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============================================ 諸々の事情 ============================================

今日はきっと温かいのだ。
なぜなら、雨だから。
一番寒いはずのこの季節に雨。
だが体感の寒さは、体に優しく舞い降りる雪より、雨の方が槍のように鋭く冷たさが突き刺さる。



    フラグR NOT 5 ならこのシナリオファイルのチェック001に移動
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(18日目に『持つのを手伝う』を選んでいた場合)


未夢「烈くん、大丈夫かな・・・」

別に、寒さに、ということではない。や、それもあるけど。
昨日の誰かの怒鳴り声が、忘れられなかったのだ。
あれはびっくりした。
寝たら忘れるかと思ったら、そうでもなかった。
その直後ぐらいはあまりにびっくりしすぎたというか、それで忘れていたぐらいだ。
時間が経ったら、沸々とその記憶が蘇ってきた。
今、何かに忙しかったらそれで忘れられたかもしれない。

けど、それ以上に、他人の家庭の暗い部分を、垣間見てしまった気がする。
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    チェック001 /////////////////////////////////////


寒さは時に人を落ち着かせる。
そして、学生だから、時間があるから、ふと考え事をしてしまうのだ。
学生でも、部活や受験勉強、習い事などに明け暮れて、時間がない人もいるだろう。
彷徨もそうだ。
わたしは・・・どこかのんびりしていた。
何をしたいのか・・・わからなかったのだ。
彷徨は・・・バスケットボールの選手にでもなるのかな?
一通り考えが一巡りしたところで、ぼーっと外の雨を見ていた。
しばらくしたところで、ケータイのバイブが鳴ったことに気づいて、ケータイを手に取った。
メールが一件。
【差出人:零】

未夢「あれ、差出人、零くんだ。珍しいな。何かな・・・」
思わず声が出た。メールを開いてみる。

『変なこと聞くが、烈がそっちにいっていないか?』

え?烈くん?

こんな早くに?何の用で??

よくわからなかった。

時刻は10時くらい。
休みの日だと何かのスイッチがオフなのか、いつも起きる時間を大きく超えていた。
もしかしたら、わたしがまだ寝ている間にうちにきて、ママが対応してたのかもしれない。
下に居るママに聞きに行くことにした。

リビングへのドアをあける・・・

ガチャ。

未来「あら、起きてきたのね。おはよう、未夢」

未夢「おはよう、ママ。ねぇ、烈くん来なかった?」

未来「え?紅瀬くん?」

きょとんとした顔でママが言う。

未来「そうねぇ、別に来なかったわよ。ママが寝ている間に来てたのならわからないけど・・・」

ママもわたしと同じことを思って言ってた。

未夢「ママ起きたの何時?」

未来「朝7時くらいよ」

はっや。

未夢「そっか、ありがとう」

未来「? どうかしたの?」

未夢「ううん、なんでもない」

未来「変な未夢。朝ご飯食べる?」

未夢「うん、パジャマ着替えてくるよ」

未来「暖かくしてらっしゃいね」

パタン。廊下に出て、リビングのドアを閉めた。


部屋に戻って零くんに返信した。


『ううん、こっちには来てないよ』

送信、っと。

ふう。こんな朝早くから、どうかしたのかな?


続けて、すぐ返信が来た。


差出人:零


『なんか、朝起きてしばらくしたら烈がいなくなってたらしい』


ううん・・・?
なんだか状況がよくわからない。
家出とか?いや・・・朝早くから散歩してるだけかもしれないし。


こう返信した。

『どこかに出かけてるだけとかじゃなくて?』

間髪入れず、返信が来た。

差出人:零

『いや・・・そんなこともあった気がするが、何かおかしい』


おかしいと言われましても。
烈くんの挙動を四六時中見てるわけじゃないので、わたしにはわからない。
零くんにはわかることがあるのかもしれない。
わたしに聞いてくる以前に烈くんにもメール送ってると思うけど、聞いてみる。

『烈くんには電話とかメールとかした?』


『したが出ないし返信もない。ケータイは持っていってるっぽい』

烈くんのことだから饒舌なのか、メールだから饒舌なのかわからなかったけど、結構なやりとりだ。

いつもの零くんとは勝手が違った気がした。

『わかった。こっちからも連絡してみるよ』


『ごめん。いつも悪いな。今度お詫びさせてくれ』

ぴっ。

ケータイを閉じた。

って、おっとと、これからケータイ使うのに。思わず一息ついてしまった。

しかし・・・いつも一緒にいる零くんに対して返事しないのに、わたしのなんかで返事来るんだろうか?


