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 ====================================== 経験 ====================================== 


夏希「自分が何に対して反省してるのかを理解してないと、また同じことするでしょ」

未夢「うん?」

また何かトラブルみたいだ…夏希ちゃんが誰かに何か話している。

未夢「夏希ちゃん、どうしたの?」

夏希「いやー、皆で掃除の作業回してたんだけど、私が体調悪くて休憩しててさ」
夏希「私が普段みんなに厳しくしてるからさ、納得いかない子が居たみたいで」
夏希「みんなの前で、その後輩に説教したら怒っちゃったらしくてね」
夏希「そのお友達であるこの子が原因を聞きに来たの」

未夢「なるほど…」

また難儀な。

夏希「君の疑問に思っていそうなことを解説していくわよ。なんでも聞いて」

部員「わかりました。じゃあ…」
部員「なんで相手のことを下だと言うんですか?傷つくじゃないですか」

夏希「まず下なのは年齢とキャリアよ。これは誰が何をどう言おうが間違いないわ」
夏希「別に能力が下とかじゃない、ただの事実よ」
夏希「でも1ヶ月しか練習をしていない人と、1年も練習をしている人を比べてみて」
夏希「どちらの言うことがより信頼性が高いと思う?」

夏希「私は、彼が私より年齢もキャリアも下だということを認識しての言動をしている」
夏希「と感じ取ることができなかったわ」
夏希「言わないとわからないことは言うということだけど、言ってもわからないと来てる」
夏希「なら、傷ついて覚えろ!ということなのよ」
夏希「はっきり言って、私もこんなことを一々0から10まで言いたくないわ」

夏希「あなたは多分わかっていると思うんだけど、あの場にいたので巻き添えだわ」
夏希「恨むなら彼を恨むべきよ」

部員「そうですか。では別の質問を…」
夏希「ええ」

部員「なんで理由を言わないんですか?それはいいわけじゃなくて立派な理由じゃないですか」

夏希「あなたたちは、まず事情を聞かずにいきなり私を責めてきた」
夏希「それだけの理由よ」
夏希「それに、元々理由なんてどうでもいいもの」

夏希「どんな正当な理由であれ、事故を起こしてしまったのなら」
夏希「後に言うことは言い訳そのものでしかないわ」

夏希「事故や失敗を起こされた側が欲しいのは、謝ってほしいことでも理由でも言い訳でもないわ」
夏希「どうしたら二度と事故や失敗を起こさないか?ということよ」

部員「了解です」
部員「あと、気持ち悪いと言ったのに、今元気なのは納得がいってないですが」

夏希「まず、『気持ち悪い』とはどういうことなのかをよく考えてみて」
夏希「普段からそういう雰囲気の人が近くにいたらどう思う?」
夏希「気持ち悪いなら帰れよ、うっとうしいよ、と思うのが普通よ」
夏希「だから私は、よほど気持ち悪くならない限り顔や態度に出さないわ」
夏希「先生も言ってたことがあるけど、授業中にトイレ!ということは、最悪の状態だ!ということなのよ」

夏希「また、キャプテンしたなら分かると思うけど、これはかなり体力を使うわ」
夏希「自分の限界を前もって悟ったなら、いきなり倒れる前に休んだ方がマシだと考えない?」

夏希「また、キャプテンは必ず誰かがやらなければいけない義務感の高くあるべきものよ」
夏希「そういうものが直前に迫っているなら、30分の休憩でもかなりの回復を見込めるわ」
夏希「やることやった後は、もうやることが何もない晴々とした気持ちになるし」
夏希「限界が訪れてないなら、多少気持ち悪くても普通、ということよ」
夏希「ちなみに、笑ってはいたけど、元気だったわけじゃないわ」

部員「わかりました。では次の疑問です」
部員「なぜ謝らなかったんですか?」

夏希「まず私が倒れようが倒れまいが影響がなかったこと」
夏希「監督には前もって相談してたし、許可を得てシフトが変更されたことがあるからよ」
夏希「ちなみにその時、あの子も傍にいて知っているはず。知らないとは言わせないわ」
夏希「小さな声でこれは申し訳なかったけど、変更してもらった時に謝ってる」
夏希「最悪の状態だったので察して下さい」

