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 ====================================== 図書室の森 ====================================== 

【背景:暗闇 BGM:なし】

未夢「・・・」

ふと目が覚めた。今は何時なのだろう。
今わたしは布団の中に包まっている。
別にここは極寒の地、というわけではない。
だけど日本で一番寒い月に当たるといわれている時期、やはり寒い。
頭さえもすっぽりと掛け布団の中に隠しながら、手だけを布団の中から出した。
冷たっ!
暖かさは布団の中だけで、外の世界・空気はまるで凍り付いているかのよう。
思わず手を布団の中に引っ込めたけど、何の決意か、時計を探すため再び手を外に出す。
外から見たらきっと、暗闇の中で布団から生える手に見えるのだろうか。
その正体が自分であることをわたしはわかっている。
ホラーは大っきらいだけど、今回その根源はわたしだから、なんとなくおかしく思った。
目のない手が感触を頼りに時計を探す。
時計の感触があり、手に取ったものを布団の中に引きずり込んだ。
自分で言うのもなんだけど、カイブツみたいな行動だ。
手に取ったものは求めていた時計。
暗闇の中でも光るブラックライトを点したアナログ時計は、6時55分を示していた。
目覚ましが鳴る5分前のようだ。
寒いしまだ寝ていたいけど、今日はなぜか目に眠気もなく、別に頭に疲労なども特にあるわけじゃない。
起きよう。わたしは時計の目覚まし機能を止め、掛け布団から体を起こした。

【背景:未夢の部屋(暗い)】

未夢「・・・」

何か叫ぼうとしても声が出ない。なんかいつもより寒っ!
と、言うより、空気が冷たい!酸素を吸う鼻や空気に触れた肌がそう感じていた。
きっと青ざめながら固まった顔したんだろうなと自分でも思った。
冷たくなっている絨毯に裸足をつけ、窓に寄ってカーテンを開け放った。
カシャァッ!

【背景:雪の積もった住宅街、SE:carten.wav】

辺り一面銀世界・・・空は薄ぼんやりとした灰色で、降り積もった後か、これからまた降るのか微妙な天気だ。

未夢「どうりで寒いわけだ・・・」

ようやく出た声は、思わず言ってしまうような一言にすぎなかった。

 【背景:リビング】

未夢「おはよう」

わたしはパジャマのままリビングを訪れた。
ドアの中に入ると部屋はほんのり暖かい。

 【立ち絵:未来】

未来「あら未夢、おはよう。今日は早いのね」
未夢「うん、なんとなく目が覚めちゃった」
未来「寒かったからかしら」

 【立ち絵:未来(よそ見)】

ママはそういうと目線を窓の向こうに移した。

未来「昨日の夜中から降ってたみたいね」
未夢「わたしが帰るときもぱらぱら降ってたよ」

 【立ち絵:未来】

未来「そうだったの。積もるわけね」

【立ち絵:未来(カーディガンなし)】

ママは自分が着ていたカーディガンをわたしの肩にかけた。

未来「これを着ていなさい。そのままだと、風邪引くわよ」
未夢「え。ママだって寒いじゃない」

 【立ち絵:未来(笑顔)】

未来「私は大丈夫よ」

根拠はなかったが、ママは笑ってそう言った。

未夢「ありがと」

 【立ち絵:未来】

未来「いつもより早いけど、朝ごはんにする?」
未夢「うん」
未来「いつもよりと言っても、これが普通よね」
未夢「ママっ」

 【立ち絵:未来(笑顔)】

未来「怒らない怒らない」

【背景:リビング】

そういってママは既に用意していたのか朝食を並べた。
こんがりきつね色に焼けたトースト2枚に、ピザ、ウィンナー、チキン、ほうれん草などが机の上を並んだ。
ママが長いアメリカ生活だったせいか、洋食色の雰囲気が漂う。
けど、その中に一つだけ微妙に日本色を忘れられない部分がなんとなくおかしかった。

