かれんだー0表示(即更新なし) 1秒待ち クロスフェード更新 カレンダー26日目表示 クロスフェード通常 CG消去 1秒ウェイト ====================================== 再度の烈邸 ====================================== 夢を見ている…。 鳥と蟻。 余は夢幻(もしくは無限)の空に囚われし鳥だ。 地に足着かず、夢を見る鳥は、地べたを這い蹲っている蟻の気持ちなどわかりはしない。 だが、地に足着かずしてどうして夢を夢と判断できようか。 現実から目をそむけて、空を飛ぶことばかりしていてもそれはただの遊びで虚しく終わってしまうのではないか。 無限という名の自由と同時に存在する『無』という地獄。 組織に囚われし安心感。 どちらが幸せか余にはわからぬ。 それならば地面に足着き、現世を見つめればよい。 そしてその土台から、再び飛び立てばよい。 そして確かめよう。 どちらが幸せなのかを。 余は今広大な海を見下ろしている。 やがて陸が見えてきた。周りに小さな島がいくつかある。 適当に島を選び適頃な場所を見つけて余はかの地に降り立った。 足元を見ると、蟻がいた。 蟻はたくさんいる。 蛇のように曲がりながら列を2隊作り、左の列は巣へ何かを運び、右の列は巣から外へ出ている。 余はその中の一匹に話しかけた。 烏『おい、お前たちは幸せか』 蟻の列の中の一匹が列を食み出、わざわざ足を止めて問答に答えた。 蟻『何だよこの忙しいのに、暇なやつだな』 烏『何をしている』 蟻『食料と石を運んでんだよ、巣作りと子孫のためにな』 烏『そうか』 蟻『さっきの質問に答えてなかったな。ぜんぜん幸せじゃぁねぇな』 烏『なら何故こんなことをしている?』 蟻『俺たちの幸せを作るためかな』 烏『作れるのか?』 蟻『そんなことはわかんねぇ。だけどこれが俺たちの生き方なんだ』 烏『まったく別のことをしてみたいとは思わないか?』 蟻『そんなこと言われてもねぇ…この体じゃたかがしれてるしねぇ』 そう言ってその蟻は6つの足を忙しく動かせて見せた。 蟻「自分の体重の20倍の重さの石をもてるって言ってもよ』 蟻「あんたから見たらその重さもたかが知れてるだろ?』 余はこの島を、飛ばずに歩いて回ることにした。 …現世のことは良くわかった。 中々面白かった…。 だが、やつらと余において共通しないものがある。 この大きな翼。 この島で空を飛ぶことは、余にしかできぬ。 飛べながら飛ばぬ鳥もまた面白い。 だが、他のものにできぬことをするのが快楽だ。 やはり、余は飛ぶのが楽しい。 余は余にしかできないことをしたい。 だが、たまには地に下りるのもいいだろう。 生まれたときには地に接し、幼きころは地を愛していたのだから。 だから、またあの島に寄っても良いと思う。 そしてまた会話しよう。 あの者たちと。 その日まで… 未夢「…」 不思議な夢を見た。 自由な者は、自由なあまり、それ自体を自由の牢獄と感じるようになる。 そういう、そもそも意味が矛盾したものを感じるようになったという流れだった。 自由で孤独な鳥は考える余裕ができ、地面を這い蹲っている蟻の気持ちを考えるようになる。 人の場合、現実をしっかりして余裕ができてこそ、やりたいことを思い浮かべられる。 余裕もないのに夢ばかり見て地に足つかないのは滑稽だというイメージだろうか? 自由なのはいいけど、一人ぼっちであることに対して描かれてる。 自由はないがみんながいるという代表に蟻が描かれている。 どっちが幸せなのだろう? でも、自分にしかできないことがあるならそれをすべき。 でもみんなと同じ事をするのもまた幸せというのを思い浮かべた。 彷徨『はぁ?紅瀬の家に行く?』 未夢『うん。クラスの子とはね、仲直りできたからいいけど、お父さんとはまだでしょ』 彷徨『お前はどこまでお人よしなんだ…』 未夢『し、仕方ないじゃない、そーゆー性格なんだから』 いつしかの彷徨の言葉をそのままお返しした。 彷徨『まぁお前の好きにしていいけど…紅瀬に迷惑はかけるなよ』 そんなこんなで、再び烈くんの家に行くことにした。 ずっと気になってた。彼の家の事情を知ってから、色んな合間にしてた、寂しそうな笑顔の彼を。 それを知りながら、何もできない自分が歯がゆかったのだ。 どう動かばいいかわからなかったけど、何か動いていたかった。 