かれんだー0表示(即更新なし) 1秒待ち クロスフェード更新 カレンダー27日目表示 クロスフェード通常 CG消去 1秒ウェイト ====================================== どこにも行かない ====================================== 未夢「…」 朝だ。 普通に眠れてしまった。 最近、よくわからない夢を見たけど、そういうのを見ることもなかった。 不思議だな。 迷ってる時って寝れなかったり、寝れても変な夢見るって感じするのに。 よく寝れたなと思った。 それぐらい、疲れてるんだとも。 48時間経った。 もう面会できるだろう。 病院へ行く。 …ああ、まだるっこしい。瞬間移動したい。 どこでもドアが出るのはいつなのかな、とかそんなことを考えてた。 どこでもドアが出たら、そうだな、ハワイとか行きたいな。 白昼夢というのだろうか。 考え事が独り歩きして、夢でも見ているかのような気分に捉われた。 そしていつの間にか目的地に着いていた。 病院だ。 固く、冷たい。 そんな雰囲気だ。 看護婦「西遠寺彷徨さんへの面会ですね。どうぞ」 案内された部屋番号は、昨日と変わっていた。 病棟が移されたようだ。 …西遠寺 彷徨。 立札を見た。 なんというか、現実味がない。 何故?と言う感覚。 …。 ノックしようと思ったけど、一瞬躊躇われた。 返事がなかったらどうしよう? コンコン。 してしまった。 …。 返事はなかった。 …。 だからと言って、どうしようもない。 未夢「彷徨?無事?入るよ…?」 ガラガラ… 彷徨「…」 彷徨は、無言だった。 彷徨が眠るベッドの横の椅子に腰かける。 彷徨「…」 未夢「おー…い…?彷徨?わたしだよ、未夢だよ」 彷徨「…」 まるでただ眠っているかのようだ。 実際、眠ってはいる。 ただし、起きない。 人形にでも話しかけて遊んでるような、仕方のない自分を感じた。 そっと彷徨の手を握る。 冷たい…。 今真冬の時期だしな。手先とか足先とか冷えちゃうよね。 わたしだったら寒くて起きちゃうよ。あはは。 未夢「おーい、彷徨、暇だぞー」 彷徨「…」 彷徨は、返事をしてくれなかった。 未夢「せっかく来てやったってのに、無視はひどいっしょ」 彷徨「…」 未夢「…」 未夢「おーい…?」 彷徨は終始無言だ。 耳は生きてくれてるだろうか。 未夢「…」 それっきり、わたしもしばらく無言になった。 彷徨の手を握りながら、自分の膝元を見つめるだけの時間。 果てしなく感じた。 今、この世は、この病室の空間しかなく、時間は永遠に存在する。 何もない空虚が、ずっと続く。 そういう、錯覚に捉われた。 何気なく、外を見た。 ちゅんちゅん…。 雀が鳴いている。 春はまだ遠いけど、雀が元気に鳴いていた。 天気は快晴だ。雲はまばらで、青が広がっている。 冷たいからか、空気は澄んでいるように感じた。 病院独特の、匂いを残して。 彷徨「…」 未夢「…」 なんちゃってー、って言いながら彷徨が起きてくる準備をしていた。 いつも色々強がってたからな。 これも、先生と打合せした何かのドッキリだと、今でも思ってる。 でもそれも、時間が過ぎることに、零コンマいくつかずつ、わたしの中を現実へと浸透させた。 これは、現実なんだ。 わたしは病院に居るのだ。来たのだから。 何しに? 彷徨の見舞いだ。 見舞い?面会? 流れるように自問自答していた。 どこか空虚だ。 本当に、何もない。 病室は、何もなかった。 