 【立ち絵:未来】

未夢「ちょっとママ、こんなに食べられないよ。太っちゃう」
未来「今は育ち盛りなんだから、大丈夫よ」

この前と言ってる事違う〜!
前はパパがたくさん作ったのに対しわたしが途中でご馳走様したら、わたしが太ることを気にしてくれていたのに〜。

未来「それにママやパパも一緒に食べるわ。いつもより早いけど」

なるほどそのためか。
ママはエプロンを外し、パパのところに行ったようだ。
まだ寝ているだろうパパを起こしに行った模様。
ほどなくしてパパも起きてきた。

 【立ち絵:優】

優「ふわぁ・・・おはよう、未夢」
未夢「パパ、おはよう。まだ眠いの?」
優「昨日ちょっと夜遅くまで小説に夢中になっちゃってね・・・」
未夢「へぇ・・・」
優「SF物で面白いんだよ。今度未夢にも貸してあげようか」
未夢「うん」

 【立ち絵:未来、優】

優「それにしてもママよく作ったねぇ」
未来「簡単なものばかりよ」

 【立ち絵:未来、優(疑問顔)】

優「台所焦げてない?」

 【立ち絵:未来(怒り顔)、優(疑問顔)】

未来「あ〜またそういう!未夢聞いた今の!?パパがまたいじめるのよ」
未夢「あはは」

 【立ち絵:なし】

いつも目覚まし後の時間に起きているので、普段はどたばたしている。
けれど、目覚ましの時間よりも今日は早めに起きたので、落ち着きながらゆっくり会話したりした。
目覚め時の爽快感が良かった。早く起きても眠気があったら二度寝していただろう。
今日早起きした時間と普段寝坊する時間の差は、10分くらい。
10分なんてぼーっとしてたらすぐだけど、600秒も数えられる時間なのだ。
どたばたした朝に600秒数えられる暇があるだけで、心に余裕が生まれるのだから、明日も続けたいな。
・・・きっと三日坊主だろうけど。

 【背景:玄関】

未夢「行ってきまーす」

 【立ち絵:未来】

未来「行ってらっしゃい。地面が滑るから、気をつけるのよ」
未夢「わかってるって」

 【背景:住宅街】

地面にはしきりに雪が積もっている。
まだ降ったばかりのようで、足跡とか地面が凍りついたり固まったりはしていない。
しゃりしゃり・・・と雪を踏む感触が楽しいのは何故だろう。

未夢「ううー」

でも寒かった。やはり寝起きは体温が低い。
もし北のほうに住めば、雪かきが面倒で今日は暖かいほうだとでも感じるのだろうか。

 【背景:電車】

電車に乗れば押し競饅頭のようになるが、暖かいどころかむしろ暑苦しい。
押されて泣くなとは正にこのことだろう。
でもわたしはなるべく電車の奥のほうに入って座るようにしてるから、あまり扉付近には立ち止まらないのでそうなったりはしない。
みんな扉付近でとまるけど、奥に行くのがめんどくさいのかな・・・。

それにしてもよくもまぁ毎日これだけい人が行き交うものだと改めて思う。
いつか暴漢にでも襲われるんじゃないかと思うくらいに。

最近の世の中は老若男女が老若男女を襲っている事件をニュースでよく耳にする。
年齢も性別も見境ない。

いつ誰かに襲われてもおかしくないのだ。
日本には一億強の人間がいるが、その一億分の一の確率で、不幸の星に生まれたかのような経験はしたくない。

物騒な世の中だ。そう思った。しかし戦争で物騒だというわけではない。

平和の中の物騒。平和だけど何が起こるかわからない。

それは当たり前だが、平和なのに物騒というのはもはや平和ではないと言えるだろう。

もし万が一危険な目に遭ったらどうしよう。
撃退するか・・・できるわけない。逃げるしか。

彷徨がいればあるいは・・・。

 【背景:駅前、立ち絵:彷徨】

駅を出ると、彷徨が待ってくれていた。
雪の日も待ってくれている彼から、無言の暖かさが伝わった気がした。
彼氏彼女なら当たり前と思われる行動でも、その一挙一動には感謝の一言だ。

