなんて、そんなことないよっ…」
烈くんはニコッと笑った。どこか寂しそうに。
烈「人のためにいきるんだ」
烈「お前の頑張りようで他人が幸せになる」
烈「その笑顔を見るのが人生の楽しみにならないか」
烈「そしてその笑顔が自分だけに向けられてみろ」
烈「もうウヒャウヒャだぞ」
烈「そうなるには、動くしかない」
零「ああ…そうだな」

烈くんは、暗そうに返事する零くんに優しく微笑みかけた。

烈「零はさ、人をあんま傷つけない 数少ない人の良さを持ってる」
烈「私が見てきた人間の中で、こいつは居ても人に迷惑がられるだろうって存在は多くいた」
烈「過去ばかり振り返ってるなら死んだ方がマシ」
烈「自分のためだけに生きてるやつってどう思う?」
烈「他人に迷惑かけても自分が良けりゃいいって思ってるやつだぞ?ぶっ倒したくないか?」
烈「私はそう言う人間になるのが嫌だった」

烈「それが父だった」

ここに来て、忘れかけていた、いや、むしろ忘れていた方がよかったかもしれない、話を聞けそうだ。
長い話の間、どこか話したくなく、話題を彷徨ったのかもしれない。
けど話すうち、そこに終着するような入り方だった。


烈「私は父と真逆の人間になりたかった。反面教師としたんだ」
烈「父は人思いがなく、そして能力は優秀な人間だった」
烈「私は能力はないが、人には迷惑はかけない。そんな人間になりたかったんだ」
烈「利己的な人間も、欲深い人間らしくていいかもしれないけど、私は嫌だったんだよ」
烈「人の悲しい顔を見るのが」
烈「両親の痴話喧嘩、母が父に泣かされる顔を見るのが嫌だったんだ」
烈「そんな顔を幸せな顔にするのが、今を生きれる楽しみの一つなんだ」
烈「私は、零や未夢さんの笑顔を見るのがとても楽しいよ」

こちらを見て言う。

烈「昔インフルエンザで寝込んでて眠りすぎて夜寝られなくなった」
烈「その時、零は私に嫌なこと何一つせず、私を笑わせてくれたよ」
烈「そう考えたら、感謝の気持ちでいっぱいになって…一時間ぐらい泣いてた」
烈「そう言う人たちのために、何かしてあげたいんだ」

零「えっと…そんなことあったか」

零くんが照れながら言った。
烈「本人は忘れるもんだよ」

烈「相手はきっと何とも思ってないかもしれない」
烈「それでも、私は自分を幸せにしてくれた人のために何かしたいんだ」
烈「自分だけが直接何かを作れなくてもいい」
烈「でもそう言うコトに携われれば、それは素晴らしいことだと思う」
烈「その一員になりたい」

未夢「うん」

自分に嫌悪感があっても、そう思ってがんばれるなら、とても良いことだと思う。

烈「でもね…あんな父の言動でも」
烈「何ていうか…一人の人間が考え出したものなんだ」
烈「それには直情的であれなんであれ、理由のあるもの」
烈「それを蹴りたくないんだよ」
烈「ただ、他人に迷惑をかけないのであれば何であれその考えを尊重したいだけ」

烈「まぁそいつらがお互い好きなら勝手にやってりゃいいさ」
烈「って言う程度なんだよね。軽く言えばの話だけど」
烈「愛なんか、他人に迷惑かけないじゃん。お互いが好きなら恋の形は色々」
烈「んなら同性だろうが親近だろうが、お互い好くのは何とも思わないってこと」
烈「まあ世間体がヤバイけど」