新しく引っ越してきた部屋よろしく、生活感が用意されてなかった。 未夢「お花ぐらい、持ってこれば良かったかな…」 自分の声が虚しく、部屋に響いた気がした。 彷徨と二人でいる時は、わたしがしゃべらない限り、彷徨は無言だ。 奇しくもそれを再現されている。 けど今は、わたしがしゃべっても、彷徨は無言だ。 ずっと無視され続けてる。彷徨の意地はひどすぎる。 そうやって、これがギャグで、我慢比べなのだと、自分に言い聞かせた。 そうじゃないと、何かが音を立てて崩れてしまいそうだったから。 未夢「…しょうがないな。彷徨、暇だから、お話でもしよう」 未夢「…そうだな、何話そうかな」 何かの音を聞かせて、耳を働かせることで、患者の容体も善くなるという。 その詳細は、よくわかっていない。 まるで、それは魔法だ。 未夢「今月の最初辺りから話そうか」 未夢「今月は何があったんだっけ…そうだ、烈くんがやってきたんだっけ」 未夢「帰り道に不思議な人にぶつかったと思ったら、翌日うちのクラスに来るなんてびっくりだったよ」 未夢「しかも前の席だし」 未夢「彷徨は何とも思ってないように見えたけど…実は何か考えてた?」 彷徨「…」 彷徨から返事は、ない。 つい、返事してしまいそうに持っていったつもりだけど、甘かったかな。 気にせず続けよう。 未夢「次の日は何してたっけ…惠ちゃんが烈くん見に来てたんだっけな」 未夢「惠ちゃんは烈くんのこと気に入ったみたいだよ。あれからからかいに来るくらいだからね」 そうか? 彷徨だったらそう答えただろうな、そう思った。 未夢「そうだよ。彷徨ったら、女心がわかってないんだから」 いや…あれは女心とかそういうもんじゃないだろ。 自分の中で、彷徨の声で復唱された。 とうとう、幻聴が聞こえるようになっちゃったかな、そう思えた。 未夢「それから〜…何やってたんだっけな。次の日は可菜ちゃんに会いに行ったんだった」 未夢「ホントは烈くんの話でもしようと思ってたんだけど、テキトーに本の話して終わっちゃったよ」 本?何の本だ? 未夢「何の本だったかな〜。忘れちゃった。彷徨の読んでる小説の話じゃないよ」 なんだ。残念。 未夢「次の日は〜…そうだ、今月の最初の方だったね、物凄い雪降って、積もってた!」 未夢「めちゃくちゃ寒いっていうか、痛いほど冷えると思ったら!」 未夢「何故か雪合戦することになってたよね」 未夢「彷徨、手加減してくれないんだもん…」 未夢だからな。 未夢「何よそれー。手加減してくれたっていいじゃない」 あっはは。 未夢「全身びたびたになって…よく風邪引かなかったよね」 未夢「そして翌日は…スキーしにお泊りしにいくことになって」 未夢「パパママの他に烈くんたちや、彷徨と一緒に…」 未夢「そういえば、彷徨と旅行するなんて、あれが初めてだったかな」 未夢「スキーも初めてだったけど、彷徨が居たから、楽しかったよ」 未夢「最初は、足が勝手に滑り出して、怖かったけど…」 未夢「彷徨が、スパルタで教えてくれたんだよね」 そうだったか? 未夢「そうだよ。もう、なんでちゃんと覚えてないのさ」 未夢「夜は烈くんが枕投げしそうで、大変だったよね」 未夢「翌日はさ、わたしがちょーしに乗って、崖から落ちたんだっけ」 未夢「そしたら、彷徨も自分から落ちてきて」 未夢「あの時はびっくりしたよ。しかも、ずっと前も、同じようなことしてたし」 未夢「彷徨足怪我して動けなくなってさ。日沈みそうでさ」 未夢「怖かったけど、怖くなかったよ。