かれんだー0表示(即更新なし)
1秒待ち
クロスフェード更新
カレンダー22日目表示
クロスフェード通常
CG消去
1秒ウェイト

 ====================================== 太陽と月 ====================================== 

国語の授業。
起承転結で文を纏めるということをやっている。
起承転結と言うと、手紙の書き方で、もう春も暖かく也候云々とかが元の従来だけど。
もうちょっと柔軟にしてみると、こうだ。

誰々様、お疲れ様です、誰々です。これで起。

何々の件でどうこうしたので報告します。これで承。

詳しい内容を書く。ここで転。

以上、宜しくお願い致します。これで結。


もしくは、こうだ。

ある出来事や思いを語る。導入。起。

さらに詳しい事情を書く。承。

それについて云々考えとか愚痴とか。ここで転。

最後に、自分なりの答えを見出す。ここで結。


例えてみる。
何故月は浮いているのだろう?

ちゃんとした原理は存在する。

でも、わたしは月が浮いているのはこうだからだと思いたいのだ。

月は、神の代わりなのだと。
とかとか。自分で言っておきながら詩的だ…。

キーンコーンカーンコーン…

教師「今日はここまで」

今日の授業が終わった。


惠「お、未夢。今から帰りか?」

未夢「ううん、部活だよ」

惠「え?未夢、部活入ってたっけ」

未夢「ううん、入ってなかったけど、最近ね」

惠「え、何部?」

未夢「野球部だよ」

惠「はぁ?で、未夢が野球部で何やってんの」

未夢「えと…ピッチャー、かな。最近ボール取ることしかやってないけど」

惠「はぁぁぁ!?え、ちょ、どういうことだよ、せめてマネージャーじゃないのか」

惠ちゃんの段階的な驚き方がなんだか面白かった。

惠「それボール取るって、ボール拾いさせられてんのか?」

未夢「えーとそういうんじゃないけど、ピッチャーの人の球を取る役目」

惠「キャッチャーのことか?あれ?ピッチャーじゃないの?」

未夢「えーと、ピッチャーの人の補欠兼マネージャーみたいなお世話役な感じ…」

惠「訳わからん。ま、いいか。怪我しないようにがんばれよ」

未夢「あ、うん」

なぜかあっさり解放された。もっと突っ込まれるかと思ったけど。ま、いっか。





わたしがグラウンドで燃えているその頃、みんなはまったり家でお休みなのかな…。
宿題とか勉強とか調べ物とか漫画とか雑誌とか色々。

烈くんはちゃんと勉強してるんだろうか…。少し心配だ。お節介ですいません。
烈くんには宿題やった方がいいよってメールで話してたけど。
何せあの子はあんまり勉強やらない性質っぽいし。
可菜ちゃんは病気みたいだ。
メール返信の9割が、なるほどね だけで済まされてた。

惠ちゃんと彷徨も部活だから、家帰って休んでるわけじゃないか…。







夏希「いやさ、報告連絡相談って返事の強制とかじゃなくて人として最低限のマナーでしょ?」
夏希「どうでもいい雑談ならともかく」
夏希「約束の内容が遊びでも、無理なら納得できる理由を添えてちゃんと断るのが普通でしょ?」

未夢「うん?」

グラウンドに着いたら、夏希ちゃんが部員の誰かに怒ってた。
またトラブルかな?

夏希「納得のできる理由と言っても、具体的な理由がついてたら否定しないよ」
夏希「例えば今日だるいからとかさ。友人と先に約束があるからとかさ」
夏希「言いたくないとか、無理ですだけとかいうのは自己中でしょ?」
夏希「できないの?ならいいけどさ、別に強制しないしもう何も期待しないから」