とりあえず電話してみて、応答なかったらメールを残そう。


えーと烈くん烈くん・・・


トゥル・・・


烈『え?』


えっ?

未夢「えっ?」


烈『え?』


え・・・なんていうか、ええっ??

かけといてなんだけど、出るんかい!

しかも早!


未夢「あ、ああ、えーと、烈くん?」

烈『はい、紅瀬ですけど・・・』




未夢「あ、あーごめんごめん、びっくりしちゃったよ」


烈『それはこっちもだよ、急に電話着たから』


まさか出るとは思ってなかったし。


烈『何か用事?』


嬉しそうに、明るい声で話しかけてくる。
とりあえず、元気そうではあった。


未夢「烈くん、今どこにいるの?零くんが心配してたよ」


烈『零?ああ・・・』


ちょっと声が遠くなった。ケータイを見てるんだろうか。



烈『気づいてなかったてへぺろ』


がくっ。


未夢「わたしのだと即行で気付いたのに」

烈『ちょうどケータイ触り始めたところだったんだよ』


なるほど。画面を触ったところで、わたしからの電話を偶然取ってしまったのだろうか。


未夢「えと、それで、聞いていいかわからないんだけどね」

烈『うんうん』


未夢「えと、何かあったのかなって」


いざ聞こうとしたら、何故かすっと出てこなかった。

色々聞きたかった気もする。

だけど、聞いてどうすると言うのだ?

何かができるわけでもなし・・・


烈『あー・・・』


未夢「ごめんっ、今の忘れてっ」

烈『あーいやいや、別にいいんだけどさ・・・』


烈くんは、話さないことを申し訳なさそうに言った。



烈『とりあえず、私は今家近くの公園にいるよ。事情は零に聞いといてくれないかな』



未夢「あ、うん、わかった・・・」


何やら今は語りたくないらしい。そっとしておこうと思う。

未夢「じゃぁ、零くんに伝えておくよ。外は寒いから、気を付けてね」


烈『うん、ありがとう』



未夢「それじゃ」


ぴっ。

しかし・・・なぜわたしが連絡係をしているんだろう?とふと思ってしまったのだった。


零くんに電話をかける。


零『はい』


零くんもすっと出た。今度は驚かなかった。


未夢「光月です。烈くんから応答あったよ」


零『ほんとか。で、烈は今どこに?』


未夢「家近くの公園って言ってた」


零『なに?そうか・・・ありがとう。面倒かけたな』


未夢「いえいえ、どういたしまして」

確かに面倒なことをしたとは思ったが、わたしも今特に予定なかったし。

流れで、つい聞いてしまった。

未夢「それでね、差支えなかったら教えて欲しいんだけど」

零『ああ』



未夢「烈くんが、零くんに聞けって」

零『ああ・・・』

    フラグR > 4 ならこのシナリオファイルのチェック002に移動
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(18日目に『持つのを手伝う』を選んでいた場合)


聞いていいのかわからなかったけど、結局聞いてしまった。
しばらく沈黙があった後、零くんは口を開いた。

零『母さんと・・・うん、お父さんが喧嘩してたんだよ』

『お父さん』という言葉を言う前、声を整えていた。
何か、そう呼ぶのが言いづらそうな感じだった。


そして、内容的にややこしそうだった。
言葉で表したら、ただそれだけだったのだろう。
一見、明らかに関係ない事件で、影響を受けてしまうような・・・そんな感じ。


零『まぁ結構いつものことっちゃいつものことだけど、喧嘩の内容が烈のことで』
零『母さんの方が言い負けて泣いてしまって』
零『で、その時たまたま烈もその内容聞いてた上に母さんが泣いたの見てしまってな』
零『烈は母さんのこと好きだから、好きなものが嫌いなものに対して傷つけられて耐えられなかったんじゃないか』
零『そういうのは、自分が直接傷つけられるより、堪えるっていうからな』
零『烈は・・・お父さんと仲悪いからな』

なんか色々と聞いてしまった気がするぞ。

未夢「・・・」

なんとも答えられなかった。これは根が深い。
烈くんが直接どうにかできる問題ではなさそうだ。
ただ、内容が烈くんのことなら、話題になる内容に関して、どうにかできたらそれでいいのかもしれないけど・・・。

    移動    このシナリオファイルのチェック003に移動する
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    チェック002 /////////////////////////////////////

零『・・・いや、なんでもない』

未夢「・・・そっか」

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    チェック003 /////////////////////////////////////


零『とりあえず、烈の居場所聞いてくれてありがとな。今度ジュースおごるよ』

子供のお礼みたいで、なんかおかしかった。
クールな零くんも、烈くんと同じような風に感じたのだ。

未夢『いえいえ。ありがと』

零『じゃぁ、烈を迎えにいってくるから。また学校で』


未夢『うん、またね』


そういって、電話は切れた。


未夢「しかし、零くんはまるで烈くんの保護者のようなお守役ですな・・・」

なんとも微笑ましいと言うか。

烈くんと零くんってどういう関係なんだろう?

