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 ====================================== 将来を考える ====================================== 

どこへ行くの?あの日。

遺影を残せし者 -leaving Memories person-

怖かったけど、一つだけ、適当にドアを開けてみたんだ。
すると、空を見上げている自分がいる?いや、寝っ転がっている。
これは記憶にある、あの日。

これを見てから他のドアを開けると、どれもこれもかしこも昔の自分。
だけど、そこに映るのは自分の影だけだった。
その中にひとつだけ、自分以外の影があった。

 『私も、道を間違えてたんだ』

僕は、道を間違えていたのだろうか?そして今も?
彼女の何気なかった言葉は、僕の心に深くめり込んだ。




…。
なぜかハイテンションで常に落ち着かず情緒が不安定であることを『そううつ』というらしい。
そんな感じかもしれない…。
最近変な夢を見てる。何の夢なんだろう、あれは…。






今日も髪をとく。わたしは長髪だ。
女子は長髪。男子は短髪。
ある程度多くの男性と女性が決め付けたものだ。
男性は男性用のおしゃれを、女性は女性用のおしゃれを。


今日は土曜で休みだけど補習があるから行く。
わたしの場合はなんというか、暇つぶしのようなものだ。
かと言ってホントの暇つぶしな訳ではない。まさに補習だ。
習ったことを補っておく。



烈「お金がなくて元気が出ない…」

烈くんも来てた。

なんだか、ものすごく現実的なことを言っていた。

烈「もしアンパンマンがこんなこと言ってたら、友達の愛ちゃんと勇気くんも絶交ものだね」

確かに。

っていうか、愛は女の子で勇気は男の子なのか。



烈「未夢さんは、ゲームとかやる?」

未夢「ゲーム?うう〜ん、あんまりやってないかも」

というか、やってない。
最近の子よろしく、色々知っているわけでもない。

烈「最近、スロットアプリにハマっててね」

烈くんはポケットをポンポンと叩く。
ケータイゲームのことを言いたいのだろう。
ケータイをあまり大っぴらに出すのは好ましいことではない。
まあ直ぐ特にいけないということじゃないけど、それを考慮したジェスチャーだった。

烈「今から言うのは単なる考察と想像ね」
烈「このスロットゲームは3DSでも出てて、3DSでやってみたんだ」

未夢「ほうほう」

考えてみれば3DSとかブルジョワなもの一切持っていないな。
持っていても宝の持ち腐れかもだけど。

烈「PSVitaにもあって、裏ワザで、リセットからある一定の時間内にスロットをやると必ず大当たりするの」
烈「ゲームセンターにある昔の、実際のスロットゲームを再現しているかのような絶対的確率が存在してて」

未夢「へぇ。正に裏ワザだねぇ…テクですなぁ」

自分で言っていて、何のことかわからないけど。

烈「残念ながら3DSやモバイル版にはこの裏技は通用しないんだけど」
烈「モバイル版をやっているうちに一つ気がつくことがあってね」

未夢「ほうほう。それは何?」

烈「それは、乱数の初期化が、リセット後から一度も行われていないということ」

突然、専門的な話になった気がする。
らんすう?しょきか?
こっちの疑問に気付いて知ってか知らずか、烈くんは少し微笑んで続ける。

烈「なぜそれに気づけたかというと、モバイル版は好きな時に再ロードできるからね」
烈「例えば7が2つ揃った時セーブして、外れたら再ロードして当たるまで繰り返す」
烈「こんなことがモバイル版では可能なんだ」
烈「でもこれを全く同じ条件下で再ロードすると、結果が何回やっても同じ状態で繰り返されるの」

烈「例えば、再ロードして画面が映る前にストップボタンの位置でタップしたまま画面表示」
烈「すると、何回やっても同じことが起こるというもので」
烈「でも、数秒待ってタイミングをずらして同じコマンドをしてみると、結果は違ってくる」
烈「これは内部で乱数の種を時間で初期化しているようなものと考えるべきだね」

未夢「…はあ」

なぜこんな話になって付き合わされてるのかを考えてた。

烈「どのゲームでもそうだけど、乱数は初期化しないと、最初に決めた乱数をそのまま使い続けるんだ」
烈「それは永遠に変わらない」
烈「要するに、ゲームが始まった時のみ、一回だけ乱数の種を決めるのね」

未夢「ふむふむ」

よくわからないけど、話の腰を折らないように先を促した。

烈「3DSの方では、ある状態でセーブし、何回もタイミングをずらした再ロードを行って検証したけど」
烈「出てくる上下の絵、果てまでは揃った時のチャンスの結果でさえ全く同じ結果が毎回出てきたんだ!」
烈「でも、ここでタイミングとは別にストップのパターンを変えてみる」
烈「すると、ストップして表示された絵が変わったりした」
烈「どうやら違うコマンドを行ったときのみ乱数を初期化しているみたい」

未夢「へぇ〜。そうなんだ」

烈「ゲームは昔は大体ファミコンやスーパーファミコンが大多数で作られてたけど」
烈「今ではPSVRやXBOXONEやNスイッチ」
烈「でもポケットもののアプリは大体がPSVitaや33DSで作られているのが現状」
烈「今回はスロットゲームを例にとったけど、ケータイに移植してリメイクしているとは言え」