未夢「おはよう彷徨」

 【立ち絵:彷徨(疑問顔)、BGM:彷徨は人気者】

彷徨「おっ・・・」
未夢「・・・?何よ」

 【立ち絵:彷徨】

彷徨「いや、おはよう。早いな」
未夢「そういう彷徨はもっと早いじゃない。待った?」
彷徨「いや、さっき来たところだよ」
未夢「じゃ、早いな、って何よ」
彷徨「いや、もっと待つかと思って」
未夢「それなら次の時間に来ればいいのに」

 【立ち絵:彷徨(困り顔)】

彷徨「未夢が先に来てたらショックだからな」
未夢「どういう意味よ・・・」

でもこの寒い中、雪で電車も止まるかもしれないのに、逆方向の駅までいつもどおりの時間に来てくれてたみたい。
だから嬉しかった。

未夢「寒かったでしょ」

乱れたマフラーをかけなおしてあげた。

 【立ち絵:彷徨】

彷徨「けど、おかげさまでそんなに待ってないからな」
未夢「良かったね〜」

 【立ち絵:彷徨(笑顔)】

彷徨「明日からもそうしてくれると助かる・・・」
未夢「う・・・努力はするよ」

 【立ち絵:彷徨】

未夢「こんな日も部活するの?」
彷徨「外じゃ無理だから体育館になるかな・・・」
未夢「元々体育館で部活してる他の子が使ってるんじゃない?」
彷徨「そのときはスペースの一角を分けてもらうだろうな」
未夢「無茶はしないでよ」
彷徨「お前じゃねーからこけたりしねーし」
未夢「なんですと・・・わっ!」

彷徨の言葉に思わず徒歩の足の力を強めたら、滑りこけそうになった。
彷徨の腕にしがみつく形になって、こけるのを踏ん張った。

未夢「あ、あははは・・・」

 【立ち絵:彷徨(呆れ顔)】

彷徨「・・・未夢、昨日こけなかったか?」
未夢「えっ」
彷徨「昨日こけなかったかと聞いたの」
未夢「・・・え〜と」

脳内で記憶の引き足を探し出す。
おそらくここにあるだろうと引っ張り出した記憶には、昨日雨と雪で滑りこけているわたしの姿があった。

未夢「・・・」

 【立ち絵:彷徨】

彷徨「こけたな」

沈黙を答えと受け取ったのか。図星だった。

未夢「・・・う〜」

 【立ち絵:彷徨(困り顔)】

彷徨「・・・はぁ・・・これから雨と雪の日はおんぶで学校に行くか?」
未夢「なっ、しないわよそんなことっ!」

【背景:教室】

当たり前だが、冬の朝は寒い。
けど言わずには居られない。
そんな気分だけど、教室に入ればそれもいくらか安らいだ気分になれる。

 【立ち絵:零】

零「おはよう」
未夢「おはよ〜・・・あれっ?」

そこにいたのは零くんが一人。

未夢「・・・あれ?今日は零くん一人?」

見たら隣にいそうな烈くんの姿がない。
いつも目立つのは、よく話す烈くんなので、その隣にいるのが零くん という感じだったけど。

零「・・・朝起こそうとしたんだが、どうしても起きないので、仕方なく」

零くんの話し方は、なんとなく『暗い彷徨』を想像させる。
人間自体はそれほど似てるわけでもないんだけど、なんとなくイメージが。

未夢「いつもは零くんが烈くんを起こしてるんだ?」
零「いや、今日はたまたまあいつが寝坊しただけだ」

普段零くんは全くと言っていいほどしゃべらないので、話してるのが珍しく感じるし、新鮮な感覚だ。

未夢「仲いいんだね、零くんと烈くんは」

 【立ち絵:零(困り顔)】

零「なぜそうなる」
未夢「え、だって烈くんのことを、あいつ〜だなんて」
未夢「うらやましいな〜わたしもそんな友達いたらなぁ」

 【立ち絵:零】

零「・・・近くに友達以上がいるじゃないか」

あっ。

未夢「ちっ、違うよ!あいつは特別よっ!」
零「そうか特別か・・・」

ああっ。ますます墓穴を掘った。

 【立ち絵:なし】

ガラッ!