零「何の話だよ」
烈「要するに、私は零が好きだから暗いこというなってことだよっ!」
烈くんが、零くんに多い被さるように襲いかかっていた。
零「うわっ!やめろ!わかったから!てか暗い続けたのお前だろ!」
零くんは嫌がってたけど。
じゃれてるだけだった。
---------------------------------------------------------------------------------------------------
未夢「そういえば、テスト勉強のおジャマしてごめんね」
零「ああ…いや、気分転換になったし…なったか?」
自分に問いかけてた。
零「っていうか、お前たちもやれよ」
未夢「えっへへ…なんかもうどうでもいいかなって」
烈「えへへ…」
ゴッ
零「光月はともかく、お前はやれよっ」
烈「痛った!今私なんで叩かれたの!」
零「いやなんとなく」
烈「なんとなくで叩くなよ!私は木にぶら下がってるサンドバッグか!」
なるほど。確かに叩きたくなるのかも。

でも、わたしは少なくとも今は、自分だけのことをやるより、彼らの話を聞いていたかった。
でもそれも結果的には彼らのためにはなってないのかもしれない。
全て、わたしの自己満足なんだと思う。
零「あと、光月がいたから、なんとなく入ってしまったのかもな」



未夢「そんな…別の誰か、可菜ちゃんとかでもいれば、零くんもきっと入ってくるよ」

未夢「わたしでなくても、通ったのが零くんじゃなくても」
未夢「友達同士が、通りかかったなら」

烈「違うね…誰かが居たってみんな入るわけじゃない」
烈「要するに、話したい人物が存在しないんだ」
烈「いい意味で変な事を言う人も、活発な人も」

烈「そんな魅力的な人は、そこからは出て行くんだよ」
烈「ここはもう廃れた。跡地でしかなくなった」
烈「我もいざ旅立たん…」
烈「足と羽を汚して飛び立てん…」

烈「きーん」

烈くんは両手を横にやりながら、出ていった。

未夢「あ、ちょ、ど、どこへっ?」
零「多分、トイレだろう」
そっか。長いこと話してたし。

未夢「烈くんは、テスト大丈夫なのかな?」
零「いや…この前の小テストも、悪かったと思うぞ」
未夢「そ、そうでしたか…」

零「そしてあいつは、普段がんばらないというか、ノートとかはちゃんと取るんだけどな…」
零「一夜漬けしてみたがダメだったというか。あいつの点数見るか?」
未夢「や、いいよ、勝手に見たら悪いし…」
零「あれ?この前この辺に放置されてたけど、ないな。片付けたか?」
未夢「そりゃ、点数の悪い用紙をほったらかしには…」

声「何度言ったらわかるんだ!このたわけが!!!」
未夢「…」
零「…」

怒鳴り声だ。まただ。
零くんの顔を見た。言葉のない、質問だ。
どういうこと?と。
零くんは黙って首を横に振ったが、トイレから戻ってこない烈くんと関係があるのか。
いてもたってもいられなくなり、立ち上がり、その部屋を後にした。
零「あっ、おい…」

声がした方に向かった。
辿りついたのは、同じような部屋。
戸は閉まっている。
声「お前の教育が悪いから、烈の成績がよくならないんだ!」
声「ごめんなさい…」
誰かが声の主に叱られているようだ。
最初、それが烈くんだと思ったけど、違う気がした。
教育?
わずかに閉まりきっていなかった隙間から垣間見えるに、烈くん以外に、雪さんがいた。
なんか、ややこしい気がした。
雪「何も、そこまでいうことないじゃない…!」
雪さんは、泣いていた。
あの優しそうな人の悲しい顔は見たくなかった。
烈「…」
烈くんは黙ってた。恨めしそうに、声の主を睨む顔だ。
烈「やめろよ!私の成績が悪いことなら、私を直接叱ればいいだろ!」
声の主の手元には、赤ペンで40と書かれた用紙が見えた。
声「お前は関係ない!黙ってろ!」
声「怒ってるのが点数のせいなら、私はむちゃくちゃ関係あるじゃんか!」
雪「いいのよ烈、私一人が怒られればいいんだから…」
烈「お母さん…!」
声「そうだよ。黙ってハイハイ言うこと聞いてればいいんだよ!」
烈「お前…!」
声「親に向かってなんだその口の聞き方は!雪!なんでしつけてないんだ!」
雪「だって、それはあなたがそういうこというから…」
声「お前まだ刃向かうのか!ダメな女だなお前は全く!」
パン!
どたっ
雪さんが平手打ちされて、倒れたのだ。
それが、トリガーだったようだ。
烈くんも、泣いていた。
烈「お前なんか、親じゃない!」
ボカッ!
声の人の顔面を、グーで殴っていた。
感情任せのせいか、ずるっとした感じで当たっていた。
声「上等だよお前ぇ!お前なんかもううちの子供じゃねぇよ!出てけ!」
そう言って声の主の人は立ち上がった。
とんでもない場面に出くわしに行ってしまった。