夏希「ちなみに、掃除後だけど、彼だけは通常通りのシフトで、長めに作業していたのは彼の独断よ」
夏希「別に私が謝ることじゃないわ」
夏希「また、影響が出た副リーダーについては逆にその分の作業をやらなくていいことになってたし」

夏希「以上の様々な理由から、詫びの必要はないと考えた次第よ」

部員「わかりました。では次です」
部員「休憩するなと言ったのに休憩したとなると、信頼できなくなっちゃうじゃないですか。これは?」

夏希「私はみんなに休憩するなとは言った覚えはないわ。自分がしないように努力すると言っただけよ」
夏希「最悪の気分の時に倒れたのに対して、やれよ、とムチで叩くのはどうかと思うけど」
夏希「叱責から始めるのではなくて、まず事情から聞くべきだったんじゃないかな」
夏希「その他、詳しいことを知りたくなったり、感想や意見などあったら、遠慮なくしてね」

夏希ちゃんの言葉は、どこか言い訳のような気がした。
トラブルを避けるための方法を最優先したほうがいいと思うけど…。
彼女なりのプライドがあるのだろう。

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夏希「…ふっふ、言うのは簡単だけど、行うのは難しいわね…」
夏希「自分だって全部完璧にできるわけじゃないのにね」

夏希ちゃんは、自分が言った言葉に苛んでいた。

夏希ちゃんのプライドを傷つけずに何とかする方法を考えないと…。

未夢「あ、あのね、夏希ちゃん」
未夢「夏希ちゃんにも色々あると思うけど、チームメイトなんだし、謝っておこうよ、ね?」

特に何も考えてなかった!直球だった!

夏希「でも…うん、そうね、その方がいいかもね」

でも案外すっとそう思ってくれたみたいだ。

夏希「未夢ちゃんもついてきてよ、また荒れないために」

未夢「仕方ないなぁ」


夏希「ねぇ君!」

さっき話を聞きに来た子とは別の子だ。言い争ったのはこの子とだろう。

夏希「さっきは私も言い過ぎたわ。この通り、ごめんなさい」

夏希ちゃんが素直に謝ってた。珍しい気分。

部員「えっ…いやっ、さっきはこちらこそキャプテンに向かって…すみません」

あれ、素直な子だぞ。


夏希「ううん、ごめんね。あなたの言うことは最もだったわ」

部員「いえいえ…」

夏希「私がヘバってたら、これからもビシッと言ってね」

部員「は、はい…」

夏希「これからも作業とか練習とか、よろしくね!」

部員「はい!」



未夢「…なんか、争いの欠片も見えなかったんですけど?」

夏希「そんなことないわよ、あれでもさっきは結構言い合ってたのよ」
夏希「お互い頭に血が上ってたのね」
夏希「時間置いて落ち着いたのかな…」
夏希「私も、これ以上争い続けるのは疲れるしね…」

未夢「そうだよ、仲間と喧嘩してる場合じゃないし、仲良くしないとね」

夏希「まぁ、馴れ合いにならない程度にね」
夏希「でも未夢ちゃんありがと、あのまま何も言われなかったら、意固地で謝りにいけてなかったわ」

未夢「え?いやいやそんな。夏希ちゃんが自分で決めて自分の足で謝りにいったんだから」

夏希「でも未夢ちゃんが助言してくれたからね」

未夢「ま、まぁわたしみたいなのでも何かの助けになったのなら、良かったのかな…」

夏希「さすがマネージャーね!」

ばん、とグローブで背中を叩かれた。

未夢「全く、夏希ちゃんは世話が焼けるんだから」

夏希「これからもフォローよろしくね!」

未夢「もう、言い争いなんか最初からしなければいいのに」

そう言ってるわたしも、昔は彷徨と言い争いばっかだったかもなぁ。

夏希「じゃ、まぁ、色々すっきりしたところで、今日も投球練習行くわよ!」

未夢「全く、調子いいんだから…」