烈「零ーっ!」

教室のドアが勢いよく開いたと思ったら、烈くんが大声で零くんを呼んでいた。

 【立ち絵:烈】

未夢「おはよう烈くん」

 【立ち絵:烈(笑顔)】

烈「未夢さんおはようっ」

笑顔で答えてくれるが、息は切れ切れだった。

 【立ち絵:烈(怒り顔)、零】

零「よう」
烈「はぁっ、はぁっ・・・どーぉして先に行っちゃうんだよっ!もう少しで寝坊するとこだったじゃないかっ!」

むしろもうしてるのでは・・・。寝坊じゃなくて遅刻だと思う。

 【立ち絵:烈(怒り顔)、零(困り顔)】

零「俺はちゃんと起こしたぞ・・・」
烈「うるさーい!」

こう言ってはなんですが、烈くんの方が声大きいような・・・。

烈「私は起きなかったじゃないか!本気じゃなかったんだな!」
零「じゃぁ、起こそうと努力はした。っていうか、起こすのに本気とか何だ・・・」
烈「じゃぁ ってなんなんだよー!そんなやつはこうだっ!」

 【立ち絵:烈(怒り顔)、零(驚き顔)】

零「うわっ」

【イベントCG 烈が零の後ろから零に抱きついてじゃれているところ】

零「おい、やめろっ」
烈「朝できなかった分のスキンシップだ!」
零「誤解を招く言葉はやめろっ!毎日してるみたいに言うなっ!」
烈「スキンシップスキンシップ〜」
零「・・・」

 【背景:教室、立ち絵:なし】

どかっ!
・・・。
きゅう・・・。

 【立ち絵:零】

零「光月、誤解するな。こいつはいつもこうなんだ」

その毎度に対する零くんの対応は、毎回どんな反応をしてるのか、そっちのほうが気になった。



【画面更新 教室】

キーンコーンカーンコーン・・・。
1時間目が終わった。

 【立ち絵:烈(笑顔)】

烈「ふゎっあっ・・・う〜んいい朝だ〜」

あなたはさっきまで気絶してるように見えましたが。

いつの間にか思いっきり寝ていたのね。

 【立ち絵:彷徨(困り顔)】

彷徨「気楽でいいな、紅瀬は・・・」

彷徨が机に肘を突き、手のひらにほっぺをもたれさせながらため息をつくように言った。

 【立ち絵:烈(疑問顔)、彷徨(困り顔)】

烈「西遠寺くんは忙しいのー?」
彷徨「俺は今日も部活だ」
烈「大変だね。応援しに行ってあげようか?」
彷徨「いい・・・」

 【立ち絵:烈(困り顔)、彷徨(困り顔)】

烈「・・・残念・・・」

何故そんなに?


