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 ====================================== 思いと言い訳 ====================================== 


今日は土曜だけど、部活があるから来た。
けどわたしは部活が本筋じゃない。夏希ちゃんには悪いけど。
でも今日学校に来ているのは部活の為。
補習はついでだ。
本筋とついでが逆転しているような気がするけど。


いつもの授業中のようだけど、いつもより暇だ。
でも暇と思っちゃいけない。これを聞いて覚えるのが学生の本分だ。
もし、先生の説明がなかったら、一人で教科書全てを覚えられるだろうか。
その速度を速くさせてくれているのが、先生の説明だろう。
受け手側である生徒たち、わたしたちは、それをずっと聞いているのだ。

説明の一番の目的は、受け手側が理解すること。
説明する方が一方的に説明して、受け手側はそれをとりあえず聞いてまとめる。
その上でわからないことだけをまとめ、後で聞く。
わからないことが出た時点で聞くと、説明者の方向性が乱れるからだ。
これが一番綺麗な、説明の型だと思う。


だけど説明とは本来、何かわからないことについて、受け手側がわかるようにするということを目的に行うものだ。
説明者が自己満足に説明して終わりでは意味がない。

そういう意味で言うと、この『説明する方が一方的に』というのはおかしい。
理屈では分かっていても何となくピンと来ない部分がある。

先生とか教室とか学校とか言うイメージでならばその形は良いけど。
質問したくても大勢の前では恥ずかしくてできないこともあるだろうし。
マナーとルールに縛られて目的を忘れずにいたいものだ。


途中で話がわからなくなるとついていけないし。
何がわからなかったかも忘れるし。
メモすればいいけど、量が余りに多くなるとまとめきれなくなるし。

あと、説明する方が受け手側に『なんでわからないの』というのを見ることがあるけど、やめてほしいと思う。
自分が受け手側なら、『(頭悪くて)すみません...』になっちゃうし。
もし自分が説明側なら、『自分の説明が悪いのかな』と思う。

でも、一発でわかられると自分がした理解の苦労も空しく感じる。
説明してもわからなかったら、失敗させて記憶にこびり付かせたほうが結果的には早いかもしれないけど。
って説明の意味ないじゃん!

…なんか色々考えちゃって疲れた。












夏希「授業中の馬鹿どもを静かにさせてよー」
夏希「うるさいし迷惑で嫌。先生の声が聞こない」
夏希「私は静かに授業を受けたい」

夏希ちゃんのクラスではどうやら騒がしかったようだ。



夏希「先生も、訳のわからない確認や質問、言動に一々反応するのはやめてほしいんだよね」
夏希「数回ならともかく、頻度が多すぎ。授業の進行が止まっちゃう」
夏希「馬鹿の一々の確認には、『今から言うから落ち着け』などして受け流せばいいんだよ」
夏希「アホの変な質問には、『あとで質問タイムを設けるので、関連の質問はその時にお願いします』」
夏希「『それ以外の質問は授業外で』などして対応してほしいもんだよ」
夏希「昔の担任はできてた」
夏希「私もやったけど、キレるのはあまり効果が無いみたい」

未夢「えー、夏希ちゃん声上げちゃったことあるの」

夏希「あまりにうるさくて、ついね」


夏希「あとねー、その先生たまに下品なこと言うのね」
夏希「仕事中に下品なことを言うのは勘弁してほしい。サイテー」
夏希「それ言うのって、必ず必要なことじゃないよね!?」


未夢「多分、先生なりに和ませようとしてるんだよ。スマイルスマイル」


夏希「とにかく同じ間違いを2度以上起こさないようにしてほしいわよ、まったく」
夏希「周りに迷惑をかけないこと、それは人間として勉強より大事なことと思う」
夏希「私はただの一学生の身だけど、既にあれこれ行動を起こし数十時間にわたって話し喉を枯らしたわ」


未夢「ええー、既に何か言っちゃったの」


夏希「そうよ。私は、授業が静かであれば、誰が何をしてようと構わない」
夏希「あとはそいつが将来尻拭いをすればよいこと」
夏希「ただ、周りの妨害をしていることを防いでほしい」
夏希「仕事、サービスとして行うべきだと私は思う」