以前より増して、気になった。


未来「未夢ー!朝ごはんどうするうー!?」

おっと、忘れていた。

未夢「今行くー!」



    フラグR < 5 ならda-after_daily_end.aresの最初の行に移動
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夕方。

何とは無しに、彷徨と電話していた。
どうでもいいメールから、いつの間にか電話になってた。


未夢「そういえば烈くんね、ご両親が仲良くないらしいの」

彷徨『・・・へぇ・・・それで?』

未夢「詳しいことまでは聞いてないけど、それで家を飛び出したって」

彷徨『ふうん・・・お前、そんなに他人プライバシーべらべらしちゃっていいの?』

未夢「彷徨じゃなきゃしないよ」

彷徨『しなくていいよ。俺はそんな話されても嬉しくない』

未夢「ちょっと!まじめに話してるのにそんな言い方はないでしょ」

彷徨『紅瀬は聞く耳持ってるのか?』

未夢「え?なに突然」

彷徨『悩みすぎると、うわーってなって人のいうこと聞かねーだろ』
彷徨『そんなところに、例え相談してあげるとか介入しても仕方ねーんじゃねーの?』
彷徨『それでも世話焼くなら、俺は別にかまわないけどな』

そうかもしれない。わたしは、どこかで感情的になっていた。
でも果たして、何が正解なんだろう?
確かに、わたしが介入したら、火に油を注ぐ結果になるのかもしれない。

    フラグR NOT 6 ならこのシナリオファイルのチェック004に移動する

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⇒彷徨の言うとおりかも知れない
 それでも助けなければ

    チェック004 /////////////////////////////////////

・・・そうだ。わたしはちょっと混乱気味に、焦っていた。
助けなきゃって。
でも、それはわたしが過大に誤解しているだけなのかもしれない。
友達だから助けるべき、それを、ごり押ししようとしているのかもしれない。
彼らの事情の、そんなに詳しい話も聞いていない。
烈くんと零くんなら、彼らのコンビならきっと大丈夫だ。
わたしが介入することで、余計に事情を混乱させてしまうのかもしれないし。

未夢「・・・うん、そうだね」
未夢「わたしの、悪い癖だよ。ちょっと、お節介すぎるのかもね」
未夢「しばらく、見守るよ」

彷徨「・・・・・・それがいい」

彷徨がちょっと間をもって言い淀んだ。
自分で言うのも何だけど、彷徨の進言が、わたしの良さを殺してしまったのかもしれないと。
そういう後悔に見えた。
けど、お互い、それ以上何も言わなかったし、言えなかった。
他人様の事情はわからないし、どうしたらいいのかも、何もわからないのだから。


da-after_daily_end.aresの最初の行に移動
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 彷徨の言うとおりかも知れない
⇒それでも助けなければ

    チェック005 /////////////////////////////////////

それでも烈くんを助けたいと思う。放っておけない。
こうなったら、飛んで火にいるなんとやら、だっ。
今、冬ですけど・・・。

彷徨『俺はさ、親父と母さんの痴話喧嘩すら見たことがない』
彷徨『まぁ多分母さんがいい加減な親父に苦笑いして妥協して終わりだろうな』
彷徨『親父も母さんに一目惚れだったらしいから、母さんが泣きでもしたら即行謝るだろうよ』
彷徨『自分で考えても想像でこんなしか浮かばないから、俺はどうすればいいのかわからない』
彷徨『だから、俺は手助けできない』

未夢「むっ。もういいよ!わたし一人でなんとかするから!」

彷徨『ちっ。勝手にしろっ』

そういって、電話は切れてしまった。いや、同時に切ったのだろうか。

でも、彷徨は不器用なりに自分を烈くんの立場で考えてくれていた。
わたしも烈くんの立場で考えたけど、烈くんの環境とは100%同じじゃない。
わたしの場合はパパとママが仲悪いというわけじゃない。