未夢「夏希ちゃん、どうしたの?」

夏希「あ、未夢ちゃん。部員が理由もなく休むって言い出したのよ」




部員「なんであなたは落ち着いて話せられないの?」
部員「なんでゆっくりしゃべろうとしないの?」
部員「なんであなたは髪を伸ばしてるの?」

夏希「か、髪は関係ないでしょ」

部員「相手を納得させられずに説教タラタラ流す気?」

部員「他人の欠点をつつくだけなら、誰でもできるんだよ」
部員「その人に欠点を気づかせようだなんて思い上がらないでよ」
部員「自分の欠点を認めてこそ一人前のリーダーなんだよ」
部員「何もかも努力して直させようなんて言うのは、お門違いだよ!」

そう言うと彼はグラウンドに散って行ってしまった。


夏希「私ったらダメね。彼に期待しすぎて、酷いこと言っちゃった」
夏希「私だって、全然完璧じゃないのにね」

未夢「夏希ちゃん…」

どこか、気負っているのだろう。
こうあるべきだとか。あるべき姿を。

夏希「あー、なんか、とびきりの馬鹿を一緒にやってくれるって友達が欲しいな〜」
夏希「なんか皆恥ずかしがってやる気がないみたいだし」
夏希「一緒にネタをやってくれるやる気のある人とか貴重だよ」

夏希ちゃんがちらちらこっちを見る。

未夢「夏希ちゃんは疲れてるんだよ。たまには休んで遊びに行ったらいいんじゃないかな」

夏希「さっすが未夢ちゃん!わかってるぅ」

未夢「え?」

夏希「あー、今日はもうかいさーーーん!!! 今日は早めに上がるわよーー!」

あれ、突然休みになった。あれ!?

夏希「そいや最近休み挟んでなかったからね。定休日はないから、たまに気分で休みいれるのよ」

未夢「そんな適当な…」

夏希「仕方ないから、アイツも呼んでどこかに遊びに行くか」





畑中「あ、夏希ー!遅ぇよ!」
 
畑中くんが、運動場の端にいるわたしと夏希ちゃんの姿をとらえると、叫んだ。

夏希「誰のせいだと思ってんのよー、アンタはこんなに打ち散らしてー」

目を細めながらボール入りのカゴ2つを運ぶ。


あれから畑中くんに話しに行って、この後遊びに行く算段をつけてきたのだ。
片付けはわたしと夏希ちゃんで行って、畑中くんには先に着替えてもらってた。

夏希「ボール集めるの、大変だったんだからね!」
夏希「主に未夢ちゃんがー」

未夢「ひーん…」

 
夏希「ホラ、畑中、手伝いなさいよー!ホントはアンタの仕事でもあるのよ」
畑中「へーい。なら最初から俺にも片付けさせりゃいいじゃねぇか…」

気のない返事をして駆けてきた。



夏希「はーぁ…」

ため息をつきながら、カゴを1つ畑中に手渡す。
 
夏希「今日部活の後、奢ってもらうわよ。もちろん、嫌とは言えないわよねぇ?」 

有無を言わさない言い方だった。

畑中「な、なんだよそれ!不可抗力だろ!」

夏希「…」

にっこりと輝いた表情が怖い。

畑中「…」

畑中くんも、首を縦に振ることしかできなかったようだ。
 
でも畑中くんはこう見えても割と真面目な男の子だ。
自分が夏希ちゃんにした行為に後ろめたさを感じないわけではないみたい。
と言ってもバッティング練習してただけだけど。
ボール入りのカゴをぎゅっと握りなおしてる。

畑中くんは自分の財布の中身を見て、ため息をついた。

 
◆◆
 
夏希「んんー!美味しい!!1度食べてみたかったんだ、コレ」
 
夏希ちゃんが頬を抑えながら満面の笑みを浮かべた。
学校の近くのファミレスで最近流行っているパフェ。
フルーツもアイスクリームも生クリームもこれでもかというほど乗っかっている。
全て食べ尽くしても何故か飽きないという噂がある。
夏希ちゃんはそれを聞いてからずっと食べたがっていたのだ。
今やっとその願いが果たされ、幸福の絶頂のようだ。
 
でも、机を挟んで向かい側に座っている畑中くんは…。
夏希ちゃんとは正反対にゲッソリとした顔つきをしていた。
先ほど夏希ちゃんに脅されてパフェを奢る羽目になったのだ。
その上このパフェは畑中くんには甘すぎて口に合わないらしい。
しかも、ボリュームがあるのでそれなりに値段が張る。
 