その結果がこれである。 果たして正しいかはわからない。 外は雨だ。 一番寒くなる時期はもう過ぎただろう。 もう暖かくなっていく一方でも、まだ2月の雨はとても冷たかった。 ピンポーン かの家のインターホンを押した。 誰が出るのか緊張した。 雪「はい」 優しそうな、ゆっくりとした明るい声。多分お母さんだろう。 未夢「あ、あの、光月未夢です」 雪「はい、少々お待ち下さい」 用件を言う間もなく了承されてしまった。 門が自然とがちゃりと開いた。 迎えは来ないみたいだけど、勝手に入っちゃっていいのかな? 雪「雨の中、よく来ましたね」 玄関では、烈くんのお母さん・雪さんが出迎えてくれた。 雪「ちょっと待ってて下さいね。今呼んできますので…あら」 雪さんが多分烈くんを呼びに行こうとしたところで、烈くんが玄関に通りかかった。 烈「あれ?未夢さん?なんでここに?」 雪「ちょうど良かった、烈、お客さんよ」 烈「今日は特に連絡受けてないけど…」 未夢「ごめんね、急に。忙しかった?」 烈「う、う〜ん…」 雪「とにかく、お客様を中に入れてあげなさい」 烈「うーん」 彼はこもったような声を出して、中に入っていった。 ついていけばいいのかな? 前に入ったことのある、客間らしき部屋に通された。 彷徨の家と似た感じだ。 烈「…困るよ、未夢さん」 未夢「え?」 烈「ほら、昨日、クラスの男子に、私があんまり未夢さんに近づくなって…」 未夢「え?」 …ああ、確かにそんなことも…。 未夢「ま、まぁけど今日は、わたしの方から尋ねたわけだし」 烈「他人様に迷惑かかっちゃうよ」 未夢「当事者ここにいないから平気だって」 烈「う、うーん」 困ったような笑顔だった。 烈「それで?今日はこんな雨の日に、何のよう?雨宿り?」 未夢「クラスの子とは仲直りしたけど、親御さんとは仲直りしてないでしょ?」 烈「親御さんって、私の?」 未夢「うん」 烈「お母さん?」 未夢「そっちじゃなくって」 烈「まさか、私の事情を自分の課題のように解決しようとしにくるとは思ってなかったよ」 未夢「ははは…」 烈「でもご心配なく。私は別に、父のことは認めているので…」 未夢「ウソ。だって…」 烈「…ぅぅぅぅ」 耳を塞ぎながら悶えていた。 烈「…忘れたはずの謎の記憶が、私を苛むよ」 烈「私の言い方が悪かったよ」 烈「ここまで言わせる?未夢さんは一体私の何なの?」 烈「私は自分の身を守るために再度言う」 烈「二度と私に関わらないで」 烈「人生の邪魔!」 烈「それができないなら去って!」 未夢「あっ…」 脱兎のごとく彼は飛び出していってしまった。 そのときに見えた、家のときは脱いでいる靴下と手袋。 機械の手と足。 『紅瀬に迷惑はかけるなよ』 彷徨の言葉が思い出された。 やはり、他人が他人を救おうとするなんて、おこがましいことなんだろうか? 雪「もし…烈が飛び出して行ったようですが、何かあったのですか?」 通りかかったらしい雪さんが、覗きにきた。 飛び出していった彼の体の一部が目に焼きついて印象的だった。 未夢「どうして紅瀬くんの体はあんななんですか…?」 知っているはずの内容を、雪さんに聞いていた。 雪さんは知っているのだろうか? 当然知っているだろう。 でも、彼本人以外からも聞いてみたかった。 未夢「それに、どうしてあんなに暗い…」 雪「…」 雪さんは、はぁーっと大きく息を吸い込んで、部屋に入って座り、そしてゆっくり語りだした…。 雪「烈は生まれて大体すぐお父さんに虐待を受けてました」 雪「お父さんは狂乱症と言う、普段の精神が常人とは違って乱れやすいものであったみたいで」 雪「最初の発症は烈が1歳の時」 雪「私の懸命な説得や病院との連携により治まったかと思えば次は3歳、4歳の時…」 雪「烈に物心がつき始めてからはしばらく何もなかったけど」 雪「烈が10歳を越えた辺りからお父さんはまた発症して…」 雪「おそらく、反抗期に達した烈が何でも自分ひとりで色々やりたがるのが心配で」 雪「それが怒りとなったのでしょう…」 雪「烈を無理やり抑制しようとしてました」 雪「だけど烈は反発した」 雪「それ以来お父さんは、家の大黒柱と言う理由だけでその立場を利用して烈をよくいじめていたみたい」 雪「例えば、逆らうなら家に入れないなど…」 雪「お父さんはどんな些細なことでも烈を咎め続けたから」 