わたしが幼いころ、パパやママが仕事で忙しくてわたしにかまってくれなくて、わたしはプチ家出したことがある。
きっかけや悲しみ方は違うけど、結果的に悲しかったことは変わりない、と思う。
わたしは構って欲しかったのだ。
なら烈くんはどうなりたいのだろうか。
答えは簡単、嫌なことの逆になりたいのだ。
要はご両親が仲良くなる。ひいては烈くんがお父さんと仲良くなること。
簡単じゃないのは、それができないから問題化してるから。
でも、答えはわかってるんだから、あとはどうすればいいか。
それを考えないといけないと思った。

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夜、ごはんの時にパパとママにも相談してみた。

優「それは・・・根が深いね」

未来「私とパパはこんなに仲良しなんだけどね」

あんたらが仲良すぎて、わたしが幼くて暇なときは困ったんですが。
そのツッコミはおいといて。

未夢「どうすればいいのかな・・・」

未来「・・・未夢、それはやめておきなさい」

ママが言った。

未来「他人様の事情なのよ。よく分からない状態で、あまり深入りしたら迷惑だわ」

およそ、彷徨の味方のような意見だった。

ママと意見がぶつかることになるなんて、今までそう多くない。

わたしは違った。

未夢「パパは・・・パパは、どう思う?」

優「僕かい?う〜ん、むつかしい話だけど、僕はママを信頼しているよ」

よくわからなかった。

任せてるってこと??

他人の事情・・・それを言ったら、全てが放置なのではないか?

そう思ったのだ。
みんな、自分のことだけでも精一杯なのかもしれない。
でもニュースで騒がれている事は、他人が介入しなかったから、そうなったのだと思う。
近所づきあいが無くなったから、事件が増えているのかもと。

それが直接的な原因ではないにしろ、どこかずっと気になってた。
もし迷惑かも知れなくても、助け合うべきなのではないのか?
事件が起きてから介入しても、それこそ余計なお世話なのだ。

けど、はっとした。もう、事後なのだろうか?
いやでも・・・そんなことはないと、根拠なしに思った。

それで全ての人が関わらなかったら、もし彼が助けを求めていたとしても、誰も助けないのだ。
それは悲しいことなんじゃないか。


未来「未夢、悪いことは言わないわ。そっとしておきなさい。そうすればきっと・・・」


未夢「パパもママも間違ってるっ。友達が苦しんでるって言うのに、理屈だけで放っておいていいなんてっ」
優「未夢・・・」

未夢「もうパパとママには相談しないっ」

優「未夢!待ちなさいっ!」

気が付いたら、外に出ていた。

また雨が降っていた。
気温が氷点下ではないということ。
つまり、暖かい方なのだ。これまでも何度もそう思ってきた。
でも冷たい雫が体に触れれば、それは雪よりも冷たく感じる。
体感温度は雪の日のそれよりも低い。
そんな中でもわたしは、何に夢中なのか朧気のまま、居ても立っても居られなくなり、飛び出していた。

未夢「とはいったもののどうしよう」

思わず電車に乗って暖房の暖かさに目を覚ました感じ。
とりあえず烈くんの家に行こうと思ったものの、行ってどうする。
まさか直接そのまま茶の間に乗り込んで『あんたら仲良くしなさーい』はないと思うし。