でも、それはある意味のチャンスだったのかもしれない。
もしその場面を見ることがなかったら、当人たちはきっとその出来事を外部に漏らすことなく、隠すだろう。
何故なら、当人たちにとって、それは恥ずかしいものと思うからだ。
そうして、永久に隠蔽され、泣き寝入りをするのだろう。


割って入ろう。
意を決した。
授業中にうるさいみんなを、うるさーいと立ち上がって言う感じに近かった。
戸を開けた。
スパーン!
零「あっ、おい…」



未夢「そこまでです!」
雪「!!」
男「ぁあん?」
自分で入っておきながらだけど、いきなり他人が入ってきたのだ。ぁあん?ともなろうというもの。
男「なんだぁおめぇは!?」
こ、怖い。
烈「未夢さん…」
その前に。
未夢「烈くん、この方は…」
烈「…紅瀬武亘(たけのぶ)。一応、私の父だよ」
武亘「一応じゃねぇよ、本物だっ!」
イケイケ系の人ならただのボケツッコミだっただろう。
しかし真面目で、そして怖かった。
雪さんが、彼は狂乱症だと言っていた。
今更感だけど、場違いすぎる気が。
武亘「で、なんだお前!」
未夢「わたしは…烈くんのクラスメイトの、光月です!」
武亘「そのクラスメイトが何の用だ!?」
一々凄まれる。まるで、空腹のライオンでも前にしているかのようだ。
未夢「喧嘩は…やめて下さい!烈くんも嫌がってるじゃないですか!」
烈「未夢さん…」
武亘「関係ねぇやつは黙ってろ!」
怖い。
そしてぐうの音も出ない。正に、部外者だったからだ。
けど引き下がらなかった。
未夢「関係あります!」
武亘「何がだよ!?」
未夢「わたしの大切な……友達です!」
…一瞬、場が止まった。

==================================================================

未夢「わたしが以前に烈くんと勉強した時は、試験日直前で、テスト範囲も広過ぎた」
未夢「だから、一か八か範囲を絞って一夜漬けした」
未夢「諦めずにやったその決断は、褒めてあげるべきだと思います」
未夢「でも所詮は一夜漬け…眠気と連続のテストには叶わず」

未夢「烈くんはちゃんと謝りました」
未夢「これは恥を惜しまない本当の勇気だし、馬鹿だとは言えないと思います」
未夢「確かに烈くんは悪い点数も取ったけど…」
未夢「良い点があるのも事実として残ったので、わたしは烈くんがすごいと今でも思う!」
未夢「だから、烈くんが今度から真面目に勉強することを約束するなら、許してあげてほしいんです」
未夢「お願いします!」
烈「未夢さん…」
武亘「ハン!お前親じゃねえだろ!こいつの将来保証できるのか?!ああ!?」
怖い。彷徨…。
しかし、今は自分が踏ん張らなければ。
武亘「関係ねぇやつは引っ込んでろ!」
未夢「きゃっ!」

裏拳で首を叩かれそうになり、手で塞ぎながら後ろに仰け反ったら、勢いで倒れ、尻餅をついてしまった。
烈「未夢さん!お前…!」
武亘「痛ててて…!コラ、離しなさい!」
突き立てた、牙のような八重歯がおじさんの腕に食い込み、血を流していた。
かなり、本気だった。
ライオンが鹿を噛み殺すような…。