 【背景:廊下】

 【立ち絵:惠(笑顔)】

惠「おっ」

前から恵ちゃんが見えて、声をかけようとしたところで、向こうが先にこちらに気づいたみたい。

惠「よっ、未夢!次の時間、教室移動?」
未夢「うん、化学の授業だよ」
惠「そっか、化学の力で西遠寺のハートを爆発させなよ!」

そんなことしないし、やり方がわからなかった。

惠「じゃぁまたね!」
未夢「うん、またね」

 【立ち絵:烈】

烈「武乃邑さん、いつも元気そうだね」

 【立ち絵:烈、零】

零「お前、からんだらいきなりぶっ飛ばされそうだな」

 【立ち絵:烈(泣き顔)、零】

烈「何故?シクシクシク・・・」
零「いや、なんとなくだ、気にするな」
烈「シクシクシク・・・」

その目から流れる涙が、蛇口から漏れる水のように見えて、何故だかおかしかった。


【背景:図書室】

未夢「調べ物調べ物っと」

図書室で歴史の宿題について調べることにした。

未夢「えーと歴史の本はと・・あった、これだ」

見つけた。これで答えを丸写ししちゃえ。

未夢「あ、そういえば・・・」

図書室といえば、彼女がいるかもしれない。というかきっと居る。
図書室は広いけど探すには狭い。
一通り辺りを一目すると、見知った姿をその端に捉えることができた。

未夢「可ー菜ーちゃんっ」

 【立ち絵:可菜】

女の子「・・・図書室では、静かに」

未夢「ごめんごめん」

読むのをジャマされてか、毎度の戒めが挨拶だった。
内田可菜ちゃん。一年生の時にクラスメイトで仲良くなった。
といっても仲良くなったきっかけは、図書室で調べ物をしたときだったけど。
彼女は本がとても好きのようで、時間あらば図書室に来ては本を読んでいる。
種類は漫画から雑誌、小説や額本などホントに様々。わたしなら目が回っちゃうよ。
普段はおとなしいけど、時たま厳しくツッコミを入れたり、図星と思える鋭い指摘をすることもしばしば。
静かな目になかなかの洞察眼を持つ女の子なのだ。
でも中々のボケっぷりを発揮することも。
一年生のときは彷徨が別のクラスだったので、惠ちゃん、可菜ちゃんとで3人で居ることが多かった。
今は別のクラスになっちゃったけど、たまにこうして図書室で会ったりお弁当を一緒に食べたりする。

未夢「可菜ちゃんてばホントに本好きなんだね〜」

 【立ち絵:可菜(目閉じ、口開け)】

可菜「既知の事実よ」
未夢「あはは、そうだね。今度は何の本読んでるの?」

 【立ち絵:可菜】

可菜「昆虫について」

また謎なものを。

可菜「ちょっと知的好奇心というか学術的興味心というか雑学というか」

なぜと聞こうと思ったことを先に答えられた。

未夢「全部似たような意味だよ」
可菜「何故昆虫?と不思議そうな顔をしてたから先に解説してみました」
未夢「うん、すると思う」
可菜「ということで私はみんなの考えがわかります」

や、可菜ちゃんがそれしか思わせないように誘導した気が。

 【立ち絵:可菜(疑問顔)】

可菜「未夢ちゃんは、調べ物?」
未夢「うん、歴史でちょっとわからないことがあって」
可菜「今すぐやらなくても大丈夫??」
未夢「え、あ、まあ期限は余裕あるし・・・」

キーンコーンカーンコーン・・・。
予鈴だ。って、少しお話してる間に調べる時間が〜。
楽しいひと時は光陰矢の如く過ぎてしまった。

 【立ち絵:可菜(目閉じ、口開け)】

可菜「もうそろそろ予鈴が・・・」
未夢「って遅いよ〜」

 【立ち絵:可菜】

可菜「借りる場合は、所定の期限までに返しましょう」
未夢「うー借りなくても済むように今終わらすつもりだったのにー」
可菜「話しかけてきたのは、未夢ちゃん」
未夢「借りるのめんどくさーい」

 【立ち絵:可菜(困り顔)】

可菜「そんなこと言ったら本が悲しむわ」

 【立ち絵:可菜(笑顔)】

可菜「本も未夢ちゃんに借りられて、喜んでいると思うよ」

 【立ち絵:なし】

がたっと席を立つ可菜ちゃん。教室に戻るようだ。

未夢「そんなものかねぇ」

本に魂があるかのように語る可菜ちゃんだったが、わたしにはそこまで気持ちを本に込めたことはない。
そこまで何かに熱心に打ち込めることを羨ましく思った。

【背景:正門】

 【立ち絵:惠(困り顔)】

惠「また可菜は図書室にヒッキーしてたのか。相変わらずだねぇ」

放課後。今日の授業はもう終わった。
後はそれぞれ思い思いの時間を過ごすために散っていく。
部活に行く人、帰る人、あるいは補習を受ける人。
遊びや習い事など何か予定のある人など。

 【立ち絵:惠】

未夢「ちょっと羨ましいかも。わたしも何かに打ちこみたいなぁ」
惠「それならうちに来ない?楽しいよ」

惠ちゃんはフォークソングと軽音楽部を掛け持ちしている。
同じ趣味の子同士で小さなユニットを組んでいて、将来はバンドを結成してやりたいとか。
今はボーカルやギターの練習をしているらしい。
もうやりたいことを見出せている惠ちゃんは凄い。

未夢「そんな〜。わたしには向かないよ」
惠「そう?未夢は可愛いから合うと思うけどなぁ」
惠「ワイルドな服着て、西遠寺をバックに迎え未夢がボーカル」

 【立ち絵:惠(笑顔)】

惠「うひゃー!普段とのギャップがウケそう!」
未夢「えー。そんなことないよー」
惠「いいやそんなことあるね!舞台の日風邪で休むから緊急交代しようか」

舞台の日に風邪で休むって言う理由が、既に確信犯!!