烈「作り方、乱数の扱い方まで変えるというのはいかがなものかね?」
烈「まるで初心者が作ってて乱数の初期化を忘れたかのようなもの」
烈「まぁ実機、コンシューマでやれば、全く同じ時空間の繰り返しなど永遠に不可能だし」
烈「どこでもセーブで乱数があったなんてわからなかっただろうから」
烈「別にいいといえばいいけど、PSVitaの件ではある意味大失敗だったともいえるかもね」

未夢「要するに、作り方が乱雑であったと」

端折り過ぎたかもしれないけど、わたしの頭でまとめられるのはこれだけだった。
烈くんは首を縦に振って続ける。


烈「モバイル版では100%当たる方法や簡単大当たり方法が2個もあって夢のようだけど」
烈「それを知っていると超つまらないクソゲー状態…」
烈「裏ワザとは意図的に作られたバグというけど、乱数の固定があるとはびっくり」
烈「モバイルだとこんな裏まで想像できるんだよね」
烈「ある意味面白いねーって話」

烈「でもなんというか、私はやるより作りたい方かな」
烈「実際、ネットに落ちているフリーのゲームのソースなんかを見たりして思ったりしたのです」

未夢「ソース?」

烈「ああ、ゲームの基っていうの?プログラムってやつだよ」
烈「見てみると、コメントとか暗号の解説とかないから全然わかんない」
烈「というか、英語ばっかりだから、英語わかる人はそういうのいらないからかな?」

わけのわからない英語のパスワードの羅列が思い浮かんだ。

烈「PS2,3,Pや3DS、Nスイッチなど現在進行形はともかく」
烈「もう絶版となってしまった過去機については、フリーソフトとして認められても良いんじゃないかな」
烈「とちらっと思っちゃったよ」
烈「ある人が掲示板でゲームクレクレ君状態でしたが」

未夢「それ、烈くんとか?」

烈「違いますから!」

泣きながら手をパーにして体を引く。

未夢「あっはは。冗談だよ」

烈「そんなひどい」
烈「まぁ、やっぱりみんな学生はお金ないとかいって、気持ちはわかるけどね」
烈「有意義なものが無料で手に入れられるから、感謝の心が薄くなっちゃう」
烈「作る方はみんな、苦労して細々調べながらやってるのにね」

未夢「へぇ」

烈くんにしては、そんな考え方もできたのかと思ってしまった。
失礼だったかな。思ってるだけで口に出さないなら良いだろう。
烈くんを見てると彷徨じゃないけど何故だか、からかいたくなる時がある。
隙だらけというか、なんというか。
逆に、彷徨から見たわたしはそんなだったのかもしれないけど。

烈「なんにしても、ゲーム作るなら完成させるには時間をかけないとね」
烈「調べ方がおかしいのならば回数と時間をかけて普通に戻さねば」
烈「できる人と比較してロスはあるだろうけども、努力すればそんな時間はなんでもないはず!」

未夢「おおー。がんばってね」

烈「ってことで検定めっちゃがんばってましたが、無理!!」

未夢「あれ」

なんだかいきなり挫折的なセリフが。

烈「この前検定受けてたんだけどね」
烈「地図資料作成のところでどうしてもつまずく」
烈「自慢じゃないけど、作るの遅かったんで予想できたことだけどこれどうしたものか」
烈「特に曲がり道が作れない。4分の1ドーナツの作り方がわからん!」
烈「だれか助けてくれやがれ!」

未夢「あはは」

補習が終わって、この前検定受けてた人の結果が返ってきた。

烈「と思ってたら検定初段受かったああ!」
烈「なんかめっちゃ嬉しいんですけど!」
烈「ついでにエクセル初段も受かりました」
烈「こいつはVLOOKUP知ってれば楽勝」

未夢「すごいじゃない、良かったね、烈くん」

烈「ありがとうございます!」

やたら嬉しそうだった。



============================================================================================

烈「ふむ…なかなか魅力的な和娘だ」

可菜「あらやだ、ダンディなおじ様ったら。誘ってらっしゃるんですか?そんな物騒な牙して」

烈「ふむ…、小娘ながらどれほどの力を持っているのか、悟らせてもらってもいいかな?」

可菜「嬉しゅうございます。それでは、たっぷりご堪能あれ」


烈「小娘がちょこまかと…」

可菜「まだまだこんなものじゃありませんよー!」

烈「だが…詰めが甘い!」

可菜「!!」

どかーん。


可菜「やられました〜…」

烈「ふむ…今のを食らっても少々の傷で済むとは…君は一体何者だね?ただの小娘ではないな」

可菜「あらいやだ、私は単なる小娘でございますよ?」

烈「はっは。これは面白い。今日のところは引き上げるよ。後々の楽しみのためにな…」

琥珀「またいらして下さいね、ダンディなおじ様」

ひょい。

惠「はい、没収」

烈「ああっ。ちょっ」

可菜「あー」

惠「学校にPSVita持ってきちゃいけません!」

烈「えぇーっ」

可菜「惠ちゃんのいけず」

惠「いけずじゃないの!ちゃっかり仲良くゲームのキャラになりきってたし」

烈「ちぇー」

可菜「でも、なんだかとっても楽しかったです」
可菜「それにあのダンディなおじ様…私の好みだったかも」

惠「はいそこ!続けない!仮想世界から抜けなさい!」

惠「まったく。来てみて何やってるかと思えば。未夢も止めなよ」

未夢「いやー、見ててなんか面白そうだったしー」

惠「…あー…未夢の性格だとそうなるわな…カオスになるわけだ」
惠「まったくもう」

PSVita出すのを止めなかったわたしも良くなかったけどね。
けど、二人の夢中で楽しそうな姿に水を差すことができなかった。
夢中になれるものがあることはいいことだ。見ていて楽しいし、羨ましかった。