この場合は、窮鼠、猫を噛む、か…。
烈「お母さん!未夢さん!逃げよう!」
未夢「えっ」
雪「烈…!」
武亘「どこへ行くんだ!待ちなさい!」

左手を引っ張られ、烈くんはもう片方の手で雪さんを連れ出した。


零「…!」
びっくりしたような顔の零くんが、すぐに過ぎ去った。
左手を掴むのは、冷たい機械の手。
未夢「どっ、どこへ行くのっ」
烈「…」
沈黙が返ってきた。
その背中を、黙って見つめるしかなかった。

…



家を出たしばらくのところで止まった。
何気に悠長に靴だけは履いていた。
けど上着とかは置いてきたままだ。
取りに戻らないといけない。
明日でもいいけど…寒かった。

烈「あ、あっはは…」
熱が冷めたのか、やがて烈くんは足を止めた。
烈「今更、これでどこに逃げるっていうんだろうね」
烈「あそこに戻るしか、ないのに…」
烈「鳥かごからは…逃げられないんだ…」
烈「今までずっと、ああだったんだ…」
烈「家に帰ると、必ず何かで怒鳴られるんだ」
それは辛い。帰る場所が、帰りたくなくなること。
家とは、帰るはずの場所なのに。
雪「…烈、やっばり、お父さんに謝ろう。そうすれば、許してくれるよ」
烈「うそだっ。謝っても、またその場しのぎで誤魔化すだけだっ」
烈「私はもう、お母さんの泣くところを、見たくない…よ」
雪「烈…!」
今まで見たのはDVだった。
ドメスティックバイオレンス。
いや、それともただのしつけだったんだろうか?
その境はあやふやだ。見るものの主観で、何とでも言えてしまうだろう。
少なくとも、目の前の母子は、幸せそうではなかった。
未夢「どうすれば…でも家に帰るしかないよ」
烈「未夢さんまでそんなこというの」
未夢「でも他に方法が…。さっき話してたみたいにさ。とりあえず謝って、様子見たらいいよ」
烈「……」
納得いかなさそうだったが、本人もわかっていたのだろう。他にどうすることもないことを。
わたしも、心にもないことを進言したと思う。
他にどうしようもなかったのだ。
烈「ぐれる勇気もないしね…」
未夢「そんなことないよ。烈くんは勇気あるよ」
嫌な家に戻るのだから。


烈「もうね、感謝できないんだ…」
烈くんは再び話始めた。

---------------------------------------------------------------------------------------





============================================================================================

烈「崖っぷちだったけど、もう落ちた」
烈「もう落ちるとこまで落ちた。這い上がるしかない」
烈「ってこんな崖上れるわけないじゃんよって」

烈「でも失えるものがあるということは、『まだ』幸せな内だと思ってる」
烈「帰り道柄、どうしても駅の道を通るため、嫌でもホームレスが目に入ってしまうんだけど」
烈「彼らは失いすぎて、失うことがなくて」
烈「もう立ち上がることもできないんだろーね…」

烈「実は元旦の朝にすっげーくだらない理由で両親と大喧嘩してね…」
烈「話し合ったんだけど理解し合えないのが悲しくて」
烈「泣きながら出てって独りぼっちやってるというのが今年の始まりだったんだよ」

烈「まぁ毎年何かで騒ぎしてるんだけど、3日に毎年親戚に会いに行ってたりしてて」
烈「法事とかもするはずだったのを避けてまで逃げてきたから…」
烈「紅瀬家とは縁を切りたいよ」

烈「なんかもう限界で、殺しそうだった」
烈「もう二度と親に感謝することはできそうにないよ」
烈「家って、ものより気持ち的に安心感を重視するものだと思ってた」
烈「けど親側はそうではなかったみたいで、私の心は理解されなかったよ」
烈「とまぁ気が合わなさ過ぎて、毎日の積み重ねというか、普段の交わりの積み重ねはこわいね」