 【立ち絵:惠】

惠「ねぇねぇ未夢やる気ない?」
未夢「もう〜惠ちゃんってば、わたしには才能がないよ」
惠「仕方ないか。でも興味があったらおいでよ。待ってるからさ」
未夢「うん、ありがとね」

 【立ち絵:惠(笑顔)】

惠「それと、ピンチの時はよろしくぅ」

惠ちゃんはいししと笑いながらわたしの肩を軽くポンと叩いた。
ついでにウィンクしながら親指を立て。
サボる気満々じゃないかい。どうしてもわたしを出させたいらしい。

 【立ち絵:惠】

惠「それじゃぁあたし部活行ってくるわ。バイバーイ」
未夢「うん、また明日」

今のところわたしはそれをやる気はないし、惠ちゃんが冗談半分で言っていることはわかっている。
でもわたしが一言うんと言えば、惠ちゃんはそれを本気に変えてしまうだろう。
こうして思ってくれているのは、幸せなことだと思う。
わたしは目を瞑り、心の中で惠ちゃんに静かな感謝の念を送った。


【画面更新】

未夢「あれ、可菜ちゃん?」

学校の正門を横にもたれかけながら何かを読んでいる。
近づいて話しかけた。

 【立ち絵:可菜】

未夢「可菜ちゃん、こんなところで何をしているの?」

可菜「・・・図書室では、静かに」
未夢「ここ図書室じゃないよ」

わたしは苦笑いした。

未夢「書き方?」

中学時代に書道の授業で使うような教科書だった。
しかも逆さに読んでいる。

可菜「こうすると、新しい事が見えてくる気がする・・・」

その発想はなかった。
もう、なんだか色々と何故?だけど、本を利用して何かすることは可菜ちゃんらしくて、苦笑いしているしかなかった。

未夢「ほら、帰ろう。こんなところでそんなことしたら、変に有名になっちゃうよ」

可菜「もしかしたら、もう有名になっているかもしれません」
未夢「えっ」
可菜「・・・多分」
未夢「何それ」

【背景:途中道】

 【立ち絵:可菜(疑問顔)】

可菜「未夢ちゃんは、本は読まないの?」
未夢「たまにファッション雑誌を」
可菜「小説とかは?」
未夢「わたしはあまり・・・。パパや彷徨が最近、ホラーやSFで面白いのがあるって言ってたなぁ」

 【立ち絵:可菜】

可菜「読書とは単なる趣味だけに留まらないわ。本を通じて色んな人との交流が可能になるのが魅力なのよ」

その割には可菜ちゃんはあまり他人とワイワイしているのを見たことがない。
別に人見知りしたり人づきあいが苦手なわけではないのだと思うけど。
単に本人が本に夢中で、大人しい性格だからだと思う。

 【立ち絵:可菜(疑問顔)】

可菜「未夢ちゃんって部活やってないよね?一緒に図書委員やってみない?」

惠ちゃんもそうだったけど、可菜ちゃんも自分の部活に入らないかと誘ってきた。
わたしが部活に入っていないから誘いやすいのかどうかはわからない。

 【立ち絵:可菜】

可菜「受付嬢やって、暇な時は読書してるの。読み終えたら、他の委員とあの本どうだった?って感想を聞き合うのよ」

受付嬢って。
それにしても可菜ちゃんはそうやって周りと接していたのか。
わたしの知らないところで交友関係が広いのかもしれない。

未夢「う〜ん・・・。か、考えておくよ」

 【立ち絵:可菜(笑顔)】

可菜「きっとだよ」

そういって可菜ちゃん嬉しそうに笑うのだ。
仲間が増えるかもしれないことに期待しているのだ。
断りづらいな・・・。
ノーと言うことだけは簡単だけど、その後の雰囲気などを考えると言えないのだった。
空気を読めなければ、その場を楽にしのげるだろうに。
一瞬、おばかさんになってみたいとも思ったのだった。