未夢「あああ・・・」

わたしは思わず頭を抱えながら悶絶した。
結局どうすればいいのかわかんない。
毎度ながら学習能力のない浅はかな自分を呪った。

未夢「結局ここか・・・」

来た場所は紅瀬宅じゃなくて、西遠寺。
ピンポーン
・・・
ほどなくして廊下を歩く音と、はーいという彷徨の声がした。
ガララッ

彷徨「はい・・・って、未夢。どうしたんだ?こんな夜に」

未夢「彷徨、来て」

わたしはなんとなく急いていたが、彷徨は頭をぽりぽりとかきながら少し察しているようだった。

彷徨「・・・まさか紅瀬んち行こうなんて言い出だすんじゃねーだろーな」

未夢「さすが彷徨」

頭のいい彼氏を持ててわたしは幸せだ。

彷徨「はあ・・・お前のおばさんとおじさんは、このこと知ってんの?」

未夢「そういえば」

相談したところまではいいけど、思わず飛び出したから知らないはず。

彷徨「まさか・・・お前も家出かい」

未夢「うーんと・・・」

ほっぺを人差し指でかきながら考えたが、早い話がそんな感じ。

未夢「えへへ・・・」

えへへじゃねーよ、と心の響きが聞こえてきそうだ。

彷徨「とりあえずお前んち電話するぞ。心配してると思うから」

未夢「ごめん〜」

彷徨がうちに電話していた。

はい、はい・・・というやり取りが聞こえて、しばらくすると彷徨は納得の顔をしていた。

彷徨「とりあえず今日は終わったらうちに泊まってけ。親御さんも了承してくれた」

未夢「ありがと。ごめんね」

彷徨「お前は本当仕方ねーな・・・」

少し強めに降り出した雨の中、わたしたちは紅瀬宅に行くことにした。

彷徨「っていうか何で俺まで行くことになったのか自分でもわかんない」

未夢「つべこべ言わないの!どーせ暇でしょ」

彷徨「お前と違って部活で疲れているんだが・・・」

未夢「彷徨なら大丈夫よ」

彷徨「デートならいいんだがなぁ」

未夢「ふざけないのっ。大事なことなんだから」

彷徨「はいはい」

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・烈ルート途中

紅瀬宅に侵入するように、草むらの影に潜んでいた。

門の横にある草の塀から隙間を覗き込むと、烈くんが廊下を歩いてる姿が垣間見えた。

元気そうではある。

彷徨「めんどくさいやつだな。帰ろうぜ」

未夢「ダメ。ちゃんと色々解決してから」

彷徨「あ〜もう何がなんだか。もう、ここで待ってるから、終わったら呼んでくれ」

未夢「待ってるとか結局、彷徨も心配なんじゃない」

彷徨「ばかっ。俺はお前を心配してだな・・・」

未夢「じゃ、わたしとおんなじだね」

彷徨「どこが」

未夢「わたしは烈くんを心配したけど、彷徨はわたしを心配してくれてたんだ」

彷徨「・・・」

未夢「あ、もしかして彷徨、烈くんに焼き餅焼いた?」

彷徨「・・・ちっ!帰るぞ」

未夢「あ、ま、待ってよっ」

がしっとその手をつかんだ。

掴まなくても帰らなかったのだろうけど、なんとなくいつものことというか。

いつも手繋いでないですけど。

彷徨「わかったから、さっさと済ませてきてくれ。寒い」

未夢「わかったわかった」


ぴんぽーん。

結局正面衝突しかないんかいと、自分でも突っ込んだ。


声『はい』

インターホンから女の人の声が聞こえた。多分、烈くんのお母さんの、雪さんだ。

未夢「えっと・・・」

わたしはどういう用事で来たんだろうか?

理由を全く考えていなかったので、あたふたした。

未夢「えっと、えっと・・・」

いつもなら彷徨が何か言って助けてくれるけど、彼は片目を瞑りながらこっちの様子を見てるだけだった。
さっき見てた草の塀は門の左。彼方は門の右に位置するコンクリートの塀に、背中をもたれさせて腕を組んでいた。

未夢「れ、烈くん居ますかっ?」

雪『烈ですか?いますよ。とりあえず、上がってくださいな。門は空いていますので・・・』

未夢「あ、はい・・・」

名乗らずに焦って言ってしまった。

門を押すと、キィ・・・と軋む音を鳴らしながら、門が開いた。

未夢「彷徨・・・」

彷徨「いいよ、行って来い」

未夢「ごめんね。先に帰っちゃってもいいから・・・」

彷徨「馬鹿。薄情じゃあるまいし、ちゃんと残ってるよ」

はぁ、と、白くなる息を吐いて、彷徨が言った。

隣にいなくても、それだけで心強かった。


未夢「行ってくる」

彷徨「大げさな」


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・烈(後)

雪さんに目通しされた後、前の客室に通されて待たされた。

すっ。
障子が開いた。

烈「お待たせー」

未夢「…え?」

烈「うん?あ、わっ!」

ぱたんっ。
障子が閉じられた。
廊下をぱたぱたと走っていく音がした。

未夢「…」

異様なものを見た気がする。
閉じられた左の瞳。
機械の手足。
…烈くん…?
あり得ない。
事情のある子だとは思っていたけど…。
またしても、さらなる非日常を垣間見てしまった。
考えがまとまらない。
急に異なものを見たからだ。
その動揺を断ち切るかのように、また廊下を歩いてくる音が聞こえた。
すっ。
障子が開く。