烈「16年間相当な金がつぎ込まれて育てられていることが分かっているのにもかかわらず」
烈「普段の言動が嫌で感謝の心を失ってしまったのだから…」
烈「逆にいえば16年以上延々と耳元で気に障ることをささやかれ続けてきたってことでもあるけどね」

烈「真に親しい人には迷惑掛けたくなくて打ち明けなかった」
烈「というと打ち明けたら親しくないみたいに聞こえてしまうけど、誤解しないでほしい」

烈「落ち着いてきた今、未夢さんには事情を打ち明けておこうと思う」
烈「元旦の例とかだとね…」

烈「私用のコップの中の牛乳を、母が温めて、というか火傷するほど熱くしてたんだ」
烈「私はすぐ飲みたくて牛乳パックの冷たい牛乳を少し混ぜた」
烈「そしたら母に『せっかく温めたのに』とか言われて。てか飲めねーだろ!って感じだけど」
烈「向こうの言い分としては、少し時間がたてば覚めるのにとか言ってなぜか泣き出す始末」
烈「こっちが泣きたかったわ」

烈「でオヤジ登場」
烈「何もしゃべる間与えられてもないのに親に向かってその態度はとか言われて」
烈「後で落ち着かせて会話したんだけど…」
烈「そんなの関係ねぇ!とふざけられる始末」
烈「理不尽に浴びせられる罵倒の数々、この最中はいろんな思考が飛び交って涙した」

烈「その後は荷物整理して家を飛び出しました」
烈「友人の年賀状も見れないまま…」
烈「これ聞くとせっかくの親切に駄々こねてるだけのように思われるかもしれない」
烈「衣食足りて礼節を知るという言葉はある」

烈「だが願ってもない、むしろ逆効果な親切を強制的に押し付けられて感謝しろとは恩着せがましさも甚だしい」
烈「素直に感謝できないどころか、感謝さえしたくないというのが素直なところだ」
烈「こんなことふだんから我慢して生きている奴らは頭と心がどうにかしている!と思う」
烈「要するにこの人は自分たちが絶対的な存在だからお前らがたとえ心から嫌な気持ちになったとしても従え」
烈「とやりたい放題やりたいらしい」

烈「こんな思いあがってるやつにあたって自分の人生履歴にムショ入りを刻むのは馬鹿らしいので逃げた」
烈「着信拒否もしてるし、年とか癌とか病気とかで死にそうになっても勝手に死ねとまで思ってしまっている」
烈「もう死に目にも立ち会うつもりもない。墓も遺産もいらない」
烈「こんな心にされた親を憎んでも憎め切れない…悲しすぎる」

烈「私は恩ってのは、金や一回きりの度でかい貸し借りではなく」
烈「心を開いた普段の言動の積み重ねや気の合いがあって感じるものだと思う」
烈「言ってみてあまりのくだらなさに悶絶するね」
烈「事件が起きたころには何が原因でここまで来ちゃったのか闇の中だろうなと思う」
烈「親友を殺されて復讐だとか言うなら聊かわからないでもない」

烈「でも牛乳の温度で両親殺害事件に発展したら…」
烈「自分のことでも他人事みたいに鼻で笑うよ」
烈「正に最近起こってる巷のニュースの内容を模倣してんじゃねーって自分に突っ込み入れてるわ」
烈「PCは壊れてるし何もできず腹いせに勉強してる、今はそんな毎日過ごしてます」

烈「あと嫌な記憶が増えすぎて無意識に思い出される記憶に思わず奇声…」
烈「今の心境はムショ入り数か月前ってところかという感じです」

烈「実はね、その日の気持を忘れないために日記とか書いてるんだけど…」
烈「数日後に見るとくだらなすぎて、よくこんだけ書けたなとも思う」
烈「一方、今になっても気持ちに陰りなく嘘でもない真実に気付いた」
烈「心疲弊してるという摩耗してるというか…麻痺してるわ」