補習は午前中だけで終わり、図書室に来ていた。
烈くんもついてきていて、図書室で可菜ちゃんと遊びだしていた。
そこで、惠ちゃんがわたしたちが来てないか見に来たところだ。
惠ちゃんも部活で学校に来ていたみたいだ。今はお昼の休憩時間なのだろう。

わたしはケータイでニュース読んでたりしてた。

どっかの女子高生さんがブログにバイト先での悪事を自慢して逮捕されてたりしてた。
どっかの映画女優さんが失言して大失態してた。
道徳の欠如…。
自分も知らず知らずのうちにそういう失敗はしてるかも。
掘り返されたら危ないかも。気をつけないとね。

『ムシャクシャしてやった。今は後悔している』

とある事件の発起者がそうコメントしていることが多い。
ムシャクシャしすぎだよ…。
でもこういうのを何度か見てると、内情がどうであれ表に出る時は、結果的に理由はそういうものが多い。

たとえば20数年間親との小さな確執があったにせよ…。
もし犯罪を犯してしまえばその理由としては『ムシャクシャしてやった』としかいいようがない。
数十年の恨みだの何だのってのは、ただの言い訳になってしまう。
最悪、言い訳にすらならない。ただ、悪いことを甘く許して欲しいと乞いてるだけになってしまう。
やった方からすれば、そうして苦しみから解放されるのだろうけど。

でも、これは絶対にやってはならない。選んではいけない選択肢。
他の道を選ぶべきだ。
犯罪の勇気より、逃げる勇気を育てるほうが大切だ。
逃げるほうが簡単なのに、なぜ反逆攻撃行為に出るのか。
逃げるのは難しいということか。
烈くん風に言うなれば、ラストのボスからは逃げられないといった感じか。

まあ確執がある人同士なら、こっちに迷惑かけない程度に勝手にやってくれって感じ、という人もいるだろう。
だけど、無差別殺人だと勝手にやってくれとも言えない。
勝手に殺されたらそれこそ命が何個あっても足らない。



惠「なぁ。トイレの紙少なくなったらどうしてる?」

可菜「はっ、ばっ、何言ってるのよ、何に使う気よ。どうだっていいでしょ、そんなこと」

惠「いいから答えろ〜!」

可菜「惠ちゃんのヘンターイ」

惠「なんか違うこと考えてるだろ!トイレの紙少なくなったら変えてるかって聞いてるんだよ!」

可菜「えー。別に、普通に交換とかするけど?」

惠「うちの部のやつが何故かその辺敏感で問題になってるんだよ…」


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みんなが雑談してる傍ら、考え事してた。

遠い将来、一人虚しくなったとき、なんのために生きるのか。生きたのか?
そう考えるのではないか。

明日も明後日も日曜日。
そんな生活が、果たして幸せか。

ただ、何かに一生懸命になりたい。
世間の人はどうしているだろうか。
やりたいことを趣味として生きているか。
嫌なことを我慢しながら生きているのか。
おそらく、やりたいことを仕事として生きている人の何倍もそういった人種はいるだろう。



過去、子供の頃から、将来なりたいものになるようにがんばりなさいと大人に言われ続けた人は多いだろう。
なりたいものになれた人はどれほどいるだろうか。
何になりたいかわからない、なりたかったとしてもたいていは第2希望のものになり下がっただろう。

夢をかなえたとき、それが夢通りでなかったら怖い。
わたしはそう思った。
だけど今は…やりたくない仕事を続けたら、きっと将来自分より若い人に能力を抜かれるだろうと思う。
わからぬ夜道を彷徨い、餓死することのない国で餓死することになるのではないか。
そう考えたら、怖くなったのだ。




転職すれば、出遅れはしても戻ればまだ生機がある。若ければまだ間に合う。
だけど、ご飯を食べるためにさえ一生懸命になれずに20数年間生きた人間が。
やりたいことなら一生懸命になれるとでもいうのだろうか?