畑中「クッソー。俺、今日いくら持ってきてたっけ…?」
 
畑中くんは嬉しそうに頬張る夏希ちゃんを恨めしそうに睨む。
確かに、財布の中が寂しくなるのは気になるだろう。
けど夏希ちゃんの笑顔にはやっぱり敵わないと思っているのだろう。
 


 
 
◆◆
 
夏希「あー、美味しかった!やっぱり疲れた部活の後は、甘いパフェよね!ごちそう様!」

機嫌よく手を合わせてお礼を言うと、席を立つ。
けど、畑中くんは浮かない顔をしていて、立つ気配がない。

夏希「畑中ー?おいてっちゃうよ?」

さっさとレジの方に向かう夏希ちゃんに気づいた。
畑中くんとわたしも慌てるように後を追いかける。
 
店員「お会計お願いしまーす」
 
畑中「ま、待ったぁー!!」
 
夏希「え?何、どうしたの?」
 
畑中「じ、実は…」
 
 
 
 
 
 
 
 
畑中くんの話を聞いた夏希ちゃんの顔は赤くなったり青くなったり、みるみる変わってゆく。
そして、小声で畑中に向かって怒鳴った。
 
夏希「お金が足りない、ですってぇ〜!?どうするのよ!タダ食いになっちゃうじゃないっ!」
 
畑中「わ、わりぃ…でも、オマエ金持ってんだろ?」
 
夏希「何言ってんのよ、持ってるわけないでしょう」

夏希ちゃんは腰に手を当てて言い放つ。
 
畑中「ソレ、いばって言うような事じゃないだろ」
 
すかさず畑中くんが突っ込むが、そんなことしている場合ではない。
このままでは、警察に突き出されてしまうのも時間の問題だ。
夏希ちゃんが呼んだ店員も訝しげな顔をしてこちらを伺っている。