烈「色々あったけど…」

烈「本当は、親に感謝したいのに、もうできないんだ…」
烈「感謝するべきことに、感謝できない」
烈「感謝の心を失ってしまった」
烈「それが、どんなに苦しいことか、未夢さん、わかるかな?」



彼にはその境地に辿り着くまでの絶望と、そこから生まれた狂気のカタチがあった。




そうならないために、忘れてはならない。感謝の心を。
わたしには、彼のような経験はなかった。
ここ3年間は、幸せなままだったのだ。
ずっと見る楽しい夢は、目覚めずに…変わらない永遠。
でも、それこそどんなに寂しいことだったのだろうか。

哀しむ事さえ知らずに、楽しさに閉じ込められる永遠こそ、それこそ可愛そうなのかもしれない。
遊ぶ事を覚えてしまった若者(わたし)は、どんな大人になっていくのだろうか…
情けなさと悲しさを覚えずには居られない。

かと言って必ずしも悲しみを知る必要があったというわけじゃないけど。
でも、今、それを知る必要があったと思うのだ。

人の不幸を知り、自分が幸せであったことを初めて認知し、その事実に感謝すること。
それが大事だと思った。


烈「私の良心はあの日既に私の中で昇天した」
烈「否定の先に、やっと見つけた」
烈「自分の居場所」
烈「もう離れない」
烈「これが、私の居場所なのだから」


感謝しないことが、終点であったかのように、彼は言った。

今まで、細かいところまで気遣いできてあげられれば良かった。
でも今これ以上突っ込みすぎたら、拒否されるだろう。

もう、どうすることもできないのかな…。

----------------------------------------------------------------------------------------------

武亘「ん?まだいたのか」

廊下を通りすがったおじさんが声をかけてきた。
まだいたのか、は、きっとわたしに言ったのだろう。
もう夜も更けた。明日は学校だ。
早く帰らなければいけない。
それでも、まだ帰ることはできなかった。

武亘「早く帰りなさい」

語気はちょっと荒かった。
見ようによっては、脅しのようだ。

烈「もういいじゃん!帰るからさ!」

武亘「またお前は親に向かってそんな口調を…」

烈「はいはいわかりましたよ!そんな子供ですいませんでしたね!」
烈「生まれてきてごめんなさい!」

烈くんは泣きながら言っていた。

武亘「馬鹿野郎があああああああああ!」
武亘「生まれてきてごめんなさいだとっ…!」
武亘「実の親子でありながら、それも目の前で…!」
武亘「お前は…!」
武亘「家族をなんだと思っているんだ…!!!!」
武亘「俺とあいつが、共に生きようって…!」
武亘「決めて…」
武亘「愛し合って…」
武亘「この上も無く愛情を注いで育ててきたのに…」
武亘「…」

それから言葉は出てこなかった。

武亘「好きにしろ…」

そういった後、彼はどこへともなく消えていった。

未夢「あ、ま、待ってくださいっ」

思わず、おじさんの後を追いかけた。


======================================================================

【烈サイド】
未夢さんが傍を去ったあと、一人になった。
物思いに耽るのではなく、物思いに集中する。
眠らず、起きながらにして夢を見る。
考えが、自動的に展開されていく。


ここは私が創造したせかい。
誰にも文句は言わせない。
私以外が私のプライベートに深く突っ込む事は神が許しても私が許さん。
ここの神は紛れもなく私。
唯一思い通りに出来るせかい。
ゆめのぐげんか。ゆめのせかい。
ここでは私が神。


あなたが星に何かを願うとしたら何を願いますか?
世の平和?恋人とずっと一緒になること?
私は、泣かぬ男になりたい。
ずっと、泣いていたのだ。


考えてみれば、父はどんな時も、泣いたのを見た事がない。
普通、子供の前で泣く父なんてあんまりいないかもしれない。
子供から見たら、血も涙もなさそうに見えるけど。
男は泣いちゃいけないんだな、とかが暗に伝わってくる気がする。