なれるというのが大多数が思いたい希望だろう。
現実を見据えて冷静に考えるならば、答えはノーだ。
でも少しでも不器用な人間がすがれ、生きるために夢中になれることと言えば…
己のやりたいことしかない。


世に役に立たないものは生きるべきではないという、言葉に出してはいけない言葉がある。

生きる権利がなくても役に立たなくてもいい…
ただその生物が、大自然という神に生命を与えられ、世界に居ることを許されたとしたら。
醜く、足掻きながら、その生にしがみついてもいいと思うのだ。

もはや動物や虫のような、子孫を残すとか存在した証を得たいなどといった本能に近いものがあったかも。
だから人は、結婚しないような人でも子孫を残したがるのだ。
せっかく与えられた生命を、何かを残したい…
人でなくても、この世に出でたものは、みなそう思うものなのだ。


何のために生きるのか…
生きるために生きるのだ。
困った時は直観と感情で行動。
作り話の言葉であるが、作り話とは元々人間の心理や根から生み出されたもの。
その根に偽りの気持ちはない。ある意味、道しるべともなりうる言葉かもしれない。


こんなことを思うのは、自分自身を信頼できていないからだと思う。
だから、わたしは、己を信頼するために…生きるためにやりたいことに、走っていく。
幸せ、不幸…考えるのはそのあとだ。








人が夢を諦める時や挫折するときは、どんな時なのだろうか?
なぜ挫折してしまうのか?
やりたい方向へがんばる事が、嫌なことをがんばることよりも嫌なのか?
嫌なことなら、がんばらなくてはいけないという負があっても妥協できるからなのか?




やりたい事というのは、おそらくやりたい時にしか行わないものだろう。
いや、気分転換という意味では嫌な気分の時でもやるだろう。
けど、いくら好きでも、一時的に飽きたなら無理にやろうとは思わないだろう。
嫌なことなら無理にやらされても元々嫌なので負に対する倍数は大した事がないのだ。

だけど、やりたい事が嫌なことになる瞬間は、とてつもない負。
いやな事が1で楽しいことが10としよう。
とても嫌になるという状態が、マイナス状態になることだとする。
嫌なことからとても嫌なことへは、負数は少ない。
しかし、楽しいことがマイナス状態になるとしたら、その負数は大きい。

おそらく、夢追い人はこれが怖いのだ。
これが正しい解かどうかはわからないが、自分なりに考えて導き出した一つの解だ。
こういうことから、やはり人は精神的に弱いのだと思う…。
正常であるほど弱い。異常なら先の定義は何らかの理由で覆されるかもしれないが。


夢追い人は、進みたい方向への信じる心を強く持たねば。
決して甘い道では、ないだろう。
思いついた頃は目標ではなく、夢という雲のような存在なのだから。
それを目標としいつか叶える為に。
意味ないと思われるかもしれない自分のいくつもの目標の壁を乗り越え…
いつかその先に、辿りけば。

未来では、毎日きっと心から笑っていられるだろう。


高校に無事入ることができた。

これも、彷徨からの、日々何気ないメールのおかげで精神支えられたからこそ。

今まで本当にありがとう。
よかったらこれからも側にいて。
居させてください。


だから、もし彼が死ぬようなことがあるなら。
必ず生き返らせる―――。
呼吸が止まったなら人工呼吸で、手術で。そんな感じ。
血が足りぬのなら違う血を混ぜてでも生き返らせる。
無理でも。神様に逆らってでも。
わたしのカミサマは、彷徨なんだから。