彷徨が一緒だったから…」 未夢「あの後、わたしたちに気付いた烈くんたちが助けてくれたんだよね」 未夢「みんなが居なかったら、危なかったかもしれないけど…」 未夢「彷徨…また今度はさ…二人きりで、行きたいね」 未夢「ね、彷徨…」 彷徨「…」 未夢「…次の日はさ、夏希ちゃんと会ったんだ」 未夢「野球部来ない?って言われてびっくりしたけど、最終的には遠慮しちゃった」 未夢「わたしにはできそうにないから」 そうか? 未夢「ううん、実は…彷徨との時間が減るのは嫌だったから…かな」 未夢「あはは。何言ってるんだろうね。彷徨も部活なのにね」 未夢「わたしのわがままだよ」 未夢「でもわたしだけでもせめて、いつでも彷徨と一緒に居れるようにしていたかった」 未夢「彷徨はいつも終わった後に迎えに来てくれて、ありがとね」 彷徨「…」 未夢「……それが終わったら今度はさ、惠ちゃんの軽音部手伝ったよね」 未夢「当日、急に部員の皆が風邪とかさ、しくまれてたかって感じだったよね」 未夢「あの日は急に代わりの人探して、大変だったよ」 未夢「彷徨もわざわざつきあってくれて、ありがとね」 未夢「あの時の彷徨、カッコ良かったぞ」 未夢「あとさ、あの時は、わたしも何かできるんだって思えたよ」 未夢なら何でもできるよ。なんたって、俺の未夢だからな。 未夢「そ、そう?ふふん。何でも任せてみなさい!」 未夢「次の日は、図書室で勉強してたんだったかな」 未夢「毎日何か新しい事でドタバタしてたけど、休息の日って感じだったよ」 未夢「たまにはお休みも大事だよね。疲れちゃうし」 彷徨「…」 未夢「建国記念日の日も、祝日だってすっかり忘れてて、棚からぼたもち的休日だったよ」 日本の祝日を忘れるなんて、いけないやつだな。 未夢「そ、そうよ。悪い?別にたまに忘れることだって、あるんだからね」 未夢「でも、休みの日の次の日に一緒に遊園地行くって約束したあの日は、寝る時とてもわくわくしてたよ」 未夢「遊園地の日は楽しかったね」 未夢「彷徨とプリンとかぼちゃスープ交換して食べたり飲んだり」 未夢「コーヒーカップに乗ったら、体が横に動いてたね」 未夢「メリーゴーランドで、連結した時はびっくりしたよ」 未夢「ジェットコースターは怖かったよ。心臓置いてかれると思ったよ」 未夢「お化け屋敷は怖かったけど、彷徨と一緒で楽しかった」 未夢「あとは観覧車に乗って…」 未夢「…」 未夢「良い思い出だね。ね、彷徨」 彷徨「…」 未夢「次の日は実は、彷徨に上げるためのチョコづくりがんばってたんだぞ」 未夢「材料とか用意して、意外と大変だったよ」 未夢「初めてのチョコ固め直しも、簡単なようで大変だったっていうか」 未夢「でも楽しかったよ」 未夢「彷徨に手作りあげられるんだって思ったらさ」 未夢「いつも一緒に居るけど、やっぱ、実際にチョコ上げる時は緊張したんだからね」 未夢「ね、あの時のチョコ、美味しかった…?」 彷徨「…」 未夢「…あの後は、恋人らしい事したいっていうからさ、びっくりしたよ」 未夢「それからは、将来の事、よく考えるようになったよ」 未夢「進路のこともそうだけど、彷徨との将来も…」 未夢「わたしね、彷徨に会えて良かったよ」 未夢「彷徨はね、普段はぶっきらぼうでムカつく感じのやつだけど」 おいおい、そうなのかよ。 未夢「えへへ。でもね。とても信じられるんだ」 未夢「彷徨は、変な事はしないっていうか」 未夢「あ、今、えっちなこと考えたでしょ。彷徨のハレンチ」 未夢「でもね。いくじなしとかは思ってないよ。むしろそれはわたしかも」 未夢「それに、さ。