未夢「先生も大変だね…」

夏希「さて、愚痴はこのぐらいにして、練習始めますか!」

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夏希「よーし、今日はこれくらいかなー」

夏希「さて!みんなー!片付けてー!」

日が傾いたと思ったらもう沈んでいた。冬の昼は短く、夜が来るのは早い。

夏希「もうこんばんはの時間ね」

未夢「まだこんにちはじゃない?時間はまだ5時くらいだし」

夏希「日が沈んでから昇るまではこんばんは、昇ってからはおはよう、沈むまではこんにちは」

夏希「だから、夏、冬では、こんばんはとこんにちはのタイミングが変わるんだよ」

夏希「少なくとも、私はそう思ってるよ」

未夢「そっか」

それから、夏希ちゃんは片付けの指令を色々出していた。

キャプテンなのに、雑用まで…立派だなぁ。

や、キャプテンだから、立派に指令出すのは尚更なのかな。

雑用的なことはわたしがやるべきかな…。

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そう思っていたら、1人の男子がこちらを見つめていた。

男子「…」

夏希「あら、あなたは、昨日の…」

未夢「えっ」

昨日って、話題にしてた子?

男子「お前、なんでいつも指示だけしてるんだよ。お前も片付けろ」



夏希「なんでイライラしてるのかわからないけど、私がサボっているように見えるの?」
夏希「普段私はそんなにふざけてるように見える?」

男子「普段なんて関係ないだろ!」


夏希「普段が関係ない?今だけが大事?」
夏希「そんなことはないわ。今だって過去の積み重ねよ」

男子「関係ねぇよ。とにかく片付けろ!」


夏希「あなたも片付けてたならわかるでしょう?」
夏希「ベースは4つ。4人もいれば十分人では足りてるでしょう」
夏希「未夢ちゃんには他の雑用をお願いするし、私は人ハケや彼らの作業の確認だってしてる」

男子「みんなは普段から片付けの事実を作ってきたぜ。やってないのはお前だけだ」

夏希「ならあなたがバイトに行って空いた穴を、誰が自分の時間割いてふさいでると思ってるの」
夏希「私はキャプテンだから、やらなきゃいけない」
夏希「その事実を積み重ねてきたのに、あなたはそれを見もしないで私に事実がないと言い切るんだ?」

男子「うっ…」

夏希「あなたのイライラの原因は、片付けじゃないわね。なに?」
夏希「私が未夢ちゃんとおしゃべりしてて本気で練習してないように見えたのかしら?」
夏希「私が普段から厳しくしてたから、その差にイラついたのかしら」
夏希「私だってただの人間よ。完璧じゃない」

男子「だ、だからなんだって言うんだ」

夏希「息抜きだってする。それでも、絶対に気を抜いちゃいけない時は気を抜いてないわ」
夏希「人が話をしている時は黙って静かに聞いたり」
夏希「しゃべる時はしゃべってもいいタイミングを見計らってるわ」
夏希「TPOも考えないで言動してるわけじゃないの」

男子「…」

夏希「あなたのイライラは結局自業自得よ」
夏希「あなたが、TPOをわかってないから」
夏希「それをわかってない状態で、私が色々言われるのは、甘んじて受け入れるわ」
夏希「キャプテンは、嫌われるのが運命だからね」


それはきっと言い訳だ。
わたしには、夏希ちゃんの過去がない。
夏希ちゃんがサボってるわけはないと信じられる。
けど、今だけの事実だけを見たら、片づけをやらない言い訳に聞こえるのだろう。
その男子にはそう見えたのかもしれないと思った。

未夢「あれ、そういえば、昨日の子って…」

夏希「そ。部員であり、クラスメイトであり、クラスの食事会で私を省いた子よ」
夏希「さっきもちょろっと言ったけど、授業中でうるさいときがあってね。それを注意したのよ」
夏希「で、それはいいけど、授業中に私が授業のコトでちょっとお隣とお話とかしててね」
夏希「なーんかそれが不快に思われたらしいわ」
夏希「授業に関係ないことじゃないし、周りには聞こえないくらいにしてたはずなんだけど」
夏希「自意識過剰だったのかしら」