惠「んー?未夢、どうした?ぼーっとして」

未夢「なんでもないよ。将来の事とか、どうでもいいこととかぼーっと考えてただけだよ」

惠「将来のことはどうでもよくないだろ」

未夢「将来の事と、それと関係ないこと、かな」

惠「そうか。お前ら昼はどうすんだ?」

可菜「私はもうすぐ帰ろうかな」

烈「私も帰るよ」

惠「未夢は?」

未夢「わたしも帰るかな」

惠「そっか。あたしは残ってくよ」

未夢「部活がんばって」

惠「おう!じゃーな」

可菜「バイバイ」




烈「内田さん、ゲームやるんだね」

可菜「ちょこっとね」

烈「じゃぁ、あれはやる…?えーとね…」

彷徨「あ、未夢」

未夢「彷徨」

横で二人が雑談してるところ、彷徨を見つけた。
というかちょうど同時に声をかけあった。

可菜「あら、西遠寺くん」

彷徨「未夢、来てたのか」

未夢「うん。彷徨は部活?」

彷徨「ああ。でも今日は午前中で終わりだ」

可菜「ああー、私急用を思い出したわー」

烈「私も、特急列車に乗る用事が!」

どんな用事だ。

可菜「と言う事で、紅瀬くんダッシュよ」

烈「ラジャー!」

どひゅーん。

ライオンを見つけた鹿のように、突然ダッシュして逃げて行った。

彷徨「なんつー気の使い方だ…」

未夢「あっはは…とりあえず、一緒に帰る?」

彷徨「そうだな」









??「おっ、彷徨と光月さんじゃん!」

未夢「?」

彷徨「ん?」

未夢「あっ」



彷徨「三太!」

未夢「あーっ!久しぶり!」

三太「久しぶり!二人とも元気で何よりー!」
三太「なんで二人とも制服?今日土曜日なのに」

彷徨「俺は午前中部活だよ」

未夢「わたしは、補習だよ」

三太「補習?光月さん成績悪くなかったよね」

未夢「自由に受けられるから、時間あったし、完璧にしておこうと思って」

三太「そうなんだ。彷徨は相変わらず部活かー」
三太「『でも実は未夢が終わるまで待ってただけの口実なんだ』」

彷徨「おい」

三太「未夢ーちゅっちゅー」

ガン。

三太「痛ってーなー、何すんだよ彷徨ー」

彷徨「お前が未夢の前で馬鹿なこと言うからだろ」

三太「えー。本当のこと言ってただけなのにさー」

彷徨「もっかい殴られたいか」

三太「やーん、彷徨のDV〜」

彷徨「…」

未夢「相変わらず、仲良いね」

彷徨「そうか?」

未夢「そうだよ。いきなり殴るなんて友達じゃなきゃできないもんね」

三太「うーん、光月さん、それはちょっと違うかな。俺痛いだけなんだけど」

彷徨「そうだよ、友達じゃなきゃ殴れないもんな。もう一回殴らせろ」

三太「なんの友達だよ!」

彷徨「…それにしても久しぶりだな」

三太「そうだなー。彷徨あれから全然連絡よこさないしな」

彷徨「お前もじゃん」

三太「そうなんだけど、なんかな。昔は用事なくても会ってたのにな」

彷徨「そうだな」

三太「それが、大人になるってことかもしれないな」

彷徨「いいんじゃないか?別に、用事なくても会ったって」

三太「それなら彷徨連絡よこせよー」

彷徨「三太こそ」

三太「…ふっ」

彷徨「…ぷっ」

三太「あっはっはっは」

彷徨「ははは」

三太「じゃー俺そろそろ行くわ」

彷徨「ああ」

三太「光月さん、オジャマしてごめんねー」

未夢「いやいやそんな。三太くん元気でね」

三太「彷徨、末永くお幸せにー」

彷徨「そりゃ結婚した時の挨拶だ…」

未夢「? 彷徨?」

彷徨「…どっか寄ってって昼飯でも一緒に食べて帰るか」

未夢「…うん!」

=======================================================

久しぶりに遊んだ。
お昼を食べた後、ゲームセンターでUFOキャッチャーしたり。
アームってあんなに弱かったっけ?お小遣いたくさん使ってしまった。
帰りは買い物に付きあった。
その流れで荷物一緒に持ってきたから西遠寺まで上がって来てしまった。

彷徨「もうこんな時間か。夕飯食ってくか?」

未夢「うーん、そうだね」
未夢「ママに電話しとくよ」
未夢「…あ、ママ?今日ね、彷徨んちで夕ご飯食べてくよ。うん、うん…わかってるって、じゃーね」

彷徨「未来さん、なんだって?」

未夢「うーん…」

あんまりいちゃついちゃダメよ、だった。
たまにイチャつけと言ったりどっちなんじゃい。

彷徨「未夢?」

未夢「な、なんでもないよ、わかったーって」

彷徨「そうか」

未夢「夕飯、何にする?」

彷徨「うーん、買ってきたカボチャでいいんじゃないか?」

未夢「またカボチャ…彷徨んち来るとカボチャしか出ないんですが」

彷徨「なんだよ、悪いか?いいだろ」

未夢「いいけど…カボチャ料理しか上手くなってないよ」

彷徨「俺は嬉しいけどね」

彷徨がやたら笑顔になったので、どきっとした。可愛いやつめ。

未夢「カボチャって言ってもただの甘い芋でしょ」

彷徨「芋じゃねーよ。立派な瓜類だ。一緒にすんな」

未夢「じゃぁ肉じゃがじゃなくて、肉カボ?でいい?」

彷徨「だから芋じゃねーって。でも美味そう」

未夢「いいんじゃないのよ」
未夢「でも味付けは、どっちかっていうと肉じゃがより生姜焼きのイメージかな」

彷徨「未夢にしてはいいアイデア。早く作ろうぜ」

未夢「にしてはって何よ」


今更だけど、彷徨んちの台所は広い。
二人並んでもそんなに狭くない。
普通の一軒家だから、それなりの広さだ。
わたしんちの台所も普通に広いけど。

わたしはもともとそんなに料理得意じゃなかったけど、彷徨が得意だった。
彷徨につられて、わたしもどんどん上手くなっていった。
…大半カボチャ料理だったけど。
カボチャの味噌汁、カボチャのプリン、普通にカボチャ、カボチャの卵焼き、カボチャのグラタン。
カボチャのスープなど、カボチャでできそうなことは何でもやった。
たまにカレーなんかにする時は、カボチャを隠し味に使うとかもやったりした。
彷徨がカボチャ好きだって暴露する前は、魚とか普通のご飯だった気がするけど。