烈「…ゴメン。びっくりしたよね」

いつもの眼帯をした烈くんが現れた。

未夢「う、うん。でもそれ…」

手足の方は隠されてはいなかった。

烈「あーうん。眼帯してるうちに、なんかもーどーでもよくなっちゃって」

機械の手足。
右手は、手首からロボットのような手が生えていた。
それも、人間の手を正確に模倣したような手が…。
海賊の鍵爪みたいなマジックハンドなんかじゃない。
皮肌のない、むきだしの機械の手だった。
それは…人間として生まれた時のものとは違うものだという認識を強く覚えた。
左足も、膝から同様に機械の足だ。

烈「うーんと、あーんと、どっから説明したものか…」

未夢「いやっ、もし話したくなかったら構わないよっ」

とてもデリケートなことに思えた。

烈「えーと、私としてはそんなことないけど…いやあるか」

あるのか。

烈「なんていうか、説明しにくいんだよね…」

未夢「無理にしなくても大丈夫だから…」

烈「うーん、聞きたい?」

聞きたくないと言ったら、それは嘘だ。
しかし、見るからに事情の塊である。
決心しておいてだが、わたしなんかが、それに触れてもいいのか。
突然、想像以上のことだったのだ。正に、驚愕という言葉がふさわしかった。
彼の心の深奥にある、傷かもしれないのだ。
好奇心的な野次で、聞いてしまって良いのか躊躇われた。

烈「私個人としては、秘密とか苦手だし、どーでもいいんだけど、ややこしいことがあるからね」
烈「でも…未夢さんになら話しても大丈夫かな。なんか免疫ある気がする」

未夢「なんで」

烈「ふふ。おいでっ」

すっ。
奥の襖が開いた。

タミ「ピー」

未夢「この前の…」

宇宙人と言われていた子。

烈「この子はね…宇宙人なんだと思う」

宇宙人―――。

その言葉を、”わたしたち”以外から聞くと、少し特別なものに聞こえた。

未夢「どうして…そう思ったの?」

烈「やっぱり。驚くでもなく、馬鹿にするでもない」

未夢「ねぇ、どうしてっ?」

声がやや力んでしまっていたかもしれない。

烈「でも、確たる証拠はないよ。多分、なんとなく」

でもわかる。この子は宇宙人だ。
人型でない、変身しているわけでもないと思う。多分、動物型の幼児だろう。
3年前以来、不思議なことの関わりはすっかりなくなってしまった。
わたしたち以外に、宇宙人との巡り合わせがあったなんて、未だに信じられない。
世界も宇宙も広いんだから、当たり前なんだろうけど。
同じ関わりを持っていたことに、世界の狭さを感じずにはいられなかった。

未夢「確かに、なんとなく変かもとは思っていたけれど、まさか宇宙人だなんて…」

烈「この、自由に動かせる手と足はね、タミが作ってくれたものなんだ」

タミ「ピー」

宇宙と聞けばなんでもありかと思っていたけれど、この子の見た目からは想像に乏しい内容だった。

烈「中学校の服を買いに行く時だったよ」
烈「父の車に乗せられて連れられてね」
烈「私は行きたくなかったんだけどね」
烈「でも、私が来ないとサイズがわからないって」
烈「今考えたら確かにそうだって思えるけど」
烈「当時はそんなことより、父に連れられることのほうがよっぽど嫌だったんだ」
烈「父の乱暴な運転」
烈「別に急ぐでもなく、普通の交差点を時速80キロで走って、バンバン車線変更で追い抜いてさ」
烈「車ゲームじゃないのにね」
烈「信号赤なのに、横が走ってる雰囲気ないからって突っ走ってさ」
烈「案の定、横から車が走ってきて…しかもトラックが2台!」
烈「怖かった」

信号無視して横からトラックが目の前に。
およそ非現実であるべき状況を想像して、怖くなった。
あり得てはならない、ことだ。
烈「何もできなかった。逃げられなかった」
烈「左足は挟まれて潰れて、右手もトラックの荷物が落ちてきて潰れて、左目は何かが刺さって」
烈くんは、左目の眼帯を取った。
その瞳は、割れた水晶のようだった。
おぞましい状況に、身を震わせた。

烈「ごめんね」
烈「手は、ちょうど手首のところからスッパリでさ」
烈「それからは何も覚えてなかった」
烈「気付いたら病院で寝てて、何故か隣に零も居て寝てた」
烈「あとから聞いたけど、私が出血多量で血が足りなかったから、分けてくれたんだって」
烈「10人に一人の確率なのに、同じ血液型でさ。良かった」
烈「でも私が血を流しすぎて、くれる人も危なくなるっていう話だったらしくてね」
烈「零は命の恩人だよ。私は奇跡的に命を取り留めたの」
烈「一方、父は奇跡的に打撲程度で済んでね。あれだけの事故があったのに」
烈「何もしてない私がこんな体になって、当事者は無事で」
烈「おかしくない?理不尽じゃない?」

