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 ====================================== 分析 ====================================== 

夏希「あー、最近なんだかイライラしているわ…これも私が未熟だからだわ」

いつもどおり、夏希ちゃんとキャッチボールしながら会話している。
他の部員さんに機材のことで呼ばれたりしたらそれの対応をしたり、道具を補充したり。

休み明けの今日も部活だ。休みはないのだろうか。

未夢「どうしたの?何かあったの?」

夏希「あー、いやね…クラスメイトが懐かしい作品の話をしてたのを横目で聞いてたんだけどね」

夏希「話の内容は下品だったからさ」

夏希「別に、寂れているものに対して話題がついて盛り上がったのならなんでもいいとか」

夏希「そういうわけじゃないと思ったからね」


未夢「あはは。お疲れ様」

夏希「作品の空気読めないっていうかなんていうか、大変よ」

夏希「ね、未夢ちゃん。学校で出会った人たちって、みんな友達だと思う?」

未夢「え?なに突然」

夏希「私思うのよ。みんな口に出してはいわないけど、社会に出たらさ」

夏希「社会という繋がりで出会った人は『友人』では無いと思うって」

夏希「『知り合い』や『お付き合い』『同期』などはあってもね。どこか敷居を作ってる感があって」

夏希「その中で知り合いではなく『友人』になる可能性もあると思うけど」

夏希「なんかね、私浮いてるかなって」

女の子で野球好きだ。多少浮いてるとこもあるかもしれない。
でも彼女が言いたそうなこととは、少し違うような気もした。
他の子達と同じように馴染めなかったのだ。
せっかく学校と言う環境で出会っているのに、友達のように話できなかったことを悔やんでいるのかも。