彷徨「お、今日の味噌汁はカボチャじゃないのか」

未夢「彷徨、カボチャ版ばかり作ってるから。普通のも美味しいよ」

彷徨「俺はカボチャ版の方がいいんだけどなぁ…」

未夢「もう…そんなことばかり言ってたら、舌がカボチャになっても知らないからね」

彷徨「はは、なんだそれ」

今日のご飯は、なんていうんだろ、豚肉のカボチャ和え?
味付けした豚肉に、生姜焼きのように、崩したカボチャを一緒に添えた。

彷徨「おお、これいいな」

未夢「うん、美味しいかな」
未夢「こんな料理、あんまり外で見ない気がするけど…」

彷徨「いいじゃん、我が家専用ってことで」

未夢「あっはは」

彷徨「ああ、そっちのカボチャとって」

未夢「なによ、自分で取りなさいよ」

彷徨「遠いんだって」

未夢「はい」

彷徨「サンキュ、あん」

ぱくっ。

彷徨がそのまま食べた。

未夢「ちょ!彷徨、何してんのよ!行儀悪い!っていうかそれわたしのだったのに!」

彷徨「え?そうだったのか?てっきり持ってきてくれたものだと」

未夢「わたしの移動してから持ってくるつもりだったのよ」

彷徨「じゃぁ俺のもあげよう」

未夢「い、いいわよ、自分でやるから」

彷徨「そんなこと言わずに、ほら、カボチャが落ちる」

未夢「もう・・・あむ。ほい」

しかし、こんなことしてると、ホントに夫婦みたいだ。
それは、3年前をきっかけに、恋人の関係をすっとばしてなった関係だ。
なんていうか、家族だ。苦楽を共にする。


彷徨「ん?どうした?」

未夢「う、ううん、なんでもないよ」

彷徨「そうか。ごくごく・・・」

未夢「あー!それわたしの湯飲み!何してるの!」

彷徨「あれ?そうだったか?悪い間違えた」

未夢「もー!彷徨の不潔ー!」

彷徨「ディスイズアメリカンスキンシップ」

未夢「彷徨、ナメてるでしょ?」

彷徨「口つけただけに?」

未夢「だっれっがっそんなこと言えと言ったか」

アイアンクローをキメた。

彷徨「悪い悪い」

笑いながら謝ってた。



テレビをつけた。適当な番組にして見ながら一緒に食べてた。

彷徨「あっはっはっは」

お笑い芸人がボケてツッコミを入れられてたところだった。

未夢「そういえば彷徨、なんかよく笑うようになったよね」

彷徨「そうか?」

未夢「そうだよ。前はこう…なんていうか、むすっとしてた感じだった」

彷徨「それは今みたいにテレビつけてない時じゃないか?」

未夢「うーん、それもあるけど」

彷徨「はぁー食った食った。ごちそうさま」

未夢「お粗末様」

わたしはもう完食してた。
けど彷徨が欲張っておかわりするから、量的に遅くなってた。
食べるスピードはそんなに遅くないんだけど。

彷徨「未夢、先に風呂入ってこいよ。皿洗いはしておくから」

未夢「え、そんな悪いよ」

彷徨「一応、お客様だからな」

未夢「…そう?じゃぁお言葉に甘えて」

彷徨「ああ。湯船張ってある」

未夢「いつの間に」
未夢「見ちゃダメだからね」

彷徨「お約束の台詞だな…ああ、見ないよ」

未夢「…うん」

彷徨は、わたしを見たいとか、思ってくれないのかな?

彷徨「ちなみにここは俺んちだから、いつどこに現れても自由だからな」

未夢「!! 覗く気満々じゃないの!」
未夢「来たら、シャンプー入れた注射器で注すからね!」

彷徨「血管内が泡だらけになるわ!」

全く、見られたいとか見られたくないとか、バカみたい。



はぁ。
湯船に浸かってゆっくりだ。
緊張感の欠片もない。むしろリラックスしている。
他人様の家なのに。

まるで、別荘の扱いだ。
今考えると、たった1年だったんだな。

でもその一年は、とてつもなく長く思えた。
その一年が、わたしの人生を変えてしまったのだ。

露と消えてしまいそうな儚い夢のようでもあった。
日常の喧騒にかき消されて消えてしまいそうで、でも奥に色濃く決して消えない記憶だ。
今はもう居ない、この手の中に居た存在は、今どうしてるだろうか。
地球の時間で換算したら、今頃は七五三のお祝いをしている頃かも。
幸せに暮らしていてほしい。

未夢「…ルゥくん」

口にすることで、過去の記憶の中のことが、現実だったんだと再認識した。



未夢「彷徨ー、お風呂ありがとねー、あがったよー」

彷徨「おー、こっちも皿洗い終わったところだ」
彷徨「じゃぁ俺も風呂入るかな」

未夢「え、まさか彷徨、わたしが入ったお湯に浸かるの?」

彷徨「え?そうだが…」

未夢「馬鹿ー!彷徨の変態ー!」

彷徨「なんだよ、いいだろ、湯船張りかえるのめんどいし」

未夢「ちょっとはデリカシーってものをね…!」

彷徨「わかったよ、湯船浸かるのは今日は我慢するよ」

未夢「別にそこまで言ってないけど…」

彷徨「どうしろってんだ…」

未夢「ゆ、湯船張りかえればいいじゃない」

彷徨「時間かかるじゃん」

未夢「それぐらい待ちなさいよ」

彷徨「仕方ないな…待ってる間冷えたら未夢のせいだからな」

未夢「それは湯上りした後の湯冷めとかの時に言いなさいよ…」

彷徨はお風呂のお湯を張り替えに行って、しばらくしたら戻ってきた。


彷徨「待ってる間、宿題でもして勉強するか」

未夢「あ、それいいアイデア。彷徨、写させて」

彷徨「なんでだよ。シチュエーション的に普通逆だろ」

未夢「何がよ」

彷徨「いやだから…なんかもー説明するのも馬鹿馬鹿しい」

未夢「馬鹿って何よ」

彷徨「なんでもないよ…ほら、どこかわからないところあるのか?」

彷徨は勉強も運動も料理もできる。思えば完璧じゃないか。
まぁ性格は、最初キツイと思ったけど…ただ不器用なだけなんだと思う。
お母さんがいなくて育つと、男の子ってそうなるんだろうか。