うれしいんだ。彷徨と考えることが同じだったとき」 未夢「一緒に居て、こうなんだろうなって思ったら、彷徨も同じだったとき」 未夢「わたしね、彷徨のこと、信じられるよ」 未夢「だからさ、彷徨も、わたしのこと、信じてくれるよね?」 未夢「だから、信じていいんだよね?」 未夢「彷徨が戻ってくるって」 彷徨「…」 心の声は、聞こえなかった。 そっか。これが、好きな人をなくす、っていう気持ちなんだ。 そんな、予感だった。 そんな気持ち、知りたくなかった。 ぎゅっと手を握る。 冷たいようで、まだ暖かい。 彷徨と抱き合って寝た時のことを思い出した。 変な事じゃない。ただ、じゃれるように抱き合って寝ただけだった。 仲の良い、兄妹のような。 その時のぬくもりがもう与えられなくなるかもしれないと思ったら、じんと悲しくなった。 そっか。あの、嫌味なようで、実は楽しかった、あの日々は、もう得られないんだ。 そういえば彷徨と喧嘩したまんまだったような。 彷徨が一方的に怒ってただけだった気もするけど。 彷徨の怒ったような顔や、微笑んだ顔が、走馬灯のように思い浮かんだ。 はは。なんでわたしが走馬灯なんだ。 未夢「彷徨…彷徨彷徨彷徨あああーーーーーー!!!」 未夢「うっ、ううっ…」 そのまま泣き崩れた。 何もかも、突然過ぎたのだ…。 ……。 …。 しばらく眠ってたみたい。 今、ひどい顔だろうな。 気付いたら、夕方を越えてた。 辺りに闇のとばりが広がり始める。 夜? そうか、今夜、ママたちがアメリカに行っちゃうんだ。 わたしも、行くはずだった。 行けるはずがない。 よし…ママに連絡しよう。 外へ出た。 未夢「あ、ママ…?ごめん、わたしやっぱり…」 未来『そう…』 未夢「今からじゃどうせ間に合わない。わたし、日本に住むよ」 未来『いいけど、これからどうするの?』 未夢「わたし、もっかい西遠寺に住むよ」 未来『今度は宝晶おじさん、いないわよ?』 未夢「前だって大半いなかったよ。それに、だからこそだよ」 未夢「彷徨を、放っておけるわけないじゃん」 未来『…ごめんなさいね。本当は、今こそ傍に居てあげないといけないのに…』 未来『いい歳してわがままなママを、許してちょうだい』 未夢「…ううん、こっちこそ」 未来『未夢ももう大人だものね。自分で考え、自分で行動できる歳になったんだわ』 未来『しっかりなさい。何かあったら、連絡するのよ。すぐ駆けつけるからね』 未夢「…うん」 未来「家はそのままにしておくから、好きな時に帰ったりしなさい」 未夢「うん…ついていけなくて、ごめんね」 未来『今生の分かれじゃないんだから』 未来『それじゃぁそろそろ時間だから、またね、未夢』 未夢「うん…行ってらっしゃい、ママ」 未来『行ってきます。あ、パパが最後に電話したいって』 優『未夢?ごめんね。パパもついていくことになってしまって』 優『ご飯はちゃんと食べて、ちゃんと寝なさい。インフルエンザとか風邪にも気を付けて』 未夢「うん、わかってるよ」 未夢「パパ、行ってらっしゃい」 優『うん、それじゃ、元気でね』 未来『それじゃあね、未夢』 未夢「うん」 電話は切れた。 強気に何とかするみたいな感じになってしまったけど、彷徨が倒れた今、ママもパパも居ない。 不安だらけだ。 今わたしにできることは、彷徨の回復を祈るだけ。 つまり、何もできない。 なーんだ、そうか、わたし、何にもできないのか。 未夢「ルゥくん…!」 魔法でも使えたらな。 そんな、仕方のないことを思った。