未夢「わたしだって、クラスメイトの子たちと全員仲良い訳じゃないよー」

夏希「ううん、そうじゃなくて、なんていうか、私あんま空気読まないからなぁ〜」

夏希「空気読めないの間違いじゃないのかとはよく言われるけどー」

夏希「空気読んでると逆に疲れる時もあるというか」

夏希「自然体で居るから、空気読むとか読まないとかあんまり考えない」

夏希「私が気が利いてるかどうかかな。それが空気読みならばそれはそれだけど」

夏希「しゃべるのがめんどくさい時は、一々しゃべる必要もないし」

夏希「でもある程度、いい人を演じないと損である部分はあると思うけどねー」

未夢「夏希ちゃん、正直すぎるんだよー。オブラートを覚えないとねー」


夏希「お父さんの知り合いのおじさんが薬剤師だけど、病院先の先生が貫禄ある人多いらしくてー」

夏希「何かに誘われた時は大抵、ゴルフとかカラオケとかだったりするそうなの」

夏希「得意先ともっと入り組んだ話をしたい場合はそういう場を求められるのかも」

夏希「そうなったら、家族と憩いでもしない限りは断る理由がないんだろうね」

夏希「なんていうの、そういう会話する時の空気?みたいなのは大事なのかもねー」

未夢「…そだよー」


夏希「狙って他人と違う道を歩んできた私は、すっかり突然変異色に染まってしまったからさ」

夏希「通常を認識しつつはあるものの、後戻りできない」

夏希「悲惨なことも多々あったけど、それだけに楽しい」

夏希「これはこれで良かったかなとも思ってる」

夏希「あるマンガを、流行ってずいぶん経ってから初めて読んだんだけど、面白いことが書いてあってさー」

未夢「なんて書いてあったのー?」

夏希「『普通であることがつまらない。普通のことは他のやつらに任せておこう』ってー」

夏希「この台詞を読んだ時は『これ自分じゃん!』と思えて思わず笑ってしまったよー」

未夢「あはは。ホントだねー」

ボールと共に言葉も返していた。叫びながらボールを投げたり受け取ったりしていたので疲れた。

と、思っていたら、夏希ちゃんがボールを持って近づいてきた。

夏希「さて。ウォーミングアップはこのくらいにして、ちょっと戦術でも考えようかな」

未夢「ウォーミングアップだったの!?」

夏希「そだよー。なに、未夢ちゃん、疲れちゃった?」

そういいつつも、夏希ちゃんも汗をかいて、少し肩で息をしていた。叫びながらしていたからだろう。

汗が出るほど体が温かくなっていても、冬の温度ですぐ体温は下がるだろう。汗によって寒くなりそうだ。



夏希「いやね、試合する時、投げる球種とかのことを考えておきたいなって」

夏希「前に英一と勝負した時、チェンジアップとか全部読まれちゃったし、あの屈辱、恨み、忘れはせんっ」

夏希「未夢ちゃん、球種ってわかる?」

首をぶんぶんと横に振った。

夏希「投げる球の種類がね、色々あるのよ」

夏希「私もまだできないのは把握してないけど」

夏希「まずストレートと変化球があって、球種っていうのは変化球の種類のことかな」

夏希「カーブ、スライダー、フォークとか。チェンジアップも一応変化球なのかな〜曲がったりはしないけど」

夏希「実はね私、投げるパターンを決めてて」

夏希「いつもはストレート、下手投げ、カーブ、ボールって投げてるのよ」

夏希「落ち着くっていうか、体力が安定するというか」

夏希「ああ、今ボールっていうのが混ざっちゃったけど、4回目はボールって決めてるの」

夏希「それまでは、ストライクかボールかは決めてない」

夏希「なんだか色々説明が混ざっちゃったな。下手投げも、球種じゃなくてフォームだしね」

夏希「決め手は、チェンジアップでもいいんだけど、やるならフォークとかでもいいんだけど」

夏希「最後はやっぱりストレートの速球ね!」

夏希「別にフォークができないわけじゃないけど」

夏希「唯一楽々できるのだけど、投げ方の仕様上、やるとその後しばらく指が痛くなるのが嫌だからしていないだけね」

ボールを人差し指と中指で挟むようにして持って見せてくれた。

痛そー。



夏希「この戦法をちょっと変えようと思って」

夏希「今までは安定と体力持ちを重視してたけど、次は立ち回りを重視してみたいかなって」

未夢「立ち回り?」

夏希「安定と体力が立ち回りを重視していたんじゃないか、とも思ったけど」

夏希「これは必ずカーブとフォークができることが前提だったから」

夏希「その対策をしている相手には通用しないので、立ち回りとはまた別だと思って」

夏希「要は、今までは何があっても自分の安定を最優先にしてたけど、相手によって変えようと思って」

未夢「ほうほう」

夏希「未夢ちゃんわかってないわね。まぁ聞いてて」

夏希「私も、自分でしゃべっててまとめになるし」

夏希「従来ではボールで一休みをしていたけど、今回ではチェンジアップで休んで、打たせて取る」

夏希「また、決めはフォークにしてみる」

夏希「ストライク判定の範囲が狭まりそうで嫌だったんだよね」

夏希「なので、かなりまずい状態まではボールで待って」

夏希「ストレートを狙ってきたら容赦なくフォークを振るという形に」

未夢「はぁ」

夏希「出だしはチェンジアップではなく、上手投げチェンジアップで内角ボールとか」

夏希「上手投げストレートから上手投げチェンジアップ、フォーク後に各種、速球とか」

夏希「ディレイチェンジアップ、下手投げからの上手投げ…など織り交ぜることにしよかな」

夏希「でも相手が4番クラスだと、見てからで充分間に合ってしまうかなぁ…」

夏希「その場合は、初回ストライク取りは諦めた方が良いのかもしれない」
夏希「完全に読みの刺し合いとなり、この技術では相手の方が一枚も二枚も上手の気がするし、どうしよう…」


今までわたしに話すように考えていた夏希ちゃんだけど、やがて自分に話しかけるように考え出した。



夏希「チェンジアップフォークを使いたいのだけど、これバレバレなんだよなぁ…」

夏希「見てからタイミング対応できる人相手、英一とかに応用で使えるのかどうか…」

夏希「個人的にはニガテコースにえぐりたいんだけど、それまで相手がぼーっとガン待ちしている時に限るし」

夏希「かなり冒険となっちゃう」



夏希「あっ、そういえば、調子がいいと投球速度が時速1キロメートル早くなることを忘れてた」

夏希「そのときは、速球を連発できるようになることを念頭においておかないと」

夏希「防御率も1割程度増えるし、その分攻撃せずに済んで勝つためにもなるべく万端状態で戦いたいな」

夏希「あーでも今までの癖が残りすぎているので、チェンジアップをやってしまいそう…」

夏希「速球ストレートは100キロ、チェンジアップフォークは80キロ未満、差が激しい」

夏希「まーあとはやってみるのみかな…」

夏希「もうちょっとチェンジアップフォークや下手投げフォークを使ってみてもいいのかなという気もするけど…」

未夢「…」

夏希「あっ!ごっめーん!ついつい1人でしゃべっちゃってたよ!退屈だった?」

未夢「あっ、いや、ううん、そんなことないよ」

未夢「一生懸命考えてるなぁって、見てて楽しかった」

夏希「な、何よもう〜。なんだか恥ずかしいな」

夏希「あ、そうだ。未夢ちゃんが最初に投げたパンチボール、あれも変化球なんだよ〜。ナックル」

未夢「あ、そうなんだ」

夏希「全然曲がってなかったけどね」

未夢「あっはは」

夏希「ナックルは私はやってなかったけど、一応練習してみようかな」

未夢「がんばってね」

夏希「未夢ちゃんがやりだしたのに」

未夢「わ、わたしのはその、わかってなかったから」

夏希「知ってるよ、もー」


夏希「じゃー今言った順のを練習してみるかな」

夏希「未夢ちゃんはキャッチャーじゃないけど、私のボールを取れるくらい捕球に上手くなってもらうわよ〜」

未夢「え、え〜と、どの順?」

夏希「投げる前に言いながらやるから、捕球よろしくね!」

未夢「わたしに上手くできるかなぁ〜…」

夏希「よろしくね、女房さん!」

未夢「にょ、にょうぼっ…!」

夏希「ん?ああ、こっちの業界じゃピッチャーの球取る人を女房って言うのよ、知らなかった?」

畑中「…ちっ」

なんだか、どっかで舌打ちが聞こえたような気がした。