【背景:玄関】

未夢「ただいま〜」

電車に乗っている間はじっとしてたし、冬の夜の中を歩いてきたせいですっかり体が冷えてしまった。

 【立ち絵:未来】

未来「おかえりなさい。外は寒かったでしょう」

ママはエプロンに手をかけながら出迎えてくれた。

未夢「うん。あ〜寒ッ・・・」
未来「夕ご飯はもうちょっと後だから、待っててね」
未夢「うん、ありがとう」

 【立ち絵:なし】

夕ご飯まで時間があるようなので、宿題でもすることにした。
というか時間なかったら後でするけど。

【背景:未夢の部屋】

さて、昼におしゃべりに夢中になっちゃってできなかった歴史の宿題を・・・。

えーとなになに、戦国時代の日本の地位、権力。
将軍には執権と連署に分けられる。
執権には侍所、政所、問注所、評定衆、引付衆に分けられる。
連署は京都守護、鎮静奉行、奥州奉行、守護、地頭に分けられるっと・・・。
侍所は1180年に生まれ、軍事、整備、御家人の統率・・・?
そうなんだ。としか。

続いて、政所は1191年に生まれ、一般政務、初めは公文所。
問注所は1184年誕生。訴訟、裁判を行う。
評定衆は1225年。割と遅めだなぁ。
政務の評議を行う。大変だね。
引付衆は1249年生まれ。これが一番遅い。訴訟を行うとか。ひえー。

連署の方はどれも1185年生まれ。双子?5つあるから五つ子か。
京都守護はその名の通り、京都を警備し、調停と交渉を行う。
六派羅探題というのだけ、1221年生まれ。
鎮静奉行は九州の御家人の統率。
奥州奉行は奥州御家人の統率。
守護は諸国、御家人の統率、警察をする。
地頭は公領、荘園の管理・・・。
あー、頭が痛くなってくる。知恵熱?写してるだけだけど。
とりあえず終わった。

未来「未夢ー!ご飯できたわよー」
未夢「はーい!」

終わってキリがいいところでご飯にすることにした。

【背景:リビング】

なんか、可菜ちゃんとお話ししたからか、宿題をやったというよりは昔の話の勉強をしたという感じになってしまった。

 【立ち絵:未来】

未来「パパも、ご飯よ。未夢がもう席についているわ」
優「おお、そうか、悪い悪い」

最近はなんだかんだ言ってママが料理を作ることになっている。
今はお休みだけど、毎日行き帰りにママが出迎えてくれてお料理もしてくれる。
やっと一般的になってきたところだけど、そんな普通であることが嬉しかった。

未夢「パパ、なんかの本を読んでいたの?」

 【立ち絵:優】

昼に可菜ちゃんと本の話をするとかそんなに珍しいことじゃないんだけど、した日は何となく本関連に敏感になるような気がする。

優「うん、未夢。書道の道を歩む子供が日本中を旅していくお話なんだ」

出た。書道。パパといい可菜ちゃんといい、なんか流行ってるのかな?

 【立ち絵:優(笑顔)】

優「素朴な少年が最終的にどんな大物になって終わるのかが楽しみなんだよ」

それでご飯の席に着くのが遅れた、とパパはいうのだ。
ご飯も忘れるほどの本って何なんだろうか・・・。
興味はそれほどでもないけど、何となく気になるのであった。

【背景:未夢の部屋】

ご飯を食べた後はテレビを見て時間を潰した。
休憩した後、自室で少しファッション雑誌でも読み、キリのいいところでお風呂を済ます。
歴史の宿題を一通り復習して、髪の渇きを待つ。
最近また伸びてきたから先の方を調節しようかな・・・。

【背景:未夢の部屋(暗)】

一度ストレートパーマをかけないと先の方が枝分かれしてしまう。
ストレートパーマやろうとすると値段高いからなぁ・・・。
ママに相談しないとなぁ・・・。
そう思っていたと思う。いつの間にか寝入ってしまっていた。