彷徨「もうそろそろお風呂沸いたかな。入ってくるわ」

未夢「うん、入ってらっしゃい」

彷徨「覗くなよ」

未夢「覗かないわよ」

彷徨「…なんかずるいよな。女が覗かれたらわーきゃー事件になるのに、男は見られ損じゃないか」

未夢「だから、覗かないから」

彷徨「へいへい」

彷徨はここで脱ぎだした。

彷徨「だー!ここで脱ぐな!部屋で脱ぎなさい!」

彷徨「もーあーだこーだうるさいなー。俺の家なのに…」

未夢「客人が来てる時ぐらいちゃんとしなさいよ」

彷徨「未夢だからいいよ別に」

未夢「う、うーん…」

なんというか、嬉し悲しというか。
彷徨がお風呂に入ってる間、今日の補習で出た宿題の部分は、予習となる部分だ。
数学の三角関数。
これは、脳の訓練だ。
三角関数それ自体が直に何らかの役に立つのは、数学者にでもならない限りないだろう。
でもこれをできるかどうかで、物事の考え方や応用ができるかを図る指標となる。

未夢「うーん…」

わからん。
徐々に集中力が切れてくる。
集中しようとする心と、つまらなさが闘っていた。

とりあえず全部埋めたけど、宿題とはいえ補習のものだ。
本来はやらなくても成績には直結しない。
けど予習としてやっているなら、埋めるだけならあまり意味がない。
その内容を理解しなければ。

彷徨「上がったぞー」

未夢「あれ、意外と早かったね。烏の行水?」

彷徨「長々入ってたらのぼせるだろ。宿題はできたか?」

未夢「宿題っていうか予習になるけど、何とかね…」

彷徨「あ、もうこんな時間かよ…」

見たら9時を過ぎてた。

ウソ!?まだ7時位かと思ってた。

西遠寺に着いたのは夕方くらいだったけど、夕飯の用意で思ったより時間が過ぎてたみたいだ。


彷徨「今日はもう泊まってくか?」

未夢「うーんそうだねー」

なんか、また外に出るのが面倒くさくなってしまった。
もう日は沈んでるし、この寒い夜空の中をまた歩くのは億劫だ。

未夢「じゃぁそうさせてもらおうかな」
未夢「でも」

彷徨「でも?」

未夢「考えてみたら、彷徨、なんか策略っぽくない?」

彷徨「何が」

未夢「昼飯一緒しないか、夕飯食ってくか、夜泊まってくか」
未夢「流れるようにつられちゃったけど…彷徨なんかやらしーことするんじゃないでしょーね」

彷徨「なんでだよ…一応聞いてただけだし、未夢も乗ったろ」

未夢「ま、まぁ確かに…」

彷徨「それとも、なんかした方が良かったか」

未夢「! な、なにいってるのよ!」

彷徨「健全な高校生らしく」

未夢「不潔の間違いでしょ!」

彷徨「いやいや」

未夢「もー馬鹿なこと言ってないで、さっさと寝るよ!」

彷徨「はいはい」

未夢「その前に、いちおーママに連絡しとくよ」

彷徨「ああ、未来さんによろしく」




未夢「あ、ママ?西遠寺でご飯食べてたら遅くなっちゃって…」
未夢「明日は日曜日だし、今日は西遠寺で泊まってくよ」
未夢「え?あ、う、うん、大丈夫…うん、うん、え?…」

未夢「はい」

彷徨「? 俺?」

未夢「ママが、彷徨と話したいって」

彷徨「はぁ」

彷徨「お電話変わりました、西遠寺です」

彷徨「あ、はぁ、ご無沙汰してます。はい、はい…はぁ」

ママったら何話してるんだろ。

彷徨「あ、はい、いえ…わかってますよ、はい、お休みなさい…」

彷徨「切れた…」

未夢「ママ、なんて?」

彷徨「なんでもないよ」

未夢「なんでもないってことはないでしょ」

彷徨「なんでもないってことはないってことはないんだよ…」

未夢「どっちよ」

彷徨「俺もわからん」

未夢「…」

彷徨「…」

未夢「ぷっ」

彷徨「ははは」

彷徨「じゃぁ俺はもう寝るぞ」

未夢「でも寝る時間には少し早くない?明日日曜日だし、もう少しゆっくりしてもいいんじゃない?」

彷徨「湯冷めしちまうだろ。ここは階段の上だから真冬のそよ風は冷たい」
彷徨「電気消して布団の中で小説読んでればそのうち眠たくなるさ」

未夢「電気消したら、小説読めないじゃないの…」

彷徨「スタンドはつけておくんだよ。ほら、未夢も冷めるぞ。お休み」

そういうと、さっさと部屋に引っこんでしまった。

未夢「何よ…」

別に、何かしたいことがあったわけでもない。
ただ、一緒に話をしていたかった。それだけ。

わたしも、かつて自分の部屋だった場所に行って、寝床の用意をした。
…静かだな。
こんな広く静かな家で一人。
…寂しくない?
彷徨はこんな環境で育ってきたんだ。
それがいつものことなら、それが不思議には感じなくなるのかもしれない。

未夢「あれ?そういえばおじさんは?」

彷徨にメールした。

『なんでメールなんだよ…来いよ。親父はたまにどっかにふらっと出かけて戻ってこないよ』

彷徨と二人きりだったのか。
なんというか、昔ほど顔が熱くならない。なんでだろう?