私は無理だな。
どちらかと言うと、すぐ感動してぼろぼろ泣き虫になってしまう。
寂しいときに友達との楽しかったときの事を思い出す。
自分は本当に駄目な人間だと思っているから、そんな私と仲良くしてくれたことに感謝する。
歌歌いながら突然涙ぼろぼろ出る時がある。
こりゃ色んな意味で直すのは大変そうだ。

愛しい友よ。
チカラなくしても、向かうだろう。
君の元へ。


---------------------------------------------------------------------------------------------------


未夢「どうして、そんなに怖い口調で言うんですかっ」

武亘「…あの子は弱い。心配なのだ」

二人きりになった途端、まるで口調が違った。
家族向けと他人向けで、分けられているのかと思うくらい。
おじさんは振り向かずに言った。

未夢「一体何を心配しているというのですか。烈くんは犯罪でも起こすんですかっ」

未夢「雪さんもいつか言ってました。おじさんはいつも一言二言余計だからって」

なんらかの雑談で漏れ聞こえていたものだった。

未夢「心配と言っても限度がありますっ。早く子離れするべきですっ」

武亘「…お前のような青二才に、私の気持ちはわかるまい」

未夢「あなたは自分の考えに固執しすぎて、外界との考え方に共感できない節がある」

未夢「それがわたしに"異質"のイメージを与えるの」

未夢「そりゃ、人間はある程度年を取ったら性格が固まりますけど…」

武亘「仕方あるまい。こういう性格なのだ」

昔、彷徨もそういう事言ってた。

未夢「こう言う人間なのだ、って言うのは悪い意味であったとしても気にすることじゃないです」

未夢「もし少しでも変えたい心があれば、自分が最高な人間だと思わないで下さい」

未夢「常に自分は最悪な野郎だ、って思えるのならば変えることができるってことですよね」

未夢「今更変えたって日常に差し支えない、って思えちゃったのなら」

未夢「それは少し悲しい事なのかな…って思います」

未夢「こう言うのを考え始めると、総理大臣とかは一般人とはとてつもない違いがあるんだと思えますけど」

武亘「そうだ。父親とは、家の大黒柱。そうそう考えを変えてもいられない」

武亘「親は子を導かねばならん」

武亘「正しい方向へと、導かねばならん」

武亘「そのためには…例え子にとって苦い思いを与えたとしても」

武亘「正しいことを言わねばならぬときもあるのだ」

武亘「辛かろう」

武亘「悲しかろう」

武亘「だが、その痛みは、烈以上に教える人が味わうのだ」

武亘「私がどんな気持ちで子を貶めなければならないのか…」

武亘「考えたことがあるか」

武亘「お前が信じられないような光景を思い浮かべたことがあるか」

武亘「そしてそれを受け入れられるか」

言ってることはわかる。けど、納得できなかった。

お互い嫌なら、止めればいいじゃん。

真っ先矢先に思ったことが、それだった。

まだ、わたしが幼いから?

そういうことじゃないと、信じたかった。

わたしだって、経験してないわけじゃない。

おじさんに比べればなまじだったかもしれないけど。

子を叱るより、子の悲しみを見る方が何倍も悲しいのだ。

武亘「君は…烈の友達、だったか」

未夢「そうです!」

わたしは、はっきりと言った。

武亘「友達と言っても、本当に苦しい時に助け合う存在ではない」

武亘「所詮、遊び友達でしかないのだ」

武亘「それでも…もし君が、烈のことを案じてくれるなら、何か困った時、力になってやってくれ」

武亘「頼んだぞ」

おじさんは一度も振り返らないまま、行ってしまった。
今まさに、彼が困っている時。
そして、わたしが力になっても、おじさんが変わらなければ根本的解決にならない。
いや、変えさせるのがおこがましいんだろうか?
どうしようもないのかな…。

一人残されたまま、成す術がなかった。
外の雨は強くなっていた。