夏希「ちょ、未夢ちゃん、ホントごめんけど、お金、足りる…!?」

未夢「え、ええ〜?わたし、自分の分しか持ってないよ…」

そしてそんな慌てるわたしたちを更に追い詰めるかのように、次の客が会計を済ませるためにこちらへやってくる。
 
夏希「次の人来ちゃったじゃない、どうするのよー!」

夏希ちゃんは絶体絶命というような声を出したが、次の瞬間ハッとしたように後ろから来る人物を見つめた。
 
 
夏希「英一…!!?」 
 
いきなり身動きしなくなった夏希ちゃんの姿を不思議に思って、畑中くんもわたしも振り返った。
 
畑中「英一っ」

畑中くんは元部活仲間の姿を捉えると、思わず名前を口に出し、呼んだ。
 
◆◆
 
結局あの後わたしたちは、英一くんによって危機を逃れた。
英一くんがわたしたちの様子を察してくれたのか、自分の分と一緒にお金を出してくれたのだ。
 
畑中「サンキュー、英一!!助かったぜ」
店の外に出るとまだ少し冷たい風が吹いた。
 
英一「ああ」
彼が頷く。
 
夏希「本当にありがとね。お金は明日ちゃんと返すから…―このバカ畑中が」

夏希ちゃんはにっこり笑って、親指で畑中を指した。
 
畑中「てめっ…!俺かよ!」
夏希「当たり前じゃない、もともとアンタが払う予定だったんだから」

夏希ちゃんがプイと拗ねたように言う。
畑中「う…。そ、それにしたって、バカはねーだろ!オマエだって財布忘れてたくせに…!」
 
そんな言い争いをしていると、プッと笑い声が聞えてきた。
英一「変わってないな、オマエら」
 
そんな英一くんの姿に2人は一瞬あっけにとられた。
 
畑中「英一、今から帰るのか?」
あっけにとられていたけど、夏希ちゃんより早く反応した畑中くんが聞いた。
 
英一「ああ、今から帰るところだけど…オマエらも?」
 
そう返事をした瞬間に、夏希ちゃんの肩がビクリと動いた。
 
夏希「うん、そうだよー!英一、久しぶりに一緒に帰ろっか?」

さっき、一瞬怯えていたのが嘘のように明るく振舞う夏希ちゃん。
 
畑中「ッチ。無理してんじゃねぇよ…」

夏希ちゃんに聞こえないように小声で愚痴を言う。

夏希ちゃんは、英一くんが頷いたのを確認してから、それじゃあ、と畑中くんに背を向ける。
 
畑中「ま、待てよ夏希!俺、まだオマエに貸したCD返してもらってねぇんだけど」
畑中「アレ、次に回す奴いるんだからな」
夏希「え?」
夏希ちゃんは大きい畑中の声に必要以上に驚いて振り返る。
 
夏希「てか、私CDなんて借りてな…」
 
畑中「オマエ何回言っても忘れてくるから、取りに行く」

夏希ちゃんが言い終わらないうちに、早口で畑中くんが言い終えると、2人の前をすたすた歩いていく。

未夢「あ、待ってっ。夏希ちゃん、わたしもそろそろ帰るね」

わたしはオジャマだろう。

夏希「うん…サンキュ」

何かを感じ取ったのか、夏希ちゃんは礼を言った。

夏希「英一、行こ」


--------------------

未夢「畑中くん、待ってよ」

畑中「なんでお前がついてくるんだよ」

未夢「いいじゃない、こんな機会ないし、わたし、夏希ちゃんのオジャマだったし」

畑中「そんなことねーだろ、いつも一緒なんだし」

未夢「畑中くんだって、夏希ちゃんに気を利かせたんでしょ?」

畑中「いや、むしろ俺はジャマしたつもりだったんだが…」
畑中「突然二人で行くみたいな雰囲気出したのもあいつだし」

未夢「でも結局、二人から離れたじゃない」

畑中「…うっせーよ」

この感じ、中学二年生のときもあった。
友人が、知っている人を好きになっている感じだ。

畑中くんは、多分夏希ちゃんのことが好きなんだ。
でも夏希ちゃんは、英一くんに…。

…畑中くんも、報われない恋しちゃって…。
今更そんな事を嘆いたって仕方ない。
好きだと思ったら、もうそれはどうにも変えられないのだ。 
恋は理屈じゃないなんて、ホントよく言ったもんだと苦笑いをこぼす。
 
夏希ちゃんは今、恋をしている。畑中くんではない人に―…。
 
そして夏希ちゃんもまた、報われない恋をしているのだ。
 
うまくかみ合わない関係。
でも畑中くんはこの関係を崩す術を知らないだろう。
いや、知っているのかもしれないけど、それをしないだけ。
崩すのが…崩れてしまうのが怖いから。

未夢「今まで夏希ちゃんのボール相手してたの、畑中くんなんだよね」

畑中「…なら、なんだっつーんだよ」

未夢「えと、申し訳ないから、変わろうか?それで元に…」

畑中「あいつが光月がいいって感じなんだから、今のままでいーだろ」

畑中くんは、謙虚だな。それとも天邪鬼なのか。


…わたしは夏希ちゃんに、英一くんがチームに入ってくれるように頼まれている。
裏の意味はこうだ。
英一くんと結ばれたい。
それははっきりとは言ってなかった。つまるところのわたしの勝手な想像だ。
でももしそれが当たっていたとしたら?
…わたしは、畑中くんの恋を応援することは、できないだろう。
それはとても切ない物語を見ているかのよう。
みんなで幸せになることは、できないのだろうか。

わたしにも3年前、ライバルがいたはずなのだ。
もしわたしが彷徨を見てるだけで、叶わないと知っていたとしたら?
それは想像に容易くない。想像できない。したくない。

畑中「…いいんだよ、これで」

何の気を回したのか、畑中くんがそう言った。
だから、わたしもこう返すのだ。

未夢「畑中くんも、がんばれっ」

わたしの方が、天邪鬼なのかもしれない。

畑中「何にだよっ」