『勝手に部屋に入ったら怒るでしょ。そうだったんだ』
『ノックすれば怒らないよ』

それっきりメールは止まってしまった。
というか、なんて返せばいいかわからない。
会ってたなら、文句の一つでも即行で返してたかもしれない。
けど、文字だと、彷徨はあまりいじわるじゃない。
続けようがなかった。
張り合いがないとでもいうのだろうか。
簡潔過ぎている。
今までも夜はたまにこうやってメールをした。
向こうは何とも思ってないかもしれないけど。
わたしはもっと彷徨と話していたかった。

しばらく経ったけど、眠くならなかった。
なんていうか、いつもより時間が早いからだと思う。

なんとなくトイレで用を済ました。
部屋に戻ったけど、眠れる気がしなかった。
てゆーか寒い。ここは外に直結している。

枕を持って部屋を出た。
彷徨の部屋をノックする。

彷徨「ん?どうぞ」

スッ。

彷徨「どうした。泥棒でも入ったか」

なんか、時代劇の殿みたいな座り方してた。

未夢「そういうわけじゃないけど…眠れなくて」

彷徨「俺んとこに来ると眠くなるのかよ」

未夢「眠くなるまでお話でもしようかと」

彷徨「修学旅行じゃないんだから」

パタンと小説を閉じた。

彷徨「で、何の話をするんだ。怖いもの話か?」

未夢「なんで真冬にそんな話するのよっ」

彷徨「いいから、そんなとこに突っ立ってないで、こっちこいよ。風邪引くぞ」

未夢「う、うん。彷徨は布団に入らないの?」

彷徨「そうだな。ちょっと冷えてきたから入るかな」

未夢「あ、待ってて、枕だけじゃなくて布団持ってくるよ」

彷徨「やれやれ」

未夢「お待たせ」

夜にどたばたしてしまった。夜中と言うほどではないけど。

未夢「なんか、修学旅行みたいだよ」

彷徨「俺もう眠くなってきたから寝るぞ…」

未夢「待ってよ、わたし来たばっかりじゃないの」

彷徨「知らんよ…」

未夢「こらー、彷徨、寝るなー」

彷徨「無理言うなよ…」

未夢「もう…」

わたしも結局布団に入った。

未夢「ねぇ、彷徨」

彷徨「うん…?」

未夢「そっちへ行っても、いい…?」

彷徨「…」

彷徨「ああ」

密接した布団から横へ入り込み、彷徨の布団に入った。

未夢「彷徨の布団、暖かいね」

彷徨「…」

彷徨はもう寝たのか、無言だった。

未夢「…」

しばらく無言だった。

これじゃ何しに来たのかわからない。

今はお互い背中合わせで寝ている。

すると、彷徨が寝返りをうってきた。

彷徨が、わき腹から手を入れてくる。

未夢「ちょっ、彷徨っ…」

彷徨「んー…?」

寝ぼけてるのか、しばらくみじろぐ。
しばらくすると止まった。
なんか、抱き枕の抱き具合を調べているような感じだった。

未夢「か、彷徨、腕、しびれない…?」

彷徨の腕はわたしのお腹の下敷きになっていた。

彷徨「大丈夫…」

寝言なのか意識があるのかよくわからなった。

と思ったら、お腹を揉んできた。

未夢「ちょっ、うっ…あっはっはっは…」

彷徨「なんか目が覚めてきた」

未夢「ちょっと、何すんのよ…うわあはっは…」

彷徨「ほれほれー、ここがええのんかー」

未夢「彷徨、わたしで遊ぶな…っ、あっは…」

しばらく擽られて弄ばされてた。

未夢「はーっ、はーっ」

笑い疲れてた。

未夢「もー、いー加減に、しろっ、お返しだっ」

彷徨のお腹を揉んでやる。
がっちりした肌だった。
確かに揉んだけど、なんかくすぐった実感がなかった。

彷徨「おっと、俺にくすぐりは効かないぞ」

未夢「うそっ、なんでよっ、ずるいっ」

彷徨「何でくすぐったいのか自分で揉んでたら感じなくなった」

未夢「なんの訓練してんのよっ」

これじゃわたしが一方的に不利だ。

彷徨「俺も疲れた。じゃーお休み…」

未夢「だーっ、もー、離れなさいよっ」

彷徨「くー…」

最後に喋った内容は、はっきりしているようで寝言のようだった。
彷徨に後ろから抱きつかれてる。相変わらず手はお腹の下にある。
…どーせいっちゅうねん。
わたし、身動きできないんですけど。
でも、彷徨の体、暖かいな。
安心する。
潜りこんだ彷徨の手を取り、組むように握ったら、ふわっとした気持ちになった。

向きを変えて、抱き合うように背中に手を回した。

未夢「彷徨、ありがとう…」

彷徨「…ん〜…」

寝言のような、返事だった。

安心したら、わたしもいつの間にか眠りに落ちていた。