雪「烈はお父さんのことなら小さなことでよくいらだつようになってた」 雪「中学時代学校でもいじめられていたのもあって…」 雪「一度大喧嘩になったこともあるぐらいだから」 雪「零にはよくわからないだろうけど、烈には特別な怒りがあるのでしょう」 雪「塵も積もれば山となると言ったような…」 雪「小学校卒業した後、中学の制服を買いに行くと言うことで」 雪「やむを得なさそうに烈がお父さんと車で同行することになった」 雪「私はパートでしたから、一緒できず心配ながらもお父さんに任せてました」 雪「そして事件は起きた…」 雪「父は泥酔していたのにも関わらず自分の都合で突然車で行くと言い出して」 雪「そして車は激しくトラックに激突したと…」 雪「交差点で、赤なのに突っ切って、対向車側の右折待ちしていた停止中のトラックにぶつかったらしいのです」 雪「その時の事故でお相手の人は亡くなられてしまって…お父さんは軽傷で済んだのに」 雪「普通、逆でしょう?よほどのスピードでぶつかったのか何なのか…」 雪「烈は、助手席に乗っていて、青になっている線の車が、左から急に止まれず…」 雪「烈は、その時に体の色々を失った…」 雪「左目、利き手の右手、左足…」 雪「重症の烈はその時こう言ったの」 雪「相手の人の一部を俺のものにしろ!」 雪「全く意味がわからなかったわ。錯乱して、代わりになるものを探していたのでしょうね」 雪「だけど相手の体は激しく損傷していて使い物にならなかった…」 雪「病院で手当を受けた後、烈はこう言ったの」 雪「彼の血を義眼にしろ!」 雪「こんな体にした事件に対する恨みを忘れぬために…!」 雪「病院側や母さんは再三、烈に気を確かめるよう説得していたけど」 雪「烈は頑として聞かなかった。あの時はよほど精神がかく乱していただろうからね…」 雪「結局、本人の強すぎる要望に、私は技術者を呼んで彼の血を宝石化し、それを形見として烈は義眼にしたよ」 雪「変色して赤い溶岩みたいな色になってるけどね…」 雪「そして、その目は未来を透視することが出来るとか言ってるわ」 雪「あの時前もってこんな事になることがわかっていたら」 雪「と言う気持ちが事故後もかなり念じられていて…」 雪「それで、お医者様のお話で、失った目と脳の関係に障害ができたとか」 雪「それが、危険な未来だけを透視すると言う…」 雪「幸せもあれば危険だって未来にはたくさんある」 雪「そんなものと隣合わせだと精神が狂う、と言って技術者は特別な眼帯をくれたよ…」 雪「まるで海賊みたいなね」 雪「右手首から下の義手も、左膝から下の義足は、入院中にどこからか現れた子が作ったとかなんとか」 雪「空を飛べると言う、不思議なからくりを仕込んで」 雪「それにしても、右手首から下がしっかりつぶれたと言うのに」 雪「よくあの子は死ななかったよ…普通なら出血多量で死んでる」 雪「零が輸血してくれたのが本当に助かったけど…」 雪「恨みがよほど強くて、死んでも死に切れないと思ったのかもね…」 雪「でも、確かにお父さんに虐待されてはいたけど」 雪「それ以外の時は怒りの裏に感謝もあったのよ」 雪「一緒に買い物言った時、悪徳業者っぽい人が疑わしいことを言ってね…」 雪「烈が危険な目にあった時父が守ったりして…」 雪「あの人は守ると言う意味では嘘はなかったし、信じれる存在だった」 雪「だから、そう言う意味でも忘れたくなかったから」 未夢「…」 彼本人から聞いた話と一致する部分もあるが、だいぶ違う部分もあった。 わかることは、彼が相当以上に錯乱していただろうということだ。 また、彼がどこかお父さんのことを慕ってもいるところがあるということだった。 それは、仲良くしたくてもできなくて辛い思いをしているのではないだろうか? わたしも、烈くんとは仲良くしていたいのに、さっき嫌な思いをさせてしまった。 わたしのしたいことが、彼の望んでいる世界なのだろうか? 彼が天邪鬼だったとしても、それが最善の策なのかはわからない。 けど、何にしても、心にはモヤがかかったままだった。 雪さんの話を聞いても、簡単には解決しなさそうだ。 未夢「…お話、ありがとうございました。今日はもう帰ろうと思います」 雪「あら、もう?」 未夢「それと…烈くんには、わたしがごめんなさいと謝っていたと、伝えて下さい」 それだけ言い残して、その場を発った。 あとは、どうやっていつの間にか帰ったのか、覚えていなかった。