未夢「そ、そうだったんだ」

夏希「まぁもういいけど、この際だから言っておくわ」

夏希「クラスの食事会の幹事として動いてるなら、個人の感情で動くのはまずいんじゃないかしら」
夏希「キミが言ってるのは、私が静かにしろと言ってるのにしゃべってたりのことかな?」
夏希「私はしゃべるなと言ったことはないし、タイミングが大事としか言ってないよ」
夏希「先生が話してるのにしゃべってたら、それはいけないよね」
夏希「誰かがギリギリのラインを突破してるのに誰も注意しないなら、私は自分たちのために注意するよ」

男子「あ、ああん?何を勝手なことをっ…」

夏希「キミは勉強もできない、運動できない、礼儀なし、高いとこダメ」
夏希「怖いのダメ、他人に頼ってばかり、一人で努力する気なし、文句ばかり」
夏希「要するに」
夏希「やる気を感じさせない」
夏希「基本的なモラルが欠けている」
夏希「自分の事しか考えない」
夏希「こちらの言う事が理解できない。日本語の文法がおかしい」
夏希「自分の能力の低さに対する自覚がない」
夏希「自分と相手を正しく分析できない」

夏希「目指す世界で必要とされるものを何一つ持とうとしていないのに、自分が正しいと思ってるのかな?」
夏希「それを、周りは心の中で本当はどんな目で見ると思う??」
夏希「一生懸命頑張ってる人に対して、失礼じゃないかな?」

な、夏希ちゃん、怖いよ。

夏希「連絡も、別に口頭や手紙、私のことがニガテならもしくは別人に頼めばいいことじゃない?」
夏希「もっといい方法なかったの?」

夏希「キミは…もっと我慢強く、冷静に考え、忍耐を身につけること!」
夏希「努力することを覚えることをお勧めするよ」
夏希「キミは昔の私と似てる」
夏希「厳しい事言ったけど、あなたと周りのためだから。やればできるから。今後に期待します」

男子「うるっせーよ!誰がお前の言うことなんか聞く必要あるか!辞めてやる!こんな部活!」

夏希「そ…残念だわ。色々対処させてもらいます」

男子「勝手にしろ」

未夢「ああ」

取り付く島もなく話が終わってしまった。

未夢「夏希ちゃん、いいの…?」


夏希「…はぁ。私も作業してれば良かったわね」
夏希「以前、別の子にそう言われたわ」

夏希「私は何されてもその人間を嫌いにはならない」
夏希「私が嫌いになるのは人じゃなくて言動よ」

夏希「私や先生だって完璧じゃない」
夏希「だけど、いくら辛くても最低限度のTPOは弁えてるつもり」

夏希「あの子は、その最低限度の努力さえしていたのかしら」
夏希「色々弁えていたのかな」
夏希「さもないと、例え今私と和解しても、また同じ過ちを繰り返す」


夏希「もし彼が私に本気で謝るなら、言い訳は止めてもらわないとね」
夏希「今まで色々フォローしてきたけど、同じ間違いを繰り返されたら手に負えない」

夏希「別に私のことは嫌ってくれてもいい」
夏希「ただし、私から離れても周りに迷惑をかけるのは止めてほしい…」

夏希「周りが許してくれているからといって甘えるのも止めてほしいしね」

夏希「同じ言動でも、タイミングで許されも許されざるもする」
夏希「おしゃべりでも、人が話している時は許されないけど、そうじゃなかったら許してもいいはず」
夏希「彼もわかっているはずよ」
夏希「その境界を弁えることを望んでるわ」

夏希「もっと他人のよい言動を手本として見た方がいいわね、あの子は」

夏希「私は、私の関わる世界を良くするためなら、嫌われだってするわ」

未夢「…嫌われるんじゃなくて、好かれればいいんだよ」
未夢「そんな、好んで嫌われる必要なんて、ないよ」

夏希「そうね。私が彼の良い手本になれなかった、それだけの話かもね」

彼は部活を辞めて行った。
夏希ちゃんとは普段から確執があったようだ。
夏希ちゃんは、内心どんな思いなんだろう。
平気に振舞っているけど、心はそうじゃないと思う。
わたしが、夏希ちゃんを支えていってあげたい。

未夢「夏希ちゃん、色々大変だと思うけど、わたしが支えるからね」

夏希「…うん。ごめんね。ありがとね」

その笑顔は、寂しそうだった。