気付けば烈くんは泣いていた。
何の選択肢もなかったのだ。
唐突に訪れた、生ける不幸。
それは、どんな気分だろう。
想像することさえできなかった。

烈「最初は酷かったよ、バランス最悪」
烈「片目なくなったから平衡感覚ないし」
烈「足と手が交互に無いせいで、左右の重さも微妙だし」
烈「なんか、世界が変わったって言うか、不便な生物に生まれ変わった感じだったよ」

淡々と語る口調に暗い感情はない・・・ように見える。

烈「そんな時…タミが現れた」
烈「突然、空間が現れて、空から降ってきた」
烈「一瞬、天使かと思った」
烈「見た目は想像と全然違ったけどね」
烈「でも、神様が、哀れな私に救いを与えたんだと思った」
烈「しばらくは隠れて会ったりしてたけど、飼いたいと思って」
烈「最初は零に話して隠して連れ込んでたけど、お母さんにはバレてて」

よくありそうだ。子猫を隠して連れ込んだけど、ペットは飼わないと言われて泣いたりとか。

烈「ダメ元で飼ってもいいか頼んだら、あっさりオーケーしてくれて」
烈「学校休んでしばらく普通にタミと過ごしてたよ」
烈「けどタミは何もしてくれなくて。ホントにただの不思議なペットみたいだった」
烈「神様が、私をぬか喜びさせて楽しんでるんだと思った」
烈「悲しくなって泣いてたら、タミの下に光が出てきて」
烈「その中から機械の手と足がね」
烈「装着してみたら、思い通りに動くの!」
烈「ただ、脳で物に命令する感じだから、直接じゃなくて動かしにくい」
烈「あまりに色々と説明がつかないから、隠してる」
烈「このことは、絶対誰にも言わないでね」

未夢「そ、それはもちろん」

というか、話してもよく分からないと思う。

烈「眼帯の方は、普通に見た目がグロいからだけどね」
烈「つけたままだと窮屈で蒸れるから、家じゃ外してるけど」

未夢「ああ、それでさっきは」

前回もそうだった。

烈「とりあえず、私とタミと体においては全てこれだけ。それ以上も以下もないよ」

未夢「…」

果たして本当にそうだろうか?
失った手足の代わりに思い通りに動かせる手足を手に入れたから?
確かに、タミちゃんと"体"自体にはこれ以上何もないかもしれない。
けど、それ以上の何かがあるように思えた。
景色を見ることができない瞳の奥底に暗い記憶を、眼帯とともに隠しているような、そんな気がして。

烈「一つ聞かせて。タミのことを話しても驚かなかったのは何で?」

未夢「…」

隠すこともできたけど、その必要はもうなかった。

未夢「わたしにも大切な宇宙人がいたんだよ」

まさか口外することになるとは思っていなかった。

未夢「タミちゃんのような不思議な見た目じゃなくてね」
未夢「本当の地球人そっくりだった」
未夢「まだこんな赤ちゃんで」

幼子を抱くような手振りをした。


未夢「一年間しかいられなかったけど、短いようで長く、そしてとても濃い一年だったよ」

自然と、どこか遠い目をしてしまった。

烈「そうなんだ。赤ちゃんなんていうから、てっきり西遠寺くんとの子どもかと思ったよ」

未夢「ばっ・・・そんなわけないでしょっ」

思わず、叩くそぶりをした。

烈「あっはは。ごめんごめん」

右手で頭をかばうようにして、笑顔になった烈くん。

その銀色の、手首から先を見て、冷静にならざるを得なかった。

学校では見る事のなかった、手袋の下。

烈「未夢さん?」

思わずその手を、握手するかのようにして触れ、握った。

マネキンと握手しているみたいだ。ひどく、冷たかった。

けどその手は、人間の様に握り返してくれた。

烈「な、なんですか、急にきゅっと握ってきたりしてっ。あ、やっぱり物珍しいかな?」

照れ方がおかしいなと感じるより、手に伝わる温度で即行で冷静に返った。

異なものでありすぎるのだ。今触れているものが。

これには、何が込められているのだろう?

物理的に、という意味じゃない。

こんな体になってしまった背景の裏に、何を思ってきたのか?

想像すら、できなかった。


烈「そういえば、今日は休みの日にわざわざ、しかもこんな遅くに私に用事とか、一体何事っ?」


烈くんは笑顔のまま、聞き返す。


何かを決心してきたはずだが、覆いかぶさる様な予想外の発覚により、それが何であったかもうわからなかった。

未夢「あっ・・・いやっ・・・えっと・・・烈くん、元気かなって」

それだけをやっと絞り出した。

烈「こんな体ですけど」

手を広げていった。

烈くんには悪いけど、洒落になっていない。

烈「ごーめんごめん、なんとも思ってないよ」

何とも思ってない、わけはないと思う。わたしにはともかくとしても、少なくとも。

烈「それにしても、また来てねとは言ったけど、今日にしかも夜とは思わなかったよ」

烈「突然電話したり、直接来たり、なんなのさ」

未夢「いやー・・・あはははは」


空笑いを絞り出すようにしていた。


未夢「そういや、零くんは?」

何故か、逃げる様にして話題を変えた。

烈「零?いるよ。呼ぶ?」

未夢「あいや、そういうわけではないんだけど・・・」


烈「?」

未夢「ごめん、今日はもう帰るね。夜遅くにオジャマして、ホントごめんなさいっ」

烈「や、そんな、頭下げないでよっ。私が悪いことしたみたいじゃんっ」

烈くんは焦ってた。

わたしは、誤ったのを夜遅くに上がったことを理由にしていた。

ホントは、色々知ってしまったことを謝っていた。


烈「でも、なんか未夢さんがわざわざ応援?しに来てくれたから、なんとなく元気出たよ!」

両手をグーにして体の横にやり、がんばるぞ、的なポーズをしながら烈くんは言った。

烈「ありがとね」


未夢「いえ・・・」


【玄関】


未夢「それじゃぁ、また学校でね」


烈「うん。ありがと。寒いから気を付けてね」

未夢「うん。オジャマしました」

烈くんは手を振って、バイバイをしていた。


雪「あら?光月さん?もうお帰り?もっとゆっくりしていっても・・・」

烈「お母さんっ、もうお帰りって、こんな時間だけどっ」

雪「外は寒いし、夕飯とか食べていっても」

未夢「また今度に・・・オジャマしました」

困るような顔をしながら、断った。

別にそれが困るようなことじゃなかったけど、今回はなんとなく。

それに、彷徨を外に待たせてたし。

それを、理由の一位にしていた。


ガララっ。



ドアを閉めたら、カチリ、と音が聞こえた。鍵を閉めたのだろう。

門の外に出ると、彷徨が、わたしが入った時と同じ格好で待っていた。


未夢「うわ、ごめん、待った・・・?」


彷徨「・・・凍える・・・」

未夢「うわーっ・・・!ごめん・・・!」

両手の手袋で、彷徨の顔をさすった。

ちょっと唇が青くなってた気がする。

冗談でも来るのかなと思ったけど、そんな元気もないみたい。

確かに今は一番寒い時期の冬・・・。

しかし、そんなになるまで一応待ってくれていたのかと、わたしは暖かくなったけど。

彷徨「なんだ・・・キスで暖めてくれるのか」

ボカっ!

無言で手が出た。


彷徨「今凍ってるんだよ・・・頭砕けたらどうするんだ」


未夢「ば、バッカじゃないのっ!こんなとこでそんなことできるわけないでしょっ」

わたしは暑くなったわ。

彷徨「ここじゃないどこかならしてくれるのか・・・」


震えながら言っていた。


未夢「わかったわかった。わかりましたから、とりあえず暖まって帰りましょ」


彷徨「スルーかよ・・・いやスルーしてないのか・・・?」


辛さの少ない、からかいのような冗談であった。


未夢「どっかのコンビニで熱いコーヒーでも買いましょうね」


子どもをあやすような口調で諭した。


手をつないで引っ張ったけど、覆いかぶさるように背中にもたれてきた。


未夢「ちょーっとぉーっ!?」


彷徨「我慢できない・・・」


何だというのか。


ホントにつらいのか、冗談なのか微妙にわからなかった。

彷徨「あー寒い寒い寒い・・・誰のせいだ〜」

耳元で彷徨が囁いた。


未夢「ああーっ、もう!うるっさいなぁ!」

背中にもたれる彷徨の肩を両手で掴み、引き離した。

そして電灯のない小道で、彼の唇をそっと、自分の唇で塞いだ。


うわ、アイスクリームみたいに冷たいな。


驚